知っておきたい高齢者の食事講座

vol.2 北九州市
24人の管理栄養士を中心に
楽しみながら取り組める栄養改善を推進

訪問事業によって栄養改善の成果が

この教室は今は開催していませんが、北九州市の食の支援の考え方のベースになっていますね。今取り組んでいる事業を紹介すると、まず食生活改善推進員(※3)への委託による訪問事業があります。これは平成26年から始めました。食生活改善推進員は、言ってみれば「地域の世話焼きさん」。以前からそれぞれの地域で、一人暮らしの高齢者などを招く「ふれあい昼食交流会」を開催するなど、北九州市内で1500人ほどが活動しています。この方々に声をおかけして、訪問による食生活の総合的な支援をしてくださる方を募りました。手を挙げてくださった方には、全3回の「北九州市食育アドバイザー」養成研修を行い、これまでに約900人の方をアドバイザーに認定しています。

推進員に訪問してもらう対象は、75歳以上で、外見から低体重と思われる方。体重計を持参して体重を量り、「食事のバランスチェックシート」を渡して書き方を説明します。2~3ヶ月後に再度訪問し、シートを回収しています。平成27年度は169人がバランスシートに記入し、もともとあまり栄養バランスのよくなかった、得点7点以下の高齢者では、約6割の方の得点が向上するという成果が見られました。

高齢者の家を訪問してみるとわかることは、いろいろあります。たとえば私自身の経験ですが、ヘルパーがきれいに切ったほうれん草のおひたしを見て、これは高齢者にはかたくて食べられないのではないかと思ったことがありました。聞いてみると、やはり食べられなくてヘルパーが帰ったあとで捨てているという。でもヘルパーさんに悪くて、かたいとは言えないというんです。そういう方は、実は結構多いんですね。ヘルパーやケアマネジャーには、ぜひ高齢者が食事をしているところを見ていただきたいですね。食の実態がわかると思います。

(※3)食生活改善推進員…食を通した健康づくりのボランティア。全国約1400市町村で約17万人が活動している。

食の支援はほかに地域のサロンへの栄養士派遣なども

食生活改善推進員は、前述の通り、もともと「ふれあい昼食交流会」を自主事業として行っていました。これを平成6年から、北九州市からも補助金を出して支援しています。平成29年度は、市内の公民館などの113会場で開催。毎月1回、各会場に最大50人の高齢者が集まり、市の管理栄養士が作成した献立が調理され、食べられています。献立は、毎月、各区役所で区役所の管理栄養士の指導のもと、推進員が調理し、注意点などを確認しています。

このほか、平成28年度からは、ボランティアが各地域で運営している高齢者が集まる「サロン」への管理栄養士の派遣も始めました。管理栄養士は福岡県栄養士会から、人を惹きつける話ができる方を派遣していただき、栄養指導や食事のバランスチェック、簡単な料理の紹介、個別相談などを行ってもらっています。ほかに、シニア料理教室なども開催していますが、これには男性も多く参加しています。妻亡き後、食事に困らないようにという思いで男性を歓迎しています。

また、各区役所では管理栄養士が食生活の改善についての相談も行っています。どんな料理を作ったらいいのかわからないという方のためには、毎月、「栄養士さんの元気レシピ」というバランスのとれたメニューの紹介もしています。これはチラシにして自由に持ち帰れるようにしたり、ホームページからダウンロードできるようしたりしています(年間に約3万部を配布) 。

社会資源をいかに必要な人につないでいくかが課題

食の支援については、以前は子どもから高齢者までを一つの課が担当していました。しかし高齢化社会への対応として、高齢者に関しては、平成28年4月に認知症支援・介護予防センターが開設したのに伴い、センターが認知症支援、介護予防も含めて一体的に担当しています。今、様々な関係団体との連携に取り組んでいるのですが、その一つが「栄養ラボ」です。これは、市庁舎内の認知症カフェのモデル実施をしているスペースに「栄養ラボ」というコーナーを設けて行っている食に関する情報発信です。

具体的には、管理栄養士や歯科衛生士などによる個別相談と、食に関するミニ講演会を、月1回程度行っています。当初は、栄養士会と歯科衛生士会だけでしたが、今年度からは薬剤師会とも連携して進めています。たとえば、腎臓病をテーマに、栄養士が予防と治療のための食生活について語り、薬剤師が腎臓と食事と薬の関係について説明するというような内容です。この講演会の際には、タンパク質調整食品の展示も行いました。まだ手探りで進めている段階ですが、全国でも珍しい取り組みだと思っています。

たんぱく質調整食品などの治療食や栄養補助食品については、いろいろなものが出ていますが、高齢者やご家族は、どのように使えばいいのかご存じない方が多いと思います。そういうものを実際に見ていただいて、家で使えるものを選んでいただけるといいですね。そういう意味で、ミニ講演会や栄養相談などにもっと多くの方に足を運んでもらいたいと考えています。地域包括支援センターや薬局にチラシを置くなど広報には務めていますが、ここにケアマネジャーの力をお借りできるとありがたいですね。必要な方にいかに適切につないで社会資源を有効活用していただくかは、一番の課題かもしれません。

データで見る北九州市の高齢者

北九州市の総人口は、平成29年6月1日現在で約95万2000人。平成27年1月1日時点での住民基本台帳に基づく人口では、65歳以上の高齢者人口は約27万2000人、高齢化率は約27.8%で、政令指定都市の中で最も高齢化率が高い。高齢化率は昭和60年頃から高まっており、平成28年時点では高齢者の半数近くが後期高齢者である。また、総人口に占める75歳以上の後期高齢者人口の割合も、政令指定都市の中で最も高い(平成27年時点)。65歳以上の高齢者がいる世帯のうち、高齢者のみの世帯が5割以上を占める。平成27年時点では、高齢者がいる世帯のうち高齢者の一人暮らしが約1/3を占め、地域における見守りや支援の必要度は高い。要介護認定者数は、平成27年4月末時点で約6万2000人、要介護認定率は約22.7%。平成27年3月時点での全国平均約17.9%より約5ポイント高い。
大村 美智子氏

大村 美智子氏

北九州市保健福祉局健康推進課
食育・栄養改善担当課長
(認知症支援・介護予防センター
地域活動推進担当課長(兼務))

高齢者の栄養摂取のポイントと「キユーピーやさしい献立」無料勉強会
キユーピー「やさしい献立」をご自宅までお届け
キユーピー「やさしい献立」 商品特設サイトはこちら
パンフレットダウンロード
かんたんアレンジ!「やさしい献立」に一手間加えたレシピご紹介します。
アンケートフォーム

このページをご覧になった感想をご記入ください。また今後取り上げてほしいテーマがありましたらご記入ください。(任意)