知っておきたい高齢者の食事講座

vol.5 広島市【前編】
総合事業のスタートと同時に
住民の栄養改善への意識付けに注力

「自治体による食事支援について」の第5回は、広島市の取り組みを紹介します。平均寿命と健康寿命の差が比較的大きい広島市。その差を少しでも縮めるため、食の支援も含めた介護予防を重視しています。具体的な取り組みについて、広島市健康福祉局高齢福祉部地域包括ケア推進課の荻原和宏さんにお話を伺いました。前編・後編の全2回に分けて紹介します。

広島市が抱える課題とは

広島市は高齢化率から見てみると、24.5%とそれほど高くありません。しかし、団塊の世代が全員、後期高齢者になる2025年には後期高齢者の人口が約1.3倍になります。平均寿命は全国平均より少し長い一方で、健康上の課題のない「健康寿命」が全国平均よりやや短くなっています。広島市としてはこの点を懸念しています。

平均寿命と健康寿命(平成28年)
平均寿命と健康寿命(平成28年)

つまり、健康上、何らかの問題を抱えて生きる期間が長いということです。そこも一つ課題です。要支援・要介護認定者を見てみると、要支援1,2や要介護1など、軽度者が多いのです。だとすれば、早い段階から介護予防にしっかりと取り組めば、健康寿命も延ばせるのではないかと考えています。

当市では、2017年4月から介護予防・日常生活支援総合事業(以下、総合事業)をスタートさせました。総合事業を通して介護予防に取り組んでいくには、3つポイントがあると考えています。1つ目は“入り口”としてのケアマネジメントを充実させること。2つ目は、総合事業のサービスの中身として、栄養と口腔、運動を3本柱として取り組むこと。そして3つ目として、“出口”を意識すること、つまり、地域の受け皿の整備です。

地域ケアマネジメント会議でケアマネジメントの充実を

まず、ケアマネジメントを充実させる取り組みとして、2017年度から地域ケアマネジメント会議(自立支援型地域ケア会議)における介護予防プランの検討を本格的にスタートしました。会議では、地域包括支援センターから取り上げてほしい介護予防のケアプランを提案してもらったり、本市が設置しているシステムで地域包括支援センターと共有しているケアプランの中から、当課の保健師が典型的なフレイル等のプランを抽出したりして検討します。地域ケアマネジメント会議では、各職能団体の協力により、医師、歯科医師、管理栄養士、リハビリ専門職などに会議に参加していただいて、アセスメントやケアプランについての助言を求めることにしています。

1年弱、この会議を続けてきたことで、ケアプランを作る地域包括支援センター職員や、居宅介護支援事業所のケアマネジャーの意識がだいぶ変わってきたなと感じています。以前は、ケアプランのパターンが決まっているように思ったこともありました。しかし、今は高齢者一人一人の状態に合わせ、一定のめどを立ててプランを作り、改善効果を見ながら適宜見直しも考えていくプランに変わってきたように思います。栄養面にも少しずつ目が向くようになってきました。

しかしそもそも、口腔や栄養は運動に比べると、住民もケアマネジャーも意識が向きにくいものです。そこで、当課の保健師を中心に、市内8区の地域包括支援センターの職員代表、区職員などで市独自のアセスメントシートを作りました。健康状態、ADL、IADL、社会生活・環境の4項目からなるこのアセスメントシートの「健康状態」の項目に、口腔と栄養のチェック項目も入れ込みました。このアセスメントシートを使ってアセスメントし、ケアプランを立てるようになったことも、栄養や口腔への意識付けに役立っていると思います。

栄養、口腔、運動への取り組みで相乗効果を

次に、総合事業で栄養と口腔、運動に3本柱として取り組むことです。この3つをサービスの重点項目として考えたのは、3つが互いに影響し合っているからです。どれか1つだけに取り組んでも、十分な効果は得られません。最近、“フレイル(※1)”ということがよくいわれますが、当市としてもフレイル対策としてその3つにしっかりと取り組んでいくことで、相乗効果が得られるだろうと考えました。

総合事業を始めるにあたっては、栄養と口腔、運動の支援に携わる専門職同士の横の連携を取れる関係づくりに取り組みました。管理栄養士、リハビリ専門職、歯科医師の各職能団体に協力を仰ぎ、介護予防に携わる専門職の合同研修会を広島県と共に開催。各専門職を講師とし、その専門職から見た介護予防のポイント、在宅での支援のあり方などについて話をしてもらう機会を設けました。

この研修会には、ケアマネジャーや地域包括支援センター職員も参加しています。県単独実施も含めると、すでに2回開催しましたが、これで意識が変わりました。お互い、いかに他の専門職による支援の視点を知らなかったが分かっただけでなく、何かあったときに相談したり、連携したりできる専門職とつながれたことが大きかったようです。今後も継続して開催したいと考えています。

(※1)フレイル…心身機能や認知機能の低下に加え、生活環境の影響もあって生活機能が衰え、そのままでは要介護になる恐れがある状態のこと。

広島市オリジナルのアセスメントシート
出典:広島市オリジナルのアセスメントシート。栄養についても細かなチェック項目が組み込まれている

月2回3ヶ月間の訪問栄養指導サービスを用意

栄養面での具体的な支援としては、総合事業の短期集中型サービスのメニューの中に、管理栄養士による訪問型の助言・指導を組み込みました。このサービスでは、おおむね2週間に1回、3ヶ月間、管理栄養士が対象者の自宅を訪問します。管理栄養士は、キッチンなどの調理環境や食事内容等を確認し、栄養面での困りごとを聞き取ってアセスメントを行ったうえで支援を行います。

時には調理の場面に立ち会い、自宅でできる栄養改善の方法についてアドバイスします。支援の過程では、通院先での血液検査の結果などを見せてもらい、アルブミンの数値等で栄養状態を確認することもあります。また、改善しているかどうかの評価も行います。このサービスは永続的な支援ではありません。そのため、3か月間の訪問による支援終了後、対象者が自分でしっかりと栄養改善に取り組めるようにすることを意識して取り組んでいます。

このように栄養についての支援の仕組みは整えつつありますが、これからの課題もあります。専門職は徐々に栄養改善に意識が向いてきていますが、今後もさらに意識を高めていく必要があります。住民については、まだ栄養を意識していない方が大多数です。ケアマネジャーや地域包括支援センター職員が栄養改善のサービスを勧めても、住民が不要だと断るケースも少なくありません。住民の意識をいかに栄養改善に向けていくか。そこに、これからまさに取り組んでいきたいと考えています。

広島市健康福祉局 高齢福祉部 地域包括ケア推進課

荻原和宏氏

広島市健康福祉局
高齢福祉部 地域包括ケア推進課

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