知っておきたい高齢者の食事講座

vol.8 札幌市【前編】
人気の街ゆえの課題も、「通いの場」の支援に注力

第8回は、北海道札幌市の食事支援の取り組みをご紹介します。観光地として知られる札幌は、住みたい街ランキングで上位に入る土地ですが、人気の街ゆえの課題も抱えています。道内の他の市町村から移り住む高齢者は毎年3千人を超えますが、このうち6割超は75歳以上になってからの移住で、地域から孤立しやすいという現状もあるそうです。市では、「通いの場」を活用した介護予防に取り組みながら、こうした移住者や単身の高齢者らに対するサポートを行っています。今回は、市保健福祉局の方にお話を伺いました。前編・後編の全2回でご紹介します。

移住者含めた介護予防が課題の一つ

2019年1月1日現在、札幌市の高齢化率は26.7%と全国平均を下回っています。しかし、今後は75歳以上の後期高齢者、高齢単身世帯、認知症高齢者の増加がいずれも見込まれており、近い将来、介護が必要な方が増えることが予想されます。

こうした傾向は全国的なものですが、札幌の高齢者の特徴として、市外、とりわけ道内の他の市町村からの移住が多いことが挙げられます。

住民基本台帳から高齢者の転出入の状況を調べると、2017年は転入者の数が4550人で、札幌市外への転出者の数を差し引いても、全体では2293人の「転入超過」となっています。また、転出入を道内に限定すると、75歳以上が「転入超過」の7割を占めています。「転入超過」の数は、2012年に2千人を突破して以降、毎年2千人台前半で推移しています。

こうした結果を踏まえると、雪下ろしが難しくなるなど、少し生活に支障が出てきた頃に、ご家族の呼び寄せなどで道内の別の地域から移ってくる方が多いことが推察されます。

ご高齢になってから移り住んだ方は、地域とのつながりも弱くて孤立しがちです。また、定住者であっても、単身になって閉じこもりがちになる方などもおり、こうした地域の中に隠れてしまいやすい方、介護予防のニーズが高い方をどう介護予防につなげるかが、札幌市の課題の一つとなっています。

支援の中核担う「介護予防センター」

2016年秋に行った「高齢社会に関する意識調査」で、健康維持のために気を付けていることを尋ねたところ、65歳以上の市民の66.1%が「毎日の食事に気をつけている」と回答し、「身の回りのことは自分でしている」に次いで2番目に多い結果となりました。一方、最近の健康状態で気になっていることを聞くと、「固いものが食べにくくなってきた」や「お茶や汁物でむせる」など、食に関する悩みを持つ方も一定数いることが分かりました。

2016年の「札幌市健康・栄養調査」によると、65歳以上の市民の6人に1人は、BMIが20.0以下の低栄養傾向のため、地域のつながりを強化しながら、フレイル(虚弱)などの介護予防の施策を同時に行っていく必要があります。

札幌市では、総合事業の一環として、「通いの場」を活用した支援に力を入れています。2017年度時点で、「通いの場」は市内に947カ所あります。同年度の参加者の数は、前年度比5220人増の1万9030人で、参加率(高齢者人口に占める参加者の割合)は3.7%とまだ低いものの、参加者の輪は少しずつ広がりを見せています。

「通いの場」の支援の中核を担っているのが、市内に53カ所ある「介護予防センター」です。札幌市が委託する社会福祉法人などに専用の相談窓口を設け、専任のスタッフ1~2人が応対しています。市民が「通いの場」を立ち上げる際のサポートから、介護予防が必要な方の早期発見や支援、介護予防教室の開催など、その役割は多岐にわたります。

「介護予防センター」は、札幌市独自の取り組みとして2006年度に設置されました。札幌の地域包括支援センターの数は27カ所と、人口規模で考えるとそれほど多くありません。「介護予防センター」は、地域包括支援センターの機能を補完する役割を担い、より細かなエリアで、地域に根差した支援を行っています。

 

栄養士の派遣も開始、食の講話も

介護予防では、「運動」「栄養」「口腔」の3つの要素が重要であることから、「介護予防センター」の職員に加え、それぞれの専門職の視点による支援も重要となります。

そこで、札幌市では2017年度から、リハビリテーションの専門職の方を「通いの場」に派遣する事業を開始しました。医師会や関係団体などの協力の下、地域の医療機関の方などに介護予防の必要性に関する講話や、体力測定の支援などをしていただき、参加者のやる気を引き出しています。2018年度からは、歯科衛生士と管理栄養士の派遣も始まり、口腔や栄養に関する講話もスタートしました。皆さん関心が高いテーマなのか、終了後の質問タイムはすごく盛り上がるそうです。

2019年度には、専門職の派遣エリアが市内全域に広がり、全ての「介護予防センター」で2人体制が実現する見通しとなっています。

今後、札幌でも一人暮らしの高齢者は増え続ける見通しです。「札幌市健康・栄養調査」によると、70歳以上の女性のおよそ4人に1人は、食事をほぼ毎日独りで食べている実態が明らかになりました。“孤食”をすると、食事のバランスが悪くなったり、うつ病になったりするリスクが高まるというデータもあります。

本当に支援が必要な方を掘り起こせているかと言えば、まだ課題はありますが、「通いの場」を充実させることで、食事を持ち寄るなど、“共食”の取り組みにもつなげていければと考えています。

札幌市保健福祉局 中野幾久子氏 飯村祥子氏

中野幾久子氏

札幌市保健福祉局 保健所健康企画課 食育推進担当係長(管理栄養士)

飯村祥子氏

札幌市保健福祉局 高齢保健福祉部介護保険課 地域支援推進担当係長(保健師)

※役職は取材時のものです。

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