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医療従事者インタビュー:皮膚・排泄ケア認定看護師に聞く-通気性のよいおむつは肌トラブルの予防に役立ちます-

ケアマネジャーにとって排泄ケアをどのように考え、ケアプランに位置づけるかは、常に悩みの種であり、手腕を問われる部分でもあります。なぜなら、排泄ケアは肌トラブルと密接に結びついており、それらは適切なケアプランにより予防することが可能だからです。
そこで今回は、日本褥瘡学会の理事で皮膚・排泄ケア認定看護師の南由起子先生に、在宅における排泄ケアおよびスキンケアのコツを伺いました。

南由起子先生(埼玉社会保険病院 看護局長)
聖路加看護大学卒業後、聖路加国際病院へ入職。
人工肛門・人工膀胱のケアや創傷ケアを専門領域とするETナース( Enterostomal Therapy Nurse、皮膚・排泄ケア認定看護師の前身とも言える)の認定を取得。
その後、移行措置にてWOC看護認定看護師(現皮膚・排泄ケア認定看護師)の認定を取得。
同病院で20年以上にわたる、ナースマネジャーと専門ナース業務の兼務を経て、2009年4月に聖路加看護大学大学院へ進学。
2011年4月より現職に。日本創傷・オストミー・失禁管理学会や、日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会の理事としても活躍している。

所属や肩書きなどは取材当時のものです。

誰でもなる可能性がある尿失禁

Q 高齢者の肌の特徴を、教えてください

高齢者の肌は、保湿力がなく乾燥しやすい傾向にあります。乾燥している肌は外からの様々な刺激(圧迫・化学物質・細菌など)からからだを守るためのブロック塀のような構造が崩れやすい状態になっており、そのために、外からの刺激も受けやすいといえるでしょう。高齢者の肌は、私たちが思うよりずっと傷つきやすいものです。 排泄されてすぐの尿は、酸性であることが多いといわれています。これを放置すると雑菌が繁殖して化学変化が起き、尿はアルカリ性に傾いていくのです。このアルカリ性になった尿は弱酸性の肌に対し刺激が強く、肌トラブルの原因になります。

特におむつを使用している高齢者には、肌への配慮が必要です。おむつは汗や尿や便を吸収し水分を含んだ状態になっています。もし排尿量がおむつの吸収量よりも多く、おむつの表面に水分が残って、肌に触れている時間が長いと、肌はムレた状態となりダメージを受けやすく、肌トラブルの原因になりやすいのです。

たとえば絆創膏をして、洗い物をすると肌がふやけてしまうことがあるでしょう。おむつの中の環境もおむつ交換が適切に行われず排尿量に吸収量が見合っていない状態が続くと皮膚がふやけてしまいます。
過剰な水分が常に肌に触れていることによって、肌はダメージを受けやすい状態になりますので、排泄量に見合ったおむつを選び、おむつは可能な範囲で排尿のタイミングに合わせて替えてあげてください。

清潔を保つことと、汚れの落とし方が重要

Q 高齢者の肌を考慮した排泄ケアとは?

まずは、清潔にすることです。その上で、外からの刺激をできるだけ避けることだと思います。陰部は汚れを落とすために拭きとるより、洗い流すことが大切ですが、あまり何度も洗い流すと皮膚を守っている皮脂まで取り除かれてしまいます。ですから、一日一回くらいを目安に洗い流すケアを行うとよいでしょう。汚れについてはこすり取るのではなく、石けんや洗浄料で汚れを浮き上がらせてから洗い流してください。

界面活性剤が入っている石けんの泡は、肌の汚れである脂を包み込んで皮膚から浮き上がらせる特性があるので、浮き上がった汚れを微温湯で洗い流すとよいでしょう。洗ったあとは、水分をしっかり拭き取るように押し拭きしてください。

陰部をきれいに洗い流してしっかり水分を拭き取った後は、肌の表面に撥水(はっすい)性のクリームを塗ってあげるといいでしょう。撥水性のクリームは肌の保湿をしつつ、尿などの汚れがつくのをはじいてくれます。床ずれができた部分の周囲の皮膚は床ずれからの浸出液などでふやけやすくなるので、床ずれの周囲の皮膚にも撥水性のクリームを塗っても良いでしょう。

おむつの通気性がよいと、肌トラブルが起こりにくい

Q ケアマネジメント・オンラインのユーザー様から、「通気性のよいおむつを使ったら、肌のトラブルが改善された」という声をいただくことがあります。肌トラブルにおむつの通気性は影響しますか?

通気性がないおむつを使うと、おむつ内は排尿後、高温多湿状態になります。皮膚もふやけやすく、雑菌が繁殖しやすくなってムレて不快にもなります。 通気性のよいおむつは、尿はしっかりガードして、おむつの中の湿った空気をどんどん外に逃がすので、ムレにくい状態だと思います。

肌をよい状態に保つためには、過剰な水分が肌に触れないようにすることも大切で、通気性がよいというのは、“おむつの構造によって、肌に過剰な水分が触れない状態にある”と言い換えられます。
尿とりパッドを併用する場合、外側のおむつだけでなく、尿とりパッドもなるべく通気性のあるものを選ぶようにしましょう。

皮膚の真菌感染に注意!肌の変化を診ながら、おむつ選びや寝衣選びに配慮を

Q 湿気が多い季節や、夏場に発生しやすい高齢者の肌トラブルには、どのようなものがありますか?

湿気が多い時期は、乾燥する時期に比べると皮膚感染症が起こりやすく、カビの一種である真菌も生えやすくなります。夏場に限ったことではありませんが、下痢を起こした場合下痢便はアルカリ性で消化酵素を含むため、皮膚への刺激が強く、下痢便が皮膚に付着したまま放っておくと、あっという間に皮膚に‘びらん’が起こります。‘びらん’は皮膚の一番表面にある表皮がはがれてその下の真皮が露出した状態を言い、痛みを生じるものです。皮膚が刺激により赤くなるというような肌トラブルであれば、原因である刺激を取り除けば比較的早くもとに戻るのですが、一度皮がむけてしまうともとに戻すのは時間を要します。ですから、そうならないように配慮することが大切です。
これらの予防法としては、ムレにくく吸水性のあるおむつを使うことも大切です。おむつだけでなく寝具や寝衣にも気を配りましょう。陰部以外でも、脇の下や乳房の下など、肌と肌がくっついているところは汗疹になりやすいため、汗をよくかく人には吸水性の高い寝衣を身に付けたり、寝床の通気性をよくしたりすることも大切です。

肌トラブルと床ずれは違う問題です

Q 排泄物による肌トラブルは床ずれと同じでしょうか?

排泄物による肌トラブル=床ずれではありません。床ずれは圧迫により、皮膚の血流が悪くなり、組織が壊れることで起こります。一方、肌トラブルは便などの刺激や摩擦により皮膚が傷つくことによって起こります。肌への圧迫と便などの刺激が同時に起こるとより床ずれが起こりやすくなります。何が原因で皮膚にトラブルが起こったのか見極めることが大切です。

床ずれを予防するには原因となる圧迫を取り除くためにポジションチェンジ(体位交換)を大事にしなくてはなりません。やせていて骨が突出しているところは床上でも圧迫を受けやすく、そのせいで起こった皮膚の変化は床ずれですので、まずは床面などに骨が当たらないようにします。
ほかにも肝臓に問題があったり、栄養状態が悪いと、身体がむくむ〈浮腫〉という状態になりますが、この状態も床ずれを発生しやすい状態です。〈浮腫〉は肌自体に水分が多くたまった状態であり、外部からの刺激を受けやすく傷つきやすい状態なのです。

おむつを使い分け、夜はできるだけ吸収量の多いものを

Q たとえば糖尿病で多飲多尿の方、利尿効果のある降圧剤を服用している方など、尿の多い患者様の場合、どういうケアをすべきでしょうか?

状態に合わせて、可能な時間帯には水分を摂ることを控えることも考えます。夜間なるべくおむつ交換をせず眠れるように、夕食後は水分摂取を控えるなどの対応は、医師と相談しながらできるかと思います。

安易に水分摂取を控えることは、脱水の原因になりますので注意が必要です。利尿剤を使っている場合は、吸収量の多いおむつを使って、可能な範囲で頻繁に交換してあげることが大切です。
尿が出るからといっておむつにパッドを何枚も重ねたりすると、よりムレてしまいます。重ね使いはモコモコして、皮膚に圧迫もかかりやすく、床ずれの原因になる場合もあり、よくありません。今は夜間用の吸収量の多い尿とりパッドなど様々なタイプが市販されているので、状況に応じておむつを使い分けることも必要です。

独居の方の場合は、使用するおむつの種類や交換頻度などを、ケアマネジャーさんがどのように判断するかにかかっています。また床ずれがある方は、ほぼ訪問看護師が関わっていますから、看護師がヘルパーさんに指導するのもよいかもしれません。各々のスタッフがしっかり連携することで、よりよいケアを行ないましょう。

ケアマネジャーへ望むことは「変化にいち早く気づくこと」

Q 皮膚・排泄ケア認定看護師の立場から、ケアマネジャーさんに望むことがあれば教えてください。

皮膚トラブルなどの早期発見ですね。介護職の方だけですと、できないことやわからないこともありますから、そこはケアマネジャーさんの力をお借りしたいところです。また、寝たきりの方であれば、できるだけ訪問看護師が介入するケアプランを立ててほしいと思います。看護職であれば何が原因で肌トラブルや床ずれが起きるのかを、診る習慣ができています。ですから、できるだけ訪問看護師の介入を促してほしいと思うのです。

もちろんヘルパーさんが変化に気づいてもよいのです。ヘルパーさんは、おむつ交換の際に、おむつ内などの肌の状態を確認する習慣をつけるとよいと思います。ただそこで床ずれかどうかの状況判断は難しいと思いますので、「ここが赤くなっているので、お医者さんに診てもらったほうがいいですよ」とご家族の方に伝えるだけでも、早期発見につながります。
中には“床ずれがこんなになるまで、どうして放っておいたの?”というケースもありますので、できればそうなる前に発見し対応したいものです。

ときどき異常を早期発見したことで予防につながり、「何も起きないのに訪問看護師は必要なのか」と言われることがあります。予防の大切さを知っていただくことが重要かと思います。できてしまった床ずれは治すのが大変ですし、ご本人もお世話をする家族の方も大変になってしまいます。治療には費用もかかりますし、周囲の方々の労力も大変です。ケアする方々が全身をチェックして“あら!こんなところにこんなことが起きている!”と気づき、その原因を探ることができればすばらしいですが、異常を発見した際に医師や看護師などに伝えることができれば十分だと思います。

インタビューを終えて

「最新のおむつについてはあまり情報収集していない」とおっしゃる南先生に、取材終了後、花王リリーフのおむつを手にとってご覧いただきました。

テープ式紙おむつの「リリーフ 股モレ安心テープ式」を広げながら、「しっかりと脚まわりにフィットする感じですね。脚まわりを含めてすみずみまで高吸収ポリマーがしっかり入っているところがいいですね。
どこに尿が流れていっても吸収してしまうというのは安心ですね」と、進化するおむつにしきりに感嘆していらっしゃいました。

皮膚・排泄ケア認定看護師とは?

皮膚・排泄ケア認定看護師は、日本看護協会の認定看護師制度により認定された看護師の一領域を担う看護師です。

①通算3年以上、外科系領域およびストーマケアを常時行なう病棟、外来、または在宅ケア領域での看護実績を有すること。
②ストーマ造設患者の看護を1例以上、および創傷または失禁ケア領域の看護を4例以上担当した実績を有すること…

などの要件を備えた看護師が、所定の研修を受けるための研修学校などを受験することができます。専門領域の学びを深め、課題をこなし、実習を行なった上で認定看護師になるための認定試験を受け、合格すると皮膚・排泄ケア認定看護師になることができます。5年ごとに認定更新することも求められています。
認定看護師に求められている役割は、専門の看護領域の実践と指導と相談です。

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