おむつ実践講座 症状別の尿もれ対策方法をご紹介します。
おむつ交換の回数が少ないために、尿モレが発生しているYさん
対象者のプロフィール
【Yさん/89才/男性/要介護5】
Yさんは、奥様、息子さんと同居していますが、家庭の事情から、日中は生活のほとんどをヘルパーさんの介護を受けている状態です。おむつ交換も日中は、ヘルパーさんによる朝8時半、午後1時、夕方5時半の3回の交換と息子さんが帰宅後9時過ぎに1回、計4回の交換です。
Yさんは、終日ベットで横になって過ごしています。
夜間の最後のおむつ交換から翌朝のおむつ交換までの時間が長時間になることと多くの種類の薬を飲んでいるためか、夜間の尿量が多く、週に数回尿モレが起きています。
尿モレを防止するために、テープ式のおむつの中に、尿とりパッドの1枚は性器に巻きつけ、もう1枚は敷いて使っています。更にその上から、パンツおむつをはいています。
ご相談者である娘さんは遠方に住んでいるため毎日の通い介護で、夜間の介護は難しく、おむつ交換回数を増やすことができません。
もっと吸収力のある、尿とりパッドを性器に巻きつければ、尿モレは改善するのではないかとの思いから「花王・リリーフふれあいダイヤル」にご相談をいただきました。
相談内容
■おむつの交換回数が少ないため、夜から翌朝まで長時間おむつを使用
■服薬により夜間の排尿量が多い
■尿モレを防止するために、尿とりパッドを巻いて使用し、外側のおむつはテープ式とパンツタイプの両方を重ね使いしている
■1種類の尿とりパッドで昼も夜も同じ使い方をしている
■おむつの交換回数を増やすことができない
助言内容・対応方法とその結果
メンタル面のケア
使用するおむつを変えることや、あて方を変えることで改善できるのではないかとの思いと、ご家族の事情から「なかなか思うような介護をしてあげられない」と悩まれているYさんの娘さんのお気持ちを受け止め、「ヘルパーさんやケアマネさんの力を借りながら一緒に解決していきましょう」とお話しました。
外側のおむつの重ね使いは、おすすめできる方法ではありません。Yさんのお肌の状態や不快感、おむつ代の話をしながら、「気づき」を得ていただくようにアドバイスを始めました。
身体状況の確認
Yさんは、夜間、長時間濡れた状態のおむつを装着しています。また尿とりパッドを巻いて使用したり、外側のおむつを重ねていますので、おむつの中の環境がよくありません。Yさんご自身にとっても不快なばかりでなく、お肌のトラブルの原因となることもあります。
おむつ交換の時にはお尻や性器周辺に肌トラブルがないか必ず確認が必要です。
アドバイスと対応
【最適なおむつ選びと使い方】
(1) 排泄記録をつけてみましょう。2~3日でよいので尿モレを起こす夜間だけでも、排尿記録をつけることで最適な尿とりパッドを選ぶことができます。
尿とりパッドは1種類だけでなく、交換時間や排尿量によって、2種類の尿とりパッドを使い分けたほうが、結果として経済的なこともあります。
(2) 日中の尿とりパッドの巻き使いはやめましょう。2枚の尿とりパッドを前後で幅の違う長時間用の尿とりパッドに変更します。男性の場合は、幅の広い方を前にして使用します。
高齢者の男性の場合は、巻き使いをしても、尿とりパッドがはずれてしまうことがあり有効に尿を吸収してくれません。はずれた尿とりパッドの外側の防水シートがお肌に直接あたったりして、肌トラブルを起こしたり、尿が防水シートの上を伝って尿モレの原因になったりします。
(3) 通気性のある高吸収の尿とりパッドを使いましょう。夜間は、10時間以上と使用時間が非常に長いので、高吸収の夜用の尿とりパッドを1枚で日中と同様、幅の広い方を前にして使用します。
この時に、尿とりパッドが外側のテープ式おむつの吸収体のより内側に収めるように装着することが大切です。
また、長時間おむつを使用し続けることになりますので、尿とりパッドは通気性のあるものを使用するようにします。
頻繁に交換するような、吸収量の少ない尿とりパッドには、まだまだ通気性のない商品も多いです。
(4) Yさんは、ほとんど横になっている状態ですので、脚まわりが細くなっていることも考えられます。脚まわりのギャザー自体が吸収帯になっているテープ式おむつを使うことで脚まわりからの尿モレを防ぐことができます。
(5) 外側のおむつを重ねないようにしましょう。最適な尿とりパッドを選び、きちんとあてることで、テープ式の上からパンツタイプおむつを重ねてはく必要がなくなります。
結果
Yさんの娘さんは相談を機に「自分なりの方法でなんとか解決しようと思っていましたが、相談して自分のやりかたが間違っていたことに気づきました。テープ式おむつもパンツタイプおむつも汚れてしまえば交換しなければならないため、尿とりパッドは安いものをと思っていました」と話され、それまでの介護を振り返られました。
そして日中の長時間用、夜間の尿とりパッドの使い方を記した「アドバイスブック」を、ヘルパーさんや弟さんにも見てもらったそうです。その結果、「夜用の尿パッド1枚で翌朝の尿モレもありませんでした」との報告がいただけました。
ケアマネジャーの皆さんへのワンポイントアドバイス
在宅介護では、「老々介護」「通い介護」「日中独居」など介護力の事情で、おむつの交換もすべてヘルパーさんに頼らなければならないケースもあります。
今回のYさんのように、数種類の薬を服用している場合、服薬作用で排尿量が増えることもあります。排尿量が多くおむつを長時間使用する方は、必ずお肌の確認も怠らないよう、日々ヘルパーさんの目で見ていただくことも大切です。床ずれなどの状態が発生すると、その後の治療やケアも大変になり悪循環に陥り、ご利用者様本人のQOLを低下させてしまうことにもなります。
このようにヘルパーさんが在宅介護の現場で果たす役割は大きなものですが、その支援は排泄だけではありません。経済的にも介護保険の範囲でのケアプランでということになると、おむつ交換の回数を増やしたり、時間帯を早朝や深夜にすることが困難になります。
排泄トラブルの改善は人手に頼るだけでなく、身近な製品の見直しからも図れます。おむつの交換回数と排尿量にあった、最適な尿とりパッドを選ぶことで尿モレを防止できることや、適切な使い方をご利用者様のご家族に説明することが大切です。
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