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おむつ実践講座 症状別の尿もれ対策方法をご紹介します。

下剤を服薬し、便失禁にお悩みのKさん

対象者のプロフィール

【Kさん/78歳/女性/要介援5/大阪府在住】
Kさんは、サービス付き高齢者向け住宅に入居しており、排泄ケアを含め、身の周りのお世話はヘルパーさんが行なっています。Kさんは便秘がちで、便秘が続くと気分が悪くなるなど不快感を訴えます。また、便が硬くなると排便が困難になるため、下剤を3日に1回服用しています。服用後には必ず、下痢便となり、テープ式のおむつの脚まわりから便がモレてしまいます。通常日中は、テープ式のおむつに昼用の尿とりパッドを使用していますが、下剤服用時には、毎回モレてしまうのでテープ式のおむつに夜用の尿とりパッドと昼用の尿とりパッドを重ねて使用しています。

「下痢便のモレを防止するために尿とりパッドを重ねて使用するなど、あて方を工夫しているが、どうしてもモレてしまう」とヘルパーさんから悩みを聞いたケアマネジャーさんは「花王・リリーフふれあいダイヤル」に問い合わせ、「下痢便のモレを防ぐおむつのあて方や工夫はありますか?」と相談してみました。

相談内容

■便秘になると不快感を訴えることから、3日に1回下剤を服用しており、下痢便の状態
■テープ式のおむつを使用しているが、脚まわりから下痢便がモレてしまう
■下痢便がテープ式のおむつからモレないように、夜用の尿とりパッドと昼用の尿とりパッドを重ねて使っている
■ヘルパーさん、ケアマネジャーさんの両方が、おむつのあて方でモレの改善ができるのではないかと考えている

助言内容・対応方法とその結果

メンタル面のケア

便で汚れたおむつを交換してもらうことは、ご利用者様にとって、尿で汚れたおむつ以上に精神的に大きな負担になっていることを理解しましょう。その上で、少しでも快適な排便を促していくことが大切です。やむをえず下剤を使用する場合でも、服用のタイミングや量、種類などを医療機関と連携をとりながら検討していく必要があります。

Kさんは、便のニオイや後始末でヘルパーさんに迷惑をかけていると大変気に病んでいます。下痢便で汚れたおむつを装着したまま、次のおむつ交換まで不快なお気持ちで待っているかもしれません。少しでも快適に過ごしていただけるように、言葉のかけ方に配慮しながら、排便後はすみやかに、お知らせいただくようにお伝えします。
流れやすい下痢便をきちんと受け止められる製品を使うこともご本人の精神的な負担を軽くします。

身体状況の確認

Kさんは便秘を解決するために、下剤を3日に1回服用しており、そのために下痢便になっています。また、モレの不安から夜用と昼用の尿とりパッドを重ねて使用しています。いくら通気性のあるおむつや尿とりパッドでも、何枚も重ねてしまっては、おむつの中がモコモコするばかりか、おむつの中はムレて不快な状態になり、肌トラブルも起こしやすくなります。おむつ交換の際に、お尻や性器周辺に肌トラブルがないか確認しましょう。

アドバイスと対応

紙おむつは、尿などの水分を吸収するのには適しています。しかし、下痢便には水分以外にも未消化物や粘液などが含まれており、これが紙おむつの表面を覆う不織布の目詰まりをおこしてしまうため、紙おむつでの下痢便の吸収には限界があります。 紙おむつは衣類や寝具への汚染防止として、あくまでも便を受け止めることが目的となります。

【便を受け止める空間を作るおむつの使い方をする】
下痢便や軟便を受け止めるための空間を作ることが重要になります。尿とりパッドを使用せずに、外側のテープ式のおむつ1枚でご使用になることをおすすめしました。

【下痢便のモレに効果的なおむつを選び】
現在、使用している一般的なテープ式のおむつには、脚まわりからのモレを防止する立体ギャザーがありますが、下痢便の重みや勢いによって、立体ギャザーがつぶれてしまい、役割を果たせなくなってしまいます。また、下痢便が流れやすい、横向きの姿勢では、モレのほとんどが脚まわりから起きています。水分を含んだ便が脚まわりからモレやすいことから、脚まわりを囲む吸収体がついているテープ式のおむつをおすすめしました。太ももの付け根部分をピッタリ囲んだ吸収体があれば、水分の多い下痢便が流れるのを防げます。

【ポイント】
テープ式おむつを装着すると「脚まわり吸収体」が脚まわりに密着。横向き寝の姿勢で起こりやすい脚まわりのモレをブロック!

排便後に、このおむつを交換するときには、注意が必要です。せっかく、脚まわり吸収体でせき止めた下痢便が流れ出さないように、1度にテープを外して、おむつを開かないようにしましょう。交換のときには、おむつの端から中心に向かって、少しずつ、まとめるように丸めていきます。

【肌トラブルを防ぐケアをする】
肌トラブルを防ぐためにも、できるだけ速やかにおむつを交換することをおすすめします。排便後はトイレに流せるおしりふきやシャワーボトルを使用しての陰部洗浄を行い、汚れをしっかりと落とし肌を清潔に保ちます。さらにその際に、おしりの薬用清浄剤を使うと、次の便や尿が肌につきにくく、肌トラブルの予防にもなります。

【排便習慣や環境を見直す】
下痢便は、下剤の服用回数や量が多いため起こることがあります。医療機関に現在の排便状況の実態を伝え、下剤の種類や回数の見直しを相談してみることも必要です。

また、加齢により筋力が低下すると腹圧をかけにくくなり、腸内の便を外に押し出す力が弱まります。前屈姿勢にすると腹圧がかかりやすく、排便しやすくなります。できるだけ、トイレやポータブルトイレに誘導し、排便しやすい前屈姿勢をとっていただくよう心がけます。

腹部や腰部を温めたり、お腹をマッサージすることで、排便を促すこともできます。
下剤に頼らず、生活上できることから見直してみましょう。

【食習慣や生活習慣を見直す】
食事量が減ったり、食物繊維の摂取量が少ないと便が作られにくくなります。食物繊維をたっぷり摂れるような食生活を心がけることが大切です。また、水分摂取量が少ないと便が硬くなり、便秘が改善しないので、十分水分を摂るようにお伝えしました。

結果

後日、ケアマネジャーさんがKさん担当のヘルパーさんを集めて、カンファレンスを実施しました。ヘルパーさん全員に下痢便のモレ防止のために、尿とりパッドを重ね使いすることが、かえってモレの原因になっていること、テープ式タイプのおむつを1枚で使用して、便を受け止める空間をつくることも説明し、ヘルパーさんの理解を得られました。

また、Kさんに快適に過ごしていただくためにも、排便後は遠慮なさらずに、お知らせいただくように、お伝えしました。現在のところ、モレの発生はありません。下剤の服用回数を減らすこと、排便の時間帯の調整など、少しずつご利用者様の不安をとり除きながら、改善を目指したいと思っています。

ケアマネジャーの皆さんへのワンポイントアドバイス

便秘解消のために下剤を服用されている利用者様も多いと思いますが、誰もが「自然で快適な排便」を望んでいるはずです。しかしながら、介護現場では便秘を解決するために下剤に頼り、「便秘→下剤→下痢→便失禁」の悪循環が頻繁に起きているのが現状です。高齢になると便秘の原因は消化器的な疾患によるものより、食生活の変化(食事量、食物繊維や水分摂取量の減少)、筋力の低下で、いきむ力が弱い、排便時に安定した姿勢が保持できないなどの理由によって起こることも多くあります。できるかぎり安易な下剤の使用は控えて、生活行動や生活習慣を見直し、改善していくことが本来の排泄ケアです。

介護職といえども深刻にとらえがちな便失禁ですが、医療的な解決策を医師に相談する以外にも日常生活の工夫点はいくつもあります。例えばトイレまたはポータブルトイレで座位がとれる方は、日中の排便を習慣づけるため、下剤を飲む時間や量を調整してトイレ誘導を行います。その際、ご本人をせかさないでゆっくり便座に座らせるなど、トイレ誘導のための時間を十分にとることも重要です。 そのほかにも食物繊維の多い食材を取り入れる、朝食に牛乳やヨーグルトを加えるなど、食事メニューを工夫したり、腹部のマッサージを導入したりしてみましょう。少しでも利用者様の「自然で快適な排便」が実現できるように、ケアマネジャーとして多方面からアプローチしてみてください。

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