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総合事業と介護予防ケアマネジメントはCMの助け舟Vol.3 服部 真治/医療経済研究所研究総務部次長【後編】

2018/01/25 12:00 配信

「総合事業と介護予防ケアマジメントこそが、CMの助け舟になると思う」―。そう言い切る服部氏。前回の「ケアマネは介護保険の原点を堅持すべき」に続き、服部氏の言葉に耳を傾けたい。

前回のインタビューはこちら→「ケアマネは介護保険の原点を堅持すべき

■「保険外は無報酬」と「包括払い」に潜む課題

前回のインタビューで服部さんは、ケアマネをめぐる悪過ぎる環境として、「保険外サービスをケアマネジメントしても、報酬が得られない」ことと、「介護予防訪問介護と介護予防通所介護が包括払いを採用している」ことを上げました。この点について、少し詳しく説明をお願いします。

保険外サービスに関する問題はよく言われることです。ケアマネは、例えばサロンなどの保険外サービスが有効と思っていても、それだけでは報酬を得られませんから、まず、給付を利用することから考えざるを得ません。

さらに包括報酬が加わると、要支援者のケアプランの選択肢はぐんと狭まってしまいます。一定額の負担が求められる包括払いである以上、ケアマネも「利用者には負担にふさわしいだけのサービスを活用してもらいたい」と、考えてしまうからです。

例えば、要支援2の方に対して、月曜日は通所介護事業所で機能訓練を行い、木曜日は近所のサロンに通うといったケアプランよりも、両日とも通所介護事業所を利用してもらった方が得だとなりがちです。自己負担は週1回でも2回でも変わりませんから。また、包括報酬では利用できる事業所は一つだけですから、特徴のある事業所は選びにくい。その結果、要支援1なら週1回、要支援2なら週2回といった同じようなサービスを同じような周期で押し付ける「ケアプランの金太郎あめ化」が起こるのです。

「総合事業こそがケアマネの助け舟」と強調する服部氏
「総合事業こそがケアマネの助け舟」と強調する服部氏

■総合事業の予防マネジメントが持つ真の意味とは

―保険外サービスのケアマネジメントに報酬が出ないこと、そして包括報酬であることが、ケアプランの「金太郎あめ」化の背景にあるわけですね。

私はそう考えています。中重度者については、保険外サービスのみで支援すべきケースは少ないと言えるのでしょうし、小規模多機能型居宅介護など包括報酬のメリットを活かしたサービスを活用すべきケースも少なくありません。しかし、要支援者については、給付管理の必要がないサービスを利用すべきケースも少なくないのですから、その際のケアマネジメントは評価されるべきです。

そもそも、総合事業は多様な主体による多様な支援を目指すものですし、事業の総額には上限がありますから、包括報酬は給付管理の手間が少ないこと以外のメリットはないように思います。

そこで、総合事業の介護予防ケアマネジメントには、その認識のもと、「多様な支援に応じ、給付管理をしなくても報酬が得られるシステム」を導入する必要がありました。それこそが総合事業における「ケアマネジメントA」「同B」「同C」=図=なのです。

具体的な介護予防ケアマネジメント(アセスメント・ケアプラン等)の考え方

―おさらいの意味でも、それぞれの意味を、服部さんの言葉で説明していただけますか。

まず、Aについては、介護予防支援のケアマネジメントと変わりません。

続いてBは、「継続的に状態を確認しなければならないが、給付管理が必要なサービスは不要な方」などが想定されます。介護予防支援では、そういう方の様子をケアマネがちょくちょく見に行ったり、アドバイスをしたりしても報酬は一切出ませんでした、それでも、「あのおばあちゃんの様子が気になるから、訪問しても一円にもならないけど、やっぱり定期的に行っている」というケアマネは少なくないですよね。いわばBは、そんなケアマネを報酬によって支えることを目的とした枠組みです。

最後にCは、「継続的に関わる必要がない方」を想定しています。例えば、介護予防ケアマネジメントの結果、配食サービスの利用により、あとはセルフマネジメントで生活を維持できる方などです。介護予防支援では、やはりケアマネに報酬はありませんが、Cは初回のケアマネジメントの手間を評価します。

なお、総合事業で示されている類型はあくまでも例示にすぎません。「ケアマネジメントA」「B」「C」も、あくまでも市町村が検討し決定するものです。その趣旨はこれまでボランティア的に行われてきたケアマネの活動を評価してはどうかという提案です。例えば、奈良県生駒市にはケアマネジメントの類型が4種類ありますが、それは、ガイドラインに合わせて無理に設けたものではなく、これまで構築してきた多様な支援に応じて、ケアマネジメントの類型を揃える必要があったからです。

ちなみに、総合事業の検討の際、何より介護予防ケアマネジメントの改善に取り組んでいる市区町村は高齢者の自立支援に大きな成果を上げています。生駒市では、短期集中型サービスの利用で元気を取り戻し、自らの経験を伝えようとボランティアとしてそのサービスに関わってくださる方も出始めています。生駒市では、驚くべきことに短期集中型サービス参加者の7割が卒業するそうです。

―総合事業の制度を理解し、まっとうに取り組めば、高齢者の生きる力を、これまでの制度にはないほどに引き出すことができる。そう考えてよいですか。

はい。総合事業と介護予防マネジメントについては、まだまだ誤解がありますから、改めて制度の理解から始めるべきです。例えば、総合事業は単に家事援助を無償のボランティアに任せることと思っていらっしゃるケアマネもいますが、そんなことは求められていません。まずケアプランを見直した上で、必要な家事援助だけでなく、同時に状態を引き上げるサービスを組み込むべきという制度です。

なお、通所型サービスCなどの短期集中型サービスを活用し、本人の状態が改善すれば、家事援助の必要性はおのずと減っていくでしょう。その時はケアプランを見直し、改めて必要な支援を検討することになります。ところが包括報酬では、本人の状態が良くなって自身でできることが増え、それにより必要な支援が減っても、全く不要にならない限り、そのまま家事援助を継続するプランが作られる可能性があります。これでは予防の効果は半減してしまいます。地域支援事業実施要綱では総合事業の報酬は包括払いでも出来高払いでもよいとされていますが、こうした現実を思えば、市町村が制度の趣旨を理解して、どのような総合事業を構築するかが重要です。

■大切なことは地域ケア会議の「やり方」

―いずれにしても、服部さんが指摘するような形で総合事業を進める際には、地域ケア会議こそが大きな意味を持つように思います。

その通りです。ケアマネを取り巻く環境を変えるには、関係者の間でどのように自立支援をしていくのかについて合意する必要があり、地域ケア会議は不可欠です。

―ただし、ケアマネの中には地域ケア会議を「まるで裁判…」と参加したがらない人も結構います。

残念ながらそういう話も聞きます。地域ケア会議の本質はケアマネ裁判ではなく、むしろケアマネを支え、味方を作るための場ですが、やり方を誤ると裁判のようになってしまうこともあるでしょう。

―やり方とは?

単にアドバイザーを置いて、ケアプランの不備を指摘するだけのスタイルのことです。このやり方では、ケアマネが意見を頂戴する立場となるため、ケアマネにしてみれば、会議が裁判のように苦痛になってしまうのではないでしょうか。

―ならば、どんなやり方が有効でしょうか。

参加した関係者がケアマネ自身も含めて同じ立場で意見を交わし合える場を作ることです。先ほど紹介した生駒市のやり方は参考になると思います。通所型サービスCと連動させる方法ですが、関心がある方は、私も著者として参加した「地域でつくる! 介護予防ケアマネジメントと通所型サービスC-生駒市の実践から学ぶ総合事業の組み立て方-」を読んでいただければと思います(笑)。

■「ケアマネの活動一つで介護保険の未来は変わる」

―最後に、今後、特にケアマネに望むこと、期待することをお聞かせください。

ケアマネには、何より自立支援が求められている役割であることを思い出していただき、そのことにより給付を効率化することさえできる重要な存在であることを強く意識し、現場で提案してほしいですね。

―給付の効率化というと、それだけで反発をする人もいます。

前回、ご紹介したように、介護保険法第2条に規定されていることなのですけどね(笑)。私、大きな会場での講演後のご質問で「総合事業は給付を効率化するものだから反対」と真顔で言われたこともありまして、それは驚きました。給付をマネジメントする立場にあるケアマネには、利用者が保険料を負担する存在でもあることはもちろん、社会保障制度が限界を迎えているという事実もしっかりと認識してほしいと思います。中には、借金をして給付を支えている現状に違和感を覚えない人もいますが、国や自治体の借金とは、子や孫に自分の借金を肩代わりさせるということに他なりません。それで本当によいのでしょうか。

―確かに、子を育てた経験がある人や、子供を可愛いと思ったことがある人なら、次世代への借金が、どのくらい恥ずかしいことかくらいは感覚として理解できますね。

ケアマネは、自立支援の徹底はもちろん、給付の効率化も意識すべきなのです。ケアマネの活動一つで介護保険の未来は変わる。そう考えて活動してほしいですね。

■「今こそケアマネの将来を左右する分岐点」

―それが実現できないと、どんな世界が待っているでしょうか。

ケアマネの立場では、まず、ケアマネジメントへの自己負担導入が再び取り沙汰されるようになるでしょう。さらに、「本人の意向」のままサービスを組み、給付管理することがケアマネジメントだとするなら、ICTやAIの導入などにより、ケアマネ不要論がより現実味を帯びて議論されるようになるはずです。介護保険制度の立ち上げに関わった有識者の中にも「ケアマネジメントは必要だが、将来、それを担うのはケアマネではないかもしれない」と公言する方も出てきています。今はケアマネの将来を左右する分岐点です。

服部真治(はっとり・しんじ)
1996年4月、八王子市役所に入庁し、介護保険課主査や高齢者いきいき課課長補佐などを歴任。2007年3月、法政大学大学院政策科学研究科修士課程修了。14年4月から2年間、厚生労働省老健局総務課・介護保険計画課・振興課併任課長補佐として、総合事業のガイドラインの作成などを担当した。16年4月 医療経済研究機構研究部研究員兼研究総務部次長 (現職)に就任。16年10月からは公益財団法人さわやか福祉財団研究アドバイザーを、17年4月からは鳥取大学地域学部特任教員を兼任している。
著書に「入門 介護予防ケアマネジメント~新しい総合事業対応版~」(ぎょうせい、16年)や「地域でつくる! 介護予防ケアマネジメントと通所型サービスC-生駒市の実践から学ぶ総合事業の組み立て方-」(社会保険研究所,17年)など

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