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住まいと生活を医療が下支え、新モデル誕生Vol.5 江澤和彦/日本介護医療院協会 会長

2018/05/08 配信

今回の介護報酬改定で創設された「介護医療院」は、10年以上も続いた介護療養病床の廃止をめぐる議論の末に生まれた新しい介護保険施設だ。一体、介護医療院とは何なのか。これまでの介護保険施設とどこが違うのか―。4月に誕生した「日本介護医療院協会」の初代会長に就任した江澤和彦氏に、介護医療院が目指すべき方向性などを聞いた。

―介護療養病床の廃止をめぐっては、10年以上にも及ぶ長い議論がありました。今回、介護医療院が創設されたことについて、過去の歴史を踏まえ、どのように受け止めていますか。

介護療養病床の廃止は、2006年の医療制度改革の議論の中で出てきました。その後、政治決着で2回廃止が延期となり、今回は、成功裏に終わらせることがミッションという状況の中で、政策側も本腰を入れたと思っています。

介護医療院は、住まいと生活を医療が下支えする新しいモデルです。日本の介護保険施設は今後、介護医療院、老健(介護老人保健施設)、特養(特別養護老人ホーム)の3つに収れんされるでしょう。施設ごとに役割が異なるので、それぞれの役割で社会なり、地域に貢献していくと思います。

江澤和彦氏

■介護医療院、特養との違いは?

―ターミナルケアへの対応など、特養と機能が一部重なる部分もあります。

確かに、重なる機能が多い施設をあえて挙げるとすれば、特養ということになるでしょう。ただ、介護医療院は、長期療養と生活機能も併せ持っています。そして、医療法に位置付けられた医療施設でもあります。だからこそ、レントゲン室や処置室、臨床検査室などの設置が義務付けられているのです。さらにリハビリなど、老健が行う医療系サービスも提供できるようになっています。

ただ、一般の方にとって、特養と老健の違いすら理解しづらい状況の中、新たな施設が加わると、混乱を招く可能性があります。今回の介護報酬改定では、介護医療院に移行する場合の特例措置として、「移行定着支援加算」が新設され、地域住民に対する周知や、入所者・家族への説明などが要件となっています。今後、こうした取り組みをしっかりと行っていくことが重要です。

介護医療院は、特養よりも医療ニーズの高い方が多く利用されることが予想されます。おそらく要介護4、5の方が中心となるでしょう。その点は特養と変わらないかもしれません。ただ、例えば、介護医療院のI型であれば、介護療養病床の「療養機能強化型A・B」に相当します。つまり、喀痰吸引や経管栄養、あるいは身体合併症を抱える認知症の方が多く入所されます。この点が特養とは異なると思います。

介護保険3施設は本来、在宅復帰を目指すための施設です。だからこそ、特養にも「在宅復帰支援機能加算」が設けられているのです。その一方で、介護保険制度創設後の社会や人口構造の変化などを考えると、やはり看取りは重要な課題の一つです。

介護保険施設ではまた、「尊厳の保持」と「自立支援」も大きなテーマとなります。利用者によっては、介護医療院と居宅を行き来する中で、最期が居宅だったり、逆に介護医療院だったりするケースもあると思います。要介護度に応じた、さまざまな自立支援の形があります。一度入ったら、ずっと入りっぱなしではなく、さまざまなバリエーションがあると考えています。

―「要介護度に応じた自立支援」とは、どのようなものを想定していますか。

例えば、最近の病院や施設のベッドは低床である上、電動で体を起こすこともできますが、一日中ベッドで寝ていると、体の機能が奪われ、骨粗しょう症も進行します。短時間でもいいので、端座位を取るなど、ベッドから起き上がる必要があります。

私は15年前、自分の病院をユニット型に改修し、病棟内にリビングを設置しました。そうすると、長期の胃ろうの方が毎日離床して、リビングで過ごすようになった。ベッドから起き上がり、椅子に座るようになっただけで、短期集中リハをすることもなく、わずか1カ月間で胃ろうが外れて、自分の口で食べられるようになった。典型的な廃用性の嚥下障害でした。すべて寝たきりが原因だったのです。こういった方は、世の中にまだ多くいらっしゃいます。

要介護5だから、室内にこもらなければならないという発想は全くありません。お花見に行って、桜を見てもいい。本人の意思決定に基づいた主体的な行動につなげることが大切です。例えば、認知症の方であれば、重症度に応じてできる課題をやっていただく。重度であっても、昔取ったきねづかで食器を洗ったり、お米を研いだり、できることから社会参加すればいいのです。周囲のお役に立てれば、ご自身の心の安定にもつながるでしょう。

■全国の好事例の横展開目指す

―今後、協会としてどのような活動に力を入れていきますか。

介護医療院自体、まだ創設されたばかりなので、行政やマスコミ、そしてわれわれ現場の人間も含め、共通したイメージを持っていない状況です。物事をすぐに変えるのは難しい。ケアは段階的に成熟していくので、少しずつ取り組んでいきたいと思っています。まずは、協会としての理念を確立し共有していきます。

その次にやるべきことは研修です。全国の好事例を集めて共有したり、意見交換やディスカッションを行ったりしながら、全体の質を高めていく。将来的には、協会独自の認定システムや第三者評価といった視点も必要かもしれません。

介護医療院は、入所者1人当たりの床面積が8平方メートル以上であることに加え、生活施設なので、多床室に間仕切りを設けることが必須となっています。特養にも、こうした施設基準はありません。多床室のプライバシー、生活空間をどう考えるか、みんなで知恵を絞らなければならないでしょう。

運営基準には、地域住民との交流を図ることが明記されています。地域包括ケアシステムの主人公は住民です。住民と一緒にイベントを開くなど、地域に開かれた施設運営が求められます。私の地元の一つの岡山では、県独自の運営基準として、地産地消に配慮した食事の提供に努めるとする文言が入っています。それは、地域づくりを意識してのことです。

療養病床を持つ病院は、長期療養に関する実績はありますが、生活機能に関しては、施設や事業所を運営している法人以外は未知の領域でしょう。介護医療院は、今までとは異なる“器”だという意識改革が必要です。最初は戸惑うかもしれませんが、全国の好事例を横展開できればと考えています。

―最後に、ケアマネジャーの読者にメッセージをお願いします。

今回の改定に伴い、居宅のケアマネジャーは、利用者の服薬状況や口腔内の問題点など、ヘルパーらから伝達された利用者の情報のうち、かかりつけ医らが必要とする内容を提供することが義務付けられました。また、「ターミナルケアマネジメント加算」の新設によって、末期がんにおける主治医との連携の強化も期待されます。

介護医療院は、病院の建物の一部であったり、有床診療所を併設したりするケースが多いと思います。また利用者によっては、居宅と介護医療院を行ったり来たりすることもあるでしょう。今回の「退院・退所加算」の見直しは、ケアマネジャーにカンファレンスへの参加を促す内容となっています。地域のケアマネジャーと介護医療院が、どのような連携が可能なのかを考えていただければ有難いと思っています。

江澤和彦(えざわ・かずひこ)
医療法人博愛会(山口県宇部市)、社会福祉法人優和会(同)、医療法人和香会(岡山県倉敷市)の理事長。医学部卒業後、救急医療・重症管理の内科臨床に精力的に取り組む傍ら、専門である関節リウマチの臨床に現在まで30年間携わり、生物学的製剤等の画期的な薬物療法にいち早く取り組み、チーム医療体制の構築と共にEBMを実践する。また、感染管理の執筆や講演も活発に行うなど、感染対策にも力を注ぐ。
1996年に現職に就任して以降、多数の医療・介護施設を開設。現在、複数の病院、介護施設、サービス付き高齢者向け住宅、訪問・通所事業所等を運営し、設計・建築、外装・内装デザイン、補助具の開発も自ら手掛ける。「社会貢献」を信条とし、社会保障・医療・介護等に関する数多くの執筆や講演活動も行っている。

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