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主任ケアマネ=管理者で、事業所統合が進む可能性もVol.7 田中滋/埼玉県立大理事長、慶大大学院名誉教授【後編】

2018/08/06 配信

4月の介護報酬改定では、居宅介護支援事業所の管理者を主任ケアマネジャーに限定するという、大きな制度改正が導入された。その制度改正が持つ意味は何か―。前編に引き続き、田中滋・埼玉県立大理事長に話を聞いた。

前回のインタビューはこちら→「生活支えるプロとして、保険の枠を超えて連携を

田中滋/埼玉県立大理事長、慶大大学院名誉教授

―3年後には、居宅介護支援事務所の管理者が、主任ケアマネに限定されることになります。1人で運営するケアマネの中には、主任ケアマネの資格を取るめどがなく、3年後には事務所を畳まなければならないかと悩む人も多くいるようです。実際、3年後、主任ケアマネを確保できず運営できなくなる事業所が出てくる可能性はあるでしょうか。

ありえるでしょう、それは。ただし、ケアマネジメントに対する需要と重要性は今後も変わりません。例えば「10カ所の事業所で40人のケアマネがいる」状態が、3年後には「6カ所の事業所で40人のケアマネがいる」となる集約化は、当然想定されます。

■「ケアマネの数が減っていいわけではない」

―制度改正が契機となり、ケアマネ事業所の統合が進む可能性があるということですね。先生としては、むしろそうあるべきとお考えですか。

ケアマネ事業所のマネジメント、経営管理に要する時間とコストを思えば、そうではないでしょうか。効率化だけでなく、ケアマネ同士が切磋琢磨したり、新人を教育したりするにしても、さらに福利厚生面を考えても、事業者はある程度の規模があった方が有利でしょう。3人より10人のケアマネが一緒に働いていた方が、休暇も取りやすいし、教育体制も整えやすいはずです。

なお当然の結論ですが、この制度改正によって、ケアマネが減っていいとは少しも考えていません。事業所の統合が進んだとしても、地域で働き続けるケアマネの数は今までと同様か、それ以上に確保しなければならないでしょう。

地域と利用者のために頑張りたいと1人でケアマネ事業所を運営している人がおられる現実は知っています。さらに、そうした人たちがケアマネジメントと事業所の運営の二役で大変苦労されている様子もうかがいます。

そうした人のうち、「あくまで利用者と地域のために頑張りたい」と考える人は、他のケアマネ事業所に所属し、ケアマネジメントに専念する選択を行うべきでしょう。一方で、中には事業所運営にも魅力を感じる人もおられるはずです。そうした人は、ぜひ、主任ケアマネを取得し、事業所運営に腕を振るってほしい。どちらがいいと言っているわけではありません。本人の思いと選択の問題です。

―今回の制度改正に向けた議論でも、何度か意見が出ましたが、保険制度下にあるサービスの種類が多過ぎるという指摘があります。この点について、先生のお考えをお聞かせください。

どんなことでも、専門性が高まれば高まるほど、業務は複雑化・細分化していきます。介護でも専門的なサービスが増えていく趨勢(すうせい)は当然の進化です。

ただし、利用者がサービスを使う際の契約には工夫が必要かもしれません。例えば、ひとつの事業所と契約すれば、それだけで、その人が必要とするさまざまなサービスを受けられるようにするような工夫はあってもよい。通いと泊まりと訪問のサービスが提供される小規模多機能型居宅介護や、看護小規模多機能型居宅介護などは、その具体例といえます。旅行で例えるなら、宿も交通手段も全て一つの契約に盛り込まれた「パックツアー」が似ています。

その一方で、自分が使いたいサービス事業所と一つ一つ契約する選択も当然、あり得ます。こちらは、旅行に例えれば、切符も宿も全部自分で手配するタイプに相当します。

どちらがいいとは言えません。むしろ、どちらの選択肢も用意しておくあり方が大切だと主張したい。

■「ケアマネジメントは必要だが、ケアマネでなくてもいい」の真意

―先生は以前、「ケアマネジメントは必要だけど、ケアマネジャーでなくてもいい」という趣旨の発言をなさいました。最後に、その真意について改めてお聞かせください。

そのままの意味です。これまで述べてきたような、生活を支えるプロとしてケアマネジメントに取り組める人が地域にいれば済みます。その役割を果たせる人は、必ずしもケアマネである必要はない。それだけの意味です。

あえて付け加えるなら、「せっかくケアマネという資格をもちながら給付管理の計算だけをしているようではいけない。もっと活躍してほしい」との気持ちが込められています。

今回の改定で、政策は、多世代共生型社会を目指し、地域包括ケアシステムをさらに深化させる方向へ明確に舵を切りました。地域ケア会議の開催が義務化され、多職種が連携したチームが地域の人々の生活を支える体制が整えられようとしています。そのチームの要となる役割を果たす主役が、生活を支えるプロであるケアマネであってほしいと願っています。

田中滋(たなか・しげる)
埼玉県立大理事長、慶大大学院名誉教授
専門は医療政策・高齢者ケア政策・医療経済学。1971年慶大商学部を卒業。75年には同大院商学研究科修士課程を修了し、80年に同博士課程単位取得満期退学した。77年に慶應義塾大学助手。その後、同大助教授を経て、93年から2014年まで慶大大学院経営管理研究科教授。15年からは同大名誉教授となった。18年には埼玉県立大理事長に就任した。
主な公職は、医療介護総合確保促進会議座長、社会保障審議会委員(介護給付費分科会長、福祉部会長、医療部会長代理)、中医協・医療機関の消費税負担に関する分科会長、大学病院のガバナンスに関する検討会座長、協会けんぽ運営委員長など。学会は日本介護経営学会会長、日本ヘルスサポート学会理事長、日本ケアマネジメント学会理事、医療経済学会理事、地域包括ケア研究会座長。

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