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基礎資格の経験知、AIで融合をVol.8 鹿野佑介/株式会社ウェルモ 代表取締役CEO【前編】

2018/08/31 配信

介護関連ベンチャーの「ウェルモ」(福岡市)は9月から、同市と福岡県介護支援専門員協会の協力の下、AI(人工知能)を活用してケアプランの作成を支援する大規模な実証実験を行うと発表した。同社が開発するAIは、ケアプラン第2表の内容を文章ごと提案するという画期的な仕組み。目指すのは、基礎資格によって異なるケアマネジャーの経験知の融合だ。代表取締役CEOの鹿野佑介氏に、開発の狙いや将来像などを聞いた。

鹿野佑介/株式会社ウェルモ 代表取締役CEO

―ウェルモが開発するAIの特徴を教えてください。

当社のAIは、教育システムに近いと思います。ケアマネの専門性は、基礎資格によって異なります。例えば、看護師出身のケアマネは、医療依存度の高い方に対応できますが、ヘルパーを長くやられていたケアマネは、医療を苦手としている方が多い。ケアプランの内容そのものに、ケアマネの経験が影響しているのです。

介護保険法は、利用者負担の公平性をうたっています。同じ費用であるにも関わらず、ケアマネとのご縁次第でサービスの中身が異なるとすれば、それは問題だと思います。その原因は、基礎資格による知識の偏りにあります。

しかし、時間が有限である以上、全ての職種を経験することは不可能です。看護師をやってから、理学療法士をやってから、ケアマネになってくださいというのは無茶な話です。AIに教わることで、「こんな発想があったのか」という“気付き”を得ることもできるでしょう。

三菱総合研究所の調査によると、半数近くのケアマネは、自分のアセスメントに不安を抱えているそうです。「これで大丈夫かな?」と思いながら仕事をするのは辛いですし、精神的な負担も大きいと思います。私たちは、この不安をゼロにしたいのです。

AIが知識のサポートを行うことで、本来得意とする対人援助や相談業務に集中することができます。ケアマネには形式的な研修会が多いので、学習コストを減らすことにもつながると考えています。ただ、この仕組みを開発するには、膨大な時間が必要です。開発から3年目を迎えた今年夏、ようやくプロトタイプ(試作品)を完成させることができました。

■2表の「課題抽出」を文章ごと提案

―プロトタイプの段階ということですが、具体的なイメージを教えてください。

当社のAIは、MDSと全国社会福祉協議会の2つのアセスメント様式に対応予定で、どちらかのデータを画面上で入力するか、ファイルごと読み込むか、いずれかの作業を行うと、AIが中身を解析します。

そして、アセスメントの情報を基に、ケアプラン第2表の「課題抽出」について、文章ごと提案してくれるのです。ケアマネが文章を書き換えると、AIはその中身を解析し、新たな提案を出してきます。どんどん選んでいって、最後のサービス内容に落とし込むイメージです。

例えば、利用者が●●の疾患を持っていると、AIは、「ケアプラン作成時に●●という視点が重要です」といった情報を示します。つまり、学習しながらケアプランを作ることができる。まさに秘書が横にいてサポートしてくれるイメージで、AIによる“OJT”で学ぶことができるわけです。調べ物をする手間も省けます。文章を書くのが苦手な方の作業時間を減らすこともできるので、事務負担の軽減にもつながるでしょう。

―どのようなデータをAIに学ばせているのですか。

当社のAIは、“骨”と“肉”の2つに分かれています。“骨”の部分は、過去の論文や教科書、国のガイドラインなどがベースとなっています。こうしたデータをAIに学ばせ、全ての土台となる「推論エンジン」が完成します。教科書はケアマネ向けだけでなく、理学療法士や作業療法士、看護師向けなど、さまざまな職種のものを学ばせることで、幅広いエキスパートの知見を取り入れています。

この“骨”の部分に、過去のケアプランのデータを足し合わせ、“肉付け”していきます。表現技法や言葉の使い方など、ケアマネが培ってきたノウハウを学ばせるのです。

―介護保険のデータは、どのように入手しているのでしょうか。

基本的には、当社と提携している介護事業所から匿名処理されたデータを頂いています。今後は、介護保険制度が始まった2000年度から過去18年分のサービス利用実績やケアプランのデータを、AIの「推論エンジン」に学ばせていく予定です。当社は、東京や福岡など約1万5000カ所の介護事業所のデータを持っています。将来的には、それらのデータと紐付け、事業所の提案まで持っていきたいと考えています。

■精度高め、19年秋の製品化目指す

―製品化に向けた課題はありますか。

やはり、状態がさまざまな利用者に、適切な文章をAIが提案できるようにすることですね。現時点では、AIに学ばせるデータ量がまだ少ないので、合併症の数が増えると、課題を抽出する際の“枝葉”が複雑になり、AIは何を優先させるべきか分からなくなります。また、難病など希少疾患への対応も課題の一つです。

さらに、ケアプランの言い回しは、それぞれの事業所によって微妙に異なります。こうした表現技法への対応も必要です。このため、当社では9月から、福岡市と福岡県介護支援専門員協会の協力の下、AIの開発に協力してくれる事業所などを募り、大規模な実証実験に着手することにしました。

提携する事業所では既に始めていましたが、他の事業所にも協力を求め、開発途中のプロトタイプについてフィードバックを頂きながら、AIの精度を高めていく方針です。そして、できれば2019年秋には製品化したいと考えています。

このインタビューの続きはこちら→「AI活用で、より人間らしい仕事を

鹿野佑介(かの・ゆうすけ)
大阪府豊中市出身。立命館アジア太平洋大学卒業。株式会社ワークスアプリケーションズ、東証一部上場企業の人事部で、大企業向けの人的資源管理のITコンサルタント。その後、仙台から福岡まで、介護現場でのボランティアで感じた問題意識から、日本の超高齢化社会を支援すべく、2013年に株式会社ウェルモ設立。経済産業省「つながるデータで築く未来」、総務省「地域ICT利活用普及促進セミナー」、データアカデミー等多数講師を務める。

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