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契約時、利用者と死生観の話をしよう!Vol.11 佐々木炎/NPO法人 ホッとスペース中原 代表【前編】

2018/12/03 配信

この春、延命治療や看取りなどの方針を決める際の手順を定めた国のガイドライン(指針)が、約11年ぶりに改訂された。指針では、患者本人やその家族の意思を確認する「医療・ケアチーム」の一員として、ケアマネジャーも参加することが望ましいとしている。未曽有の“多死社会”を迎える中、人生の最終段階における意思決定支援にケアマネはどう関わるべきなのか―。現役のケアマネでありながら、牧師として大学でグリーフケアの講師も務めるNPO法人「ホッとスペース中原」の佐々木炎代表に話を聞いた。

佐々木炎/NPO法人 ホッとスペース中原 代表

―今回の改訂では、ケアマネを含む「医療・ケアチーム」が、患者本人やその家族らと治療やケアの方針を繰り返し話し合う「アドバンス・ケア・プランニング」(ACP)の重要性が指摘されています。

私は、介護保険制度が始まった2000年からケアマネをやっていますが、06年度の制度改正の時から、がらりと変わった印象を受けます。それ以前は、どちらかと言えば、「利用者の生活・人生を支える」という理念が先行していました。ところが、制度改正で「自立支援」が強く打ち出されるようになってから、どのサービスの組み合わせが良いのかといった“技術論”に走るようになった。

それが、今回の改訂で振り子が戻ってきたのです。何のために看取りを支援するのか、もう一度、原点に帰って考える必要があります。その意味で、ケアマネにとって良いチャンスだと思います。

主任ケアマネの更新研修でも、「看取り介護では、どのようにサービスをつなげれば良いのか」といったテクニックの話に終始しています。そもそも、看取りとは何か。人間が死ぬということは、どういうことなのか。結局、死というのは実存の問題です。肉体が消滅する、生きる、死ぬということは、人間の根幹にあるのです。

それを自立支援や認知症ケアなどと一緒に語るのは、ナンセンスというか、ちょっと次元が違うのではないかと思っています。

―ケアマネが原点に立ち返るためには、何が必要だとお考えですか。

やはり、看取りそのものを学ぶ機会をつくることが大事だと思います。例えば認知症の場合、脳がどのように働くのかといった仕組みを学びますが、看取りについて学ぶ際は、「看取りとはこうである」といった手順や流れの話だけでなく、看取りから死というものを考えていく。それを人ごとではなく、わが事として捉える必要があります。

医療における看取り期は、亡くなる3カ月から6カ月ほど前を指しますが、福祉では、その方が死を意識した瞬間から始まると言われています。ご本人やその家族、あるいは介護職員が、その方の死について考えた時から、看取り期は始まる。すなわち、要介護者になるということは、広い意味で「看取り期」に入ったということなのです。その中に認知症があり、認知症の前に足腰が弱くなるといった“準備段階”がある。

―ご本人やご家族だけでなく、介護職員が死について考えた時からも、「看取り期」は始まるんですね。

施設に入ったということは、そこで人生を終えるかもしれないということです。「この方は、どのような最期を迎えたいのかな」と、介護職員が意識し始めた瞬間に看取り期は始まるのです。

最近では、入所時に看取り期の意思表示をお願いする施設もあります。私たち在宅系もそうです。この方はどこで、誰と最期を迎えたいのか。延命治療は希望するのか。こういったことをあらかじめ決めておかないと、本当はケアプランなんか作れないはずです。最後が決まっていれば、どこへ向かえばいいか分かる。進む道が分かるからこそ、それに基づいたケアプランを作ることができるはずです。

■看取り期の意思確認はケアマネの“宣言”

―佐々木さんの居宅介護支援事業所では、どのように対応されているのですか。

私たちの場合は、最初の契約時、ご利用者と契約を交わすタイミングで、必ず看取り期の意思を確認します。

―要介護度が軽い方に対しても、意思を確認しているのですか。

そうです。これはある意味、こちら側の“宣言”なんです。最初の契約時に、最期の希望を確認することで、「この人は、自分の意思を最期まで代弁してくれる」「責任を持ってケアマネジメントしてくれる」ということが伝わる。そうすると、ご本人の発言も変わってくるのです。万が一、入院することになった時、相手が最期まで看取ってくれるのと、途中で見捨てられるかもしれないのとでは、信頼感はまるで違います。

どのような最期を迎えたいのかが分かれば、どのようなサービスにつなげたらいいのかも分かるはずです。終わり良ければすべてよし。どんな生き方をしたいかということが、すなわち、QOLです。それを実現するための手段が社会資源であり、介護サービスです。そして、そこにつなげることこそが、ケアマネの仕事です。

私は最近、さまざまな場所で看取りの研修の講師をやっていますが、「契約時に死生観を話そう!」と、いろんな所で言っています。

もちろん、半年後に意思が変わる場合もあるでしょう。ご家族の状況や社会情勢によっても、それは変化し得ると思います。でも、別にころころ変わってもいいんです。サービス担当者会議のたびに意思を確認し、変化したことをきちんと書面に残せばいいのです。

■死生観が分かると、仕事も面白くなる

―ケアマネの負担が増えるという見方もあります。

私は逆に、ケアプランを考えるのが楽になると思います。ある意味、“ゴール”が決まっているので、ご家族が揺れたとしても、「ご本人はこう言っていましたけど、大丈夫ですか」と言える。ここにたどり着きたいという目的地が明確であれば、ケアマネは微修正するだけでいいはずです。

さらに言えば、その方がケアマネの仕事も面白くなると思います。「人生の最終段階を支えるのが私たちの仕事だ」と、誇りを持って言えるでしょう。

―宗教者でもない一般のケアマネがいきなり死生観の話をするのは、ハードルが高い気もしますが…。

私は最初から「牧師です」とは言いません。名刺に書いてあるので、気付く方はいますが、大半の方は普通のケアマネだと思っています。

やはり、自分がどこまで関わろうとしているかという“宣言”をすることは大切だと思います。ケアマネが契約後に訪問するのは、月に多くて4、5回です。“見えない存在”に信頼を置けるということは、ご本人やご家族にとって、すごく力になると思います。「この人は最期まで支えてくれるんだ」と思ってもらえれば、情報もたくさん入るようになるでしょう。

―フレイル(虚弱)のように緩やかに衰えていく方もいれば、末期がんのように状態が急変するケースもありますね。

高齢で亡くなっていく方が、いつ看取り期に入ったのかは分かりにくい。そして、看取り期の対応が遅くなればなるほど、ご本人もご家族も私たちも、やるべきことができなくなります。だからこそ、契約時に看取り期について考える必要があるのです。

看取り期に入ったら、別に無理して食べさせなくてもいいのに、介護職員もケアマネも、「栄養状態が悪いことは駄目なことだ」と思いがちです。看取り期に入ったことを認識していないから、無理して食べさせるし、運動もさせる。それは、「もっとよくなるはずだ」と思い込んでいるからです。でも、ご本人にとってはつらいだけですよね。

認知症が進行して、ご自身で判断できなくなってからでは手遅れになります。ぜひ、ご本人がお元気なうちに、死生観について話し合ってほしいと思います。

このインタビューの続きはこちら→「ケアマネ×牧師、“二刀流”が考える死生観とは?

佐々木炎(ささき・ほのお)
1965年静岡県生まれ。聖隷学園福祉医療ヘルパー学園(現聖隷クリストファー大介護福祉専門学校)、聖契神学校、日本社会事業学校専修科を卒業後、特別養護老人ホームの職員やプライベート介護を経て、98年11月に宗教法人「ホッとスペース中原」を設立、「中原キリスト教会」を開設した。2009年4月にNPO法人となり、代表に就任。現在、主任介護支援専門員として現場に携わり、スピリチュアルケアやグリーフケアの実習生を引き受けながら、東京基督教大や上智大などで講師も務める。

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