<公開ケア会議総括I> 会議開催の目的は果たしてクリアできたのか?
■ケアマネジメントについてのこれまでの検討概略
「ケアマネジメント向上事業」の一環として開催された、今年度の「公開ケア会議」が、2月22日、予定通り3回の開催を以て終了した。「ケアマネジメント向上事業」の目的は、現行のケアマネジメントの実態と課題を明らかにするために、具体的なケアプランとケアマネジャーの思考過程の事例に基づいて、ケアマネジメントの評価・検証と、ケアマネジメント向上のための改善方策の検討を行うこと。
昨年、日本総研が発表した、1,000ケースのケアプランの分析に基づいた「介護支援専門員の資質向上と今後のあり方に関する調査研究(ケアマネジメント詳細分析)」や、現在、一部の現場でモニター使用されている「課題整理表(案)」の作成などもこの事業の一環である。
公開ケア会議は、実際のケアプランをもとに公開の場において多職種協働で議論し、個々のケアプランの評価・検証を行うことを目的に開催された。具体的には、試作された「課題整理表」を用いてケアマネジャーの思考過程をたどり、個別課題の把握と解決方策(=ケア内容とサービス内容)について意見を出し合うことを意図していたと思う。そして、この会議での議論を踏まえて、「ケアマネジメント向上会議」でケアマネジメント向上のための改善方策を検討し、その結果を「介護支援専門員(ケアマネジャー)の資質向上と今後のあり方に関する検討会(以下、あり方検討会)」に報告することとされている。
「ケアマネジメント向上会議」と、1月7日に「議論の中間的な整理」を発出した「あり方検討会」の次回の開催はまだ発表されていないが、ここでは、3回の公開ケア会議を傍聴し、記者として感じたことを2回に分けて述べてみたい。
■公開ケア会議開催の目的は
公開ケア会議開催の目的は、実際には以下の4つだったのではないかと考えている。
1)ケアマネジャーの思考過程を「見える化」し、アセスメントや予後予測、課題の把握、課題から導き出した目標、目標を達成するための支援(ケア内容やサービス内容)について、それぞれが適切であったかどうかを多職種で検討すること
2)その検討をもとに、ケアマネジメント向上のための改善方策を提案すること
3)「見える化」するためのツールとして、試作した「課題整理表」が有効であるかどうかを検証すること
4)多職種協働での「地域ケア会議」とはこのようにして行うものだ、という手本を示すこと
3回の会議を振り返ってみると、これらの目的は達成できたとは言い難い。
1)については、第3回になってようやく「何のためにその目標の達成を目指すのか」を考えさせるなど、ケアマネあるいはケアスタッフに異なる視点を提示する意見が示された。しかし、それまでは数多くある方法論の中の異なる方法を示すというレベルの指摘が中心で、聞いていて「なるほど」と膝を打つような意見は少なかった。サービス担当者会議でよく練れば出てくるレベルの意見、といっては言い過ぎだろうか。そもそも、ケアマネジメントの検討、あるいは評価・検証というより、単なる助言に終始したという印象だ。
2)については、果たしてケアマネジメント向上のための改善方策を検討できていたのかどうか。何しろ、少なくとも第1回、第2回は、会議の進行さえスムーズにできない状態だった。事例を提出しているケアマネジャーの個別のケアプランについての出来不出来の意見集約はできたかもしれないが、「ケアマネジメント」のあり方のどこに問題があるかという検討ができていたようにはとても見えなかった。むしろ、たった6例の検討、それも的確な議論が行われていたとは言い難いこの検討を以て、ケアマネジメントのあり方のここが問題である、という話をされていいのかという思いがある。
■「課題整理表」は導入が前提か?
3)については、司会を務めた東内京一氏(和光市保健福祉部長)から、議論の中で「課題整理表の書き方がなっていない」という意見も聞かれた。経験の浅いケアマネにとって、生活上の解決すべき課題を的確に捉えるのも難しいであろうし、それをどのような支援によって維持・改善していくのか、予後予測をして言語化していくのは一層難しい。
「課題整理表」がこのまま導入されていいかというと、その点については疑問だ。状態像を○、△、×で、改善可能性を2段階で評価するというやり方には批判も多い。「課題整理表の書き方がなっていない」のは、これに当てはめていくこと自体に無理がある可能性も否定できない。はたして、会議参加者は、「課題整理表」でケアマネの思考過程を「見える化」できているのか、していいのかという視点を持って参加していたのだろうか。「課題整理表」導入を前提として会議が行われていなかったかという疑念も残る。
――次回は4)について。
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【ケアマネジメントオンライン編集部 宮下】

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