<筋トレは不要?>サルコペニアの概要と対策(2)――日清オイリオ
日清オイリオが発信したリハビリテーション栄養から見たサルコペニア対策について、今回は、その後編として、サルコペニアの診断基準や、低栄養および摂食・嚥下障害との関係について紹介する。
■サルコペニアの診断基準
サルコペニアの診断基準は、未だ世界的に確立されておらず、各研究者が探っている状態だが、日本では現在、第53回日本老年医学会学術集会(2011年6月)で発表されたサルコペニアの簡易基準案があるので、紹介する。
まず、普通に歩いた時の速度が1秒あたり1m未満、または握力が男性25kg未満、女性20kg未満である場合には、脆弱高齢者と判断し、さらに脆弱高齢者のうち、BMI18.5未満もしくは下腿囲(ふくらはぎの最も太い部分)30cm未満である場合をサルコペニアとしている。
■低栄養予防はサルコペニア予防でもある
近年増加が懸念されている低栄養は、サルコペニアと密接な関係にある。
低栄養の原因は主に1)飢餓、2)侵襲(急性疾患)、3)悪液質(慢性疾患)に大別されるが、これらはいずれもサルコペニアの原因でもあり、低栄養患者がサルコペニアを発症していることも珍しくない。つまり低栄養を予防することは、サルコペニア予防にもつながる。
食事でサルコペニアを予防するには、飢餓にならないための食生活を心がける必要がある。
十分なエネルギーと脂質、たんぱく質、たんぱく質の材料であるアミノ酸(特分岐鎖アミノ酸)や抗炎症作用があるn-3系脂肪酸などのバランスを重視して摂取すること。食事量を増やせない人は、エネルギーになりやすい中鎖脂肪酸油(MCT)などを取り入れて、効率よくエネルギー補給をするのも良い。
■摂食・嚥下障害をもたらすサルコペニア
また、高齢者の摂食・嚥下障害の原因は、脳血管疾患や神経障害、口腔内の病気など多岐に渡るが、摂食・嚥下に関わる筋肉のサルコペニアも原因の一つ。摂食・嚥下障害に伴う誤嚥性肺炎は、二次サルコペニアの原因すべてに該当するので、誤嚥性肺炎で入院した場合は病状が急激に悪化するとともに、サルコペニアも進行する。
サルコペニアによる摂食・嚥下障害を改善するには、適切な栄養管理と早期離床、早期経口摂取を目指したリハビリテーションを同時に行うこと。また、日頃から適切な栄養管理と、摂食・嚥下に関わる筋肉のトレーニングを実施していれば、誤嚥性肺炎を予防することもある程度は可能だ。
“筋肉が減少する”と聞けば、真っ先に筋トレを行う人が圧倒的に多いが、サルコペニアは、栄養状態や疾患の有無など、様々な要因が重なって発症することがほとんどのため、栄養状態が悪化しているときに筋トレを行うと却って筋力が低下し、栄養状態だけ良くても動かなければ意味がない。
リハビリテーション栄養とは、栄養状態が良好になって初めてリハビリテーションの効果を発揮することができるという考え方。栄養管理とリハビリテーションが密接に関係していることをふまえ、病気があるかどうか、生活環境はどうか、栄養状態はどうか、筋トレが必要かどうかなどを総合的に判断することが、サルコペニア予防の第一歩といえる。
◎日清オイリオ
http://www.nisshin-oillio.com/
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