【特別寄稿】在宅・施設の“生活援助”は「介護助手」に業務分担?―介護保険部会


2016/06/07 10:00 配信   | 行政ニュース

市民福祉情報オフィス・ハスカップ 小竹雅子

■消費税と第1号介護保険料の関係
6月1日、安倍首相は消費税の引き上げを2019年10月まで再び延期すると発表した。
「社会保障・税一体改革」で、消費税は2014年4月に8%、2015年10月に10%になり、引き上げ分はすべて社会保障に投入するとされた(2015年度の消費税引き上げによる増収は8.2兆円)。
だが、2014年11月、安倍首相が10%にするのを1年半延期すると決め、衆議院を解散した。今回は、7月の参議院議員選挙を前に、さらに2年半の延期になった。

再延期を知ってまず思い浮かんだのは、「介護保険の1号保険料の低所得者軽減強化」だ。
65歳以上の第1号被保険者は、年金収入が年間18万円(月1.5万円)以上ある場合、特別徴収で年金から天引きされる。
低所得者の場合、保険者である市区町村ごとに定められる基準額より最高50%の負担軽減が行なわれてきた。
消費税が10%になった暁には、最大70%まで軽減することになっていたが、1回目の引き上げの延期で、2015年度(第6期)は55%で、5%の微減にとどまった。
今回は2019年10月まで再延期されたので、第7期(2018~2020年度)も第1号介護保険料の軽減は55%までとなる。
第1号被保険者のうち、非課税世帯(第1~3段階)は1,040万人(2015年度)にのぼる。
なお、第1号被保険者のうち年金収入が年間18万円未満の人は普通徴収で納付するが、2015年度の滞納者は1万人を超え、「保険給付の減額」の対象になった。

■『骨太の方針2016』は“軽度者”狙いを維持
6月2日には、『骨太の方針2016』(正式名称「経済財政運営と改革の基本方針2016~600兆円経済への道筋~」)、「介護離職ゼロ」を含む『ニッポン一億総活躍プラン』、『日本再興戦略2016』が相次いで閣議決定された。
消費税の引き上げは再び延期するけれど、『日本再興戦略2016』で名目GDPを600兆円に増やすから、「介護離職ゼロ」は実現できるということのようだ。
だが、その一方で、『骨太の方針2016』は、経済財政諮問会議(安倍晋三・議長)が『経済・財政再生計画改革工程表』に示した44項目の改革を「着実に実行」するとしている。
このため、「軽度者に対する生活援助サービスやその他の給付の在り方」「軽度者に係る生活援助、福祉用具貸与及び住宅改修に係る負担の在り方」「軽度者に係る福祉用具貸与及び住宅改修に係る給付の適正化」について、「関係審議会等において検討し、2016年末までに結論」を出すことに変わりはない。

■「人材確保」に“生活援助”はいらない?
社会保障審議会介護保険部会(遠藤久夫・部会長 以下、部会)は「関係審議会等」の1つで、「2016年末までに結論」を迫られている。
6月3日に開かれた第59回では、①介護人材の確保(生産性向上・業務効率化等)、②保険者の業務簡素化(要介護認定等)、③介護保険適用除外施設における住所地特例の見直しについて、④介護保険総合データベースの活用についての4つのテーマだった。

今回は、2020年代初頭までに231万人が必要という「介護人材の確保」に注目する。
厚生労働省が用意した資料1『介護人材の確保』では、「介護の生産性向上・業務効率化等について」として、①ロボット・ICT等の新しい技術を活用した生産性の向上等、②介護人材の専門性の発揮の2つが取りあげられている。
特に「介護人材の専門性の発揮」について、「管理者が考える介護の各業務に求められる専門性と、実際の介護職員の業務実態との間に、差が生じているとの指摘がある」とあった。
「例えば」と示されるのは、ホームヘルプ・サービスの「生活援助(掃除・洗濯・衣類の整理・ベッドメイク)」で、「介護福祉士の資格を取得していない者でもできる」のに、「介護福祉士の約7割がこれらの業務をほぼ毎回(毎日)実施している」ことだ。
例示の根拠は、『介護人材の類型化・機能分化に関する調査研究事業報告書』(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社、堀田聰子・座長、2015年度厚生労働省老人保健事業推進等補助金)。
同報告書は、定期巡回・随時対応サービス、デイサービスの「生活援助の業務実施状況」も集計しているが、ホームヘルプ・サービスの生活援助について、①掃除、洗濯、衣類の整理、ベッドメイク、②買い物、③調理、④配下膳に分類し、専門性が必要かどうか、訪問介護事業所の管理者209人から回答を得たという(2016年3月現在、訪問介護の請求事業所は33,243事業所)。
今回の部会資料で、デイサービスの“生活援助”というのを初めて知ったが、老人保健施設の「介護助手導入モデル事業」(三重県老人保健施設協会)の報告もある(資料1)。
こちらは東憲太郎・委員(全国老人保健施設協会)から、60~75歳の高齢者を募集して「介護助手」とし、「介護職を専門職化」することに効果があったと報告した。
なお、『ニッポン一億総活躍プラン(抄)』には、「介護離職ゼロ」を実現する「多様な人材の確保と人材育成」のため、「介護サービスの業務を、必要とされる専門性を踏まえて類型化し、介護福祉士等の専門職とそれ以外の者との業務分担を推進」とある(参考資料3)。

■委員からは“機能分化”に疑問の声
部会では、「観察やアセスメントを常にしているのに、行為だけで専門性の是非を問うのはおかしい」(内田千恵子委員・日本介護福祉士会)、「多様な人がいるのはいいが、問われるのはマネジメント手腕だ」(齋藤訓子委員・日本看護協会)、「施設に多様な人材の関与は有益かも知れないが、在宅は1人で担うケースが多く、支援内容で分けるのは慎重にしてもらいたい」(鷲見よしみ委員・日本介護支援専門員協会)、「生活援助は業務で割り切れない。区分けすること自体が家事代行業務と考えていることになる」(花俣ふみ代委員・認知症の人と家族の会)など、疑問の声が多く出された。
一方、「現役中高年の活用を考えてもらいたい」(武久洋三委員・日本慢性期医療協会)、「介護助手は在宅にも必要。機能を分けて職業化すべき」(栃本一三郎委員・上智大学)と“機能分化”を肯定する意見もあった。

■“生活援助”の定義はどこまで広がる?
介護保険制度がスタートしてから16年間、ホームヘルパーと介護職員は「専門職」ではなかったのかと問いたくなる資料だが、ホームヘルプ・サービス(訪問系)の生活援助に、デイサービス(通所系)と老人保健施設(施設系)の“生活援助”が入り混じる。
ここで、思い起こすのは昨年11月、財政制度等審議会(財務省)が公表した「2016年度予算の編成等に関する建議」だ。
この建議には、「生活援助サービスについては、日常生活で通常負担する費用であり、原則自己負担(一部補助)化すべきである」という一文がある。
通常国会では「日常生活の通常負担する費用は、日常的に生活援助サービスで実施されます掃除、洗濯、調理などを想定しております」という大岡敏孝・財務大臣政務官の答弁(3月16日、衆議院厚生労働委員会)があった。
また、第55回部会において、厚生労働省老健局は「生活援助サービスの対象となるのは、訪問介護だけではなく、その他給付でカバーされているものが検討の対象という意味」と説明している。
部会での在宅・施設を問わない「生活援助サービス」の“論点”をみると、「介護人材の確保」を装いながら、「生活援助をはずしたサービス」が示唆されている。

なお、「介護人材の確保」については2014年10月から、社会保障審議会福祉部会(田中滋・部会長)が福祉人材確保専門委員会(田中滋・委員長)を設置した。
2015年2月25日には『2025年に向けた介護人材の確保~量と質の好循環の確立に向けて~』をまとめ、介護労働者の「参入促進」と「労働環境・処遇の改善」を図る一方で、介護福祉士の「資質の向上」が必要とした。
部会資料によると、同委員会は今後も「介護人材の類型化・機能分化」について検討を進める予定だ。
類型化・機能分化による「資質の向上」が、介護労働者を171万人(2013年度)から231万人(2020年代初頭)まで増やす「介護人材の確保」に効果を持つのかどうか、ぜひ、証明してもらいたい。


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【ケアマネジメントオンライン編集部】

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