【特別寄稿】介護保険法改正案、国会に提出―利用料の3割負担、第2号介護保険料の引き上げ、「介護医療院」の新設


2017/02/20 12:00 配信   | 業界ニュース

市民福祉情報オフィス・ハスカップ 小竹雅子

■2月7日、改正案を閣議決定
2月7日、介護保険法改正案「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案」が閣議決定され、通常国会(第193回)に提出された。
2017年度予算案の成立後に審議されるとのことで、衆参両院での具体的な議論は今後になる。
ポイントは「地域包括ケアシステムの深化・推進」と「介護保険制度の持続可能性の確保」に分かれ、下記の5項目が並ぶ。
1. 自立支援・重度化防止に向けた保険者機能の強化等の取組の推進
2. 新たな介護保険施設(介護医療院)を創設
3. 地域共生社会の実現に向けた取組の推進等
4. 2割負担者のうち特に所得の高い層の負担割合は3割
5. 介護納付金(第2号介護保険料)への総報酬割の導入

地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案
概要(ポイント)
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/dl/193-06.pdf
法律案要綱
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/dl/193-07.pdf
法律案案文・理由
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/193.html

■2割負担認定者のサービス利用率は、1割負担認定者より低い
まず、利用者への影響が大きいのは、「所得の高い層の負担割合は3割」だ。
前回の改正により2015年8月以降、「一定以上の所得」(年金収入等280万円以上)がある認定者は利用料が2割、つまり2倍になった。
高齢者のうち「相対的に所得が高い層」がターゲットとなり、2016年11月現在、59万人が2割負担認定者で、すべての認定者(631万人)の約1割だ。
法律案の「概要」で初めて知ったが、2割負担認定者59万人のうち、実際に利用者しているのは45万人で、利用率は76.7%だ。
1割負担認定者は563万人で、利用者は451万人、利用率80.1%だから、2割負担認定者の利用率は、約4%低いことになる。
ケアマネジメント・オンラインが実施した「『介護保険利用者の自己負担増』に対するケアマネジャーの意識調査結果」では、2割負担利用者のホームヘルプやデイサービスを減らしたケースが多かったそうだが、利用者負担の引き上げにより、サービスそのものを利用しない、つまり給付から脱落した認定者の存在は大いに気がかりだ。

厚生労働省老健局「介護保険事業状況報告(暫定)2016年11月分」
http://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/osirase/jigyo/m16/1611.html

■3割負担は約16万人、負担増は約12万人
そして、今回の改正案では、2割負担の認定者のうち、さらに「医療保険の現役並み所得者」(年金収入等340万円以上)を3割負担、つまり当初の3倍、現行の1.5倍にするという。
厚生労働省の推計では、3割負担利用者は約16万人で、高額介護サービス費(月額上限44,400円)の対象になるケースもあるため、実際に負担増になるのは約12万人、利用者の3%としている。
なお、年収などの具体的な線引き(基準)は「政令」で決めることになり、法案が通れば、2018年8月から実施予定とされている。
2割負担認定者の実態把握がないまま、3割へのさらなる引き上げに懸念は尽きない。

■第2号介護保険料の「総報酬割」は、社会保障費の節約のため?
第2号介護保険料(介護納付金)は、これまで健康保険組合の加入者数で計算されてきたが、改正案では所得に応じた「総報酬割」に変更することになった。
社会保障審議会介護保険部会では、10年以上前から議論のテーマだったが、第2号介護保険料は被保険者だけでなく、事業主負担もある。
経団連や商工会議所など、負担増となる経営サイドの委員から猛反対が長く続いてきたが、今回ようやく見直しが行なわれることになった。
「激変緩和」のため、導入スケジュールは2017年8月から段階的に実施し、2020年度に全面実施とされている。
この見直しにより、第2号介護保険料が「負担増」になる被保険者は約1300万人、「負担減」になるのは約1700万人と計算されている。
ただし、2017年度予算案では、膨張を続ける社会保障費の自然増6400億円を5000億円程度に抑える、つまり1400億円程度節約するために、第2号介護保険料の増収分(443億円)をまわすとしている。
つまり、40~64歳の第2号被保険者が、親世代の介護保険サービスを維持するために、負担増やむなしと考えたとしても、残念ながら、引き上げ分はサービス(給付)にはまわらない。

財務省「2017(平成29)年度予算のポイント」
http://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2017/seifuan29/01.pdf


■医療療養病床が介護保険にやってくる?
前回の改正では、「地域包括ケアシステムの構築」のために、要支援1・2のホームヘルプ・サービスとデイサービスを給付からはずして事業(介護予防・日常生活支援総合事業)に移行、特別養護老人ホームの新規利用は要介護3以上と“重度者”への「重点化」が行なわれた。
今回の改正案では、さらに「地域包括ケアシステムの深化・推進」するため、「介護医療院」の新設が盛り込まれた。
「介護医療院」になるのはとりあえず、介護療養病床(5.8万ベッド)と医療療養病床(22.2万ベッド)だが、法律に位置づけられるので、急性期病院の参入もありえるとされている。
介護療養病床は10年前、老人保健施設などに転換して廃止することになっていたが、経営する医療法人が医療保険に鞍替えするなど、「転換廃止」は進んでいない。
昨年、社会保障審議会に「療養病床のあり方等に関する特別部会」(遠藤久夫・部会長)が設置され、「医療機能を内包した施設系サービス」として「介護医療院」を新設することになった。
介護療養病床だけでなく、医療療養病床も「介護医療院」になることが想定され、「具体的な基準・報酬」は2018年度介護報酬改定で検討することになっている。
このため、介護保険、医療保険ともに療養病床を運営する医療法人は、社会保障審議会介護給付費分科会(田中滋・分科会長)の議論を待つことになる。

■介護施設だが、病院のままでいい?
ただし、介護保険の施設サービスの1人当たり月額給付費は29.1万円で、医療法人が運営する老人保健施設は約30万円、介護療養病床は約39万円だ。
「介護医療院」は“新設”になっているが、現行の医療療養病床の利用者が介護保険の給付対象となるだけでも、給付費は一気に増大することになる。
介護保険と医療保険、どちらでもいいではないかという意見もあるが、給付がふくらむと“軽度者”、あるいはホームヘルプ・サービスやデイサービスなど在宅人気サービスをバッシングし、抑制を繰り返してきた制度の歴史を忘れないでもらいたい。
なお、現行の介護療養病床の転換廃止の経過措置期間は、さらに6年間延長され、2023年度末までとなる。
また、病院・診療所から「介護医療院」に転換した場合、「転換前の病院又は診療所の名称を引き続き使用できる」という但し書きがある。
介護保険に給付が移っても、看板は医療保険のままでよし、というもので、被保険者への説明責任はないようだ。

社会保障審議会療養病床のあり方等に関する特別部会「療養病床のあり方等に関する議論の整理」(2016.12.20)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000146413.pdf


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【ケアマネジメントオンライン編集部】

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