特別企画 著名人インタビュー「視力6.0が見たニッポンの介護」

著名人インタビュー オスマン・サンコンさん 日本で覚えた介護技術でギニアに老人ホームをつくりたい

「いっこ、にこ、サンコ~ン!」でおなじみのオスマン・サンコンさんは、ギニア大使館に勤務するれっきとした外交官。その一方で、お母さんのために日本でホームヘルパーの勉強をするなど、家族を思う気持ちにあふれています。今回は、お母さんの介護のこと、日本のお年寄りとの交流のことなど、異文化介護についてお話をうかがいました。


プロフィール おすまん・さんこん
1949年、ギニア共和国ボッファ生まれ。69年コナクリ大学卒業後ソルボンヌ大学に国費留学。ギニア労働省を経て、72年ギニア共和国外務省に入省。同年、ギニア大使館設立のため駐日大使と来日。その後ワシントンDCに勤務。84年日本ギニア友好協会広報官として再来日。のち同会秘書のほか大使館顧問、85年フジテレビ「笑っていいとも!」への出演以来、タレントとしても活躍。
ギニア語(スースー語)、フランス語、日本語、英語、スペイン語、イタリア語の6カ国語を操り、テレビ・ラジオ番組の出演、新聞・雑誌の取材、全国各地の講演などを通じて日本とギニアの友好に貢献する一方、介護問題や教育・福祉活動にも取り組む。著書に『“超自然人”サンコンの「視力6.0」が見たニッポン』(光文社)、『明るく生きちゃ悪いですか?―障害を持って生きるボクたちからのメッセージ』(広美出版事業部)、『母が教えた本当の人生』(たちばな出版)などがある。2001年介護ヘルパー2級取得。

母のために取得したホームヘルパー2級
母のために取得したホームヘルパー2級

僕が最初に日本に来たのは1972年。もう38年も前です。日本にギニアの大使館を作るためにやってきて、その後、アメリカのワシントンDCに転勤になって一度は日本を離れましたが、日本人の奥さんの出産を機に再来日しました。それからギニア友好協会の設立の仕事をしながら、日本にギニアのことを知ってもらうにはどうしたらいいだろうと考えて、「笑っていいとも!」のオーディションを受けました。これももう26年前になります。現在は再び大使館の仕事をしながら、全国の学校で講演を行ったり、老人ホームでボランティアをしています。

僕がホームヘルパー2級の資格を持っているというと、みんな驚きます。ヘルパーの勉強をしようと考えたのは、母のためでした。
僕の国はイスラム教なので父には奥さんが3人いて、僕は22人きょうだい。母は第一夫人で、僕は彼女の長男です。ギニアは日本と同じで、親の面倒は長男がみなくちゃいけない。でも僕は遠い日本で仕事をしていたので、ギニアに帰るのは年に1回。父は14歳のときに亡くなったので、いつも一番恋しいのは母でした。だから毎年12月に帰国するときには、母のために電気製品や洋服を作るための布など、たくさんお土産を買って行きました。
でもそのうち、「もうなにもいらない」と言うようになって、代わりに欲しがったのが「サロンパス」や「アンメルツヨコヨコ」、「正露丸」など日本の薬でした。会うたびに年をとって弱っていく母の姿がそこにはありました。

ギニアに広がる日本の介護

僕は長男だから、本当はギニアに戻って母の面倒をみたい。でもこんなにも日本を愛してしまった。悩んだ末に10年ほど前、テレビ番組に出演する口実で母を日本に呼び寄せました。でもいろいろ大変でした。まず、当時僕が住んでいた家には階段がありましたが、母は家の中の階段を登ったことがなかった! ギニアはほとんどの家が平屋で、階段のある家なんてないんです。もっと問題なのは、日本の気候。ギニアは熱帯の国なので、母は9月の東京が「寒い!」と言って、僕はあわててファンヒーターを出しました(笑)。
結局、母はギニアに戻りました。でも母のために何かしたい。そこで、年老いていく母のために、僕が介護について勉強して、母のそばにいる家族に伝えよう!と思ったんです。



ギニアに広がる日本の介護
ギニアに広がる日本の介護

ギニアは日本より50年くらい遅れていて、介護保険も福祉用具も老人ホームもありません。年をとると家族の世話を受けて、家で亡くなるのが普通です。でも日本の介護は進んでいるから、役に立つこともあると思い、僕は一生懸命ホームヘルパーの勉強して、1年がかりで2級の資格を取りました。実習では体の抱え方や車椅子の使い方などの技術的なことだけでなく、栄養や食事についても教えてもらって、僕はさっそくそれらをギニアの母のために実践しました。

まず、足腰が弱って、外出を渋るようになった母のために車いすを持ち帰り、家族や周囲の人たちを集めて、操作の方法やベッドから車いすへ乗り移る方法などを教えました。
また、ギニアにはお風呂に入る習慣がありませんが、入浴が血行をよくすると習ったので、ギニアの家に大きなお風呂をつくりました。それから、母の面倒をみていた母の姪(僕のいとこ)のマミさんに、「お風呂の温度はこれくらいで、これくらいの時間入れてあげて、上がったら牛乳を飲ませてね」とお願いしました。

牛乳は、老人ホームで実習をしたときにお年寄りが毎日飲んでいて、「骨を丈夫にする」と聞いたので、さっそく母にも飲んでもらうことにしました。あと、水をたくさん飲んだほうがいいとか、カルシウムの多い食べ物のこととか、ホームヘルパーの勉強をすることで、介護についてたくさんギニアに伝えることができました。それもこれも、「僕がギニアに帰ったときは、元気なお母さんに会いたい」との一心からでした。


ギニアでは紙おむつはまだまだ贅沢品
ギニアでは紙おむつはまだまだ贅沢品

母は3年前に86歳で亡くなりました。最期の数年、母は寝たきりで、僕は毎日のようにマミさんに電話して、「お母さんの具合はどう? 今日はなに食べた?」などと母の様子を聞いていました。まさにインターナショナル介護ですね(笑)。マミさんの負担を軽くしようと、紙おむつもたくさん送りました。ギニアには赤ちゃん用の紙おむつはありますが、まだまだ高価なぜいたく品なので、みんな布おむつを使っています。でも母はおむつそのものをいやがったようです。

最後に会ったとき、大事にしていた指輪を僕の指にはめてくれた母は、何も言わなかったけれど、自分の寿命が尽きることをわかっていたんじゃないかな。でもギニアの平均寿命は55歳なので、大往生でした。僕が伝えた介護の知識で、母の寿命は5年は延びたんじゃないかと思っています。

母が亡くなっても、僕はお年寄りと話すのが大好きだから、実習でお世話になった老人ホームにボランティアで訪問しています。そこでアフリカの話をしたりお年寄りの話を聞いたり、最近はおじいちゃんたちと囲碁も打っています。囲碁も一生懸命勉強して、10級を取ったんですよ(笑)。

ギニアのことわざに、「お年寄りが亡くなることは大きな図書館がひとつ燃えてなくなることだ」というのがあります。つまり生きているお年寄りは図書館と同じ。それほど、お年寄りの知恵と経験は大切で、子から孫へと伝えられていくものなんです。
日本は豊かだけれど、子どもたちはおじいちゃん・おばあちゃんと一緒に暮らしていないでしょう。だからそういう知恵が伝わらない。とても残念だと思います。


文明国家・ニッポンが失ったもの
文明国家・ニッポンが失ったもの

文明国家になるほど、大地や自然との係わり合いが疎遠になると僕は思っています。そして人間にもとから備わっていた能力がどんどん失われていく。僕はアフリカにいた頃、1km先のものも見えて、視力は6.0だったけれど、日本で暮らすようになって視力が落ちちゃった(笑)。

それに、豊かになると、家族の絆や地域の関係も疎遠になってしまう。僕が老人ホームに行くと、おじいちゃん、おばあちゃんたちは、みんな「家族に会いたい、孫の顔を見たい」と言ってます。そして僕に「家族はいるの?」と聞いてきます。僕はそんなとき、しっかり手を握ってあげます。すると、長生きした人の手は母と同じで、よく働いたあったかい手をしています。いろんな事情で老人ホームにいるけれど、本当はみんな、家族のそばにいたいんだろうなと思います。

こうした経験を生かして、僕はいつかギニアに老人ホームをつくりたいと思っています。サンコン小学校はつくったけれど、老人ホームはケアするヘルパーさんが必要だから、まず日本で覚えた介護の技術やお世話の方法をギニアに広めていくことから始めます。そして、いきなり大きなホームはつくれないから、最初はデイケアから始めていきたいです。残念ながらギニアは数年前に軍部によるクーデターが起き、今も政情不安が続いているため、僕はもう2年も国に帰っていません。今は早く帰って母のお墓参りをして、老人ホームをつくる夢のことも報告したいですね。そして、日本で介護の仕事をしている人は、お世話するおじいちゃん、おばあちゃんたちを、ぜひ自分を育ててくれたおとうさん、お母さんだと思って接して欲しいと思います。


インタビューを終えて
ギニアの「ハミガキ」を実演してみせるサンコンさん

いつも笑顔を絶やさず、お母さんのことを話すときは少し涙ぐみながら、「こうやって手を握ってね」とインタビュアーの手を握って話すサンコンさん。礼儀正しく、相手のことを一番に考えて行動するサンコンさんは、日本人が失ってしまった古きよき時代の礼節を知る、人情にあふれた人でした。ギニアに老人ホームをつくる夢、ぜひ実現してくださいね!


ギニアの「ハミガキ」を実演してみせるサンコンさん。硬い木をつかったハミガキのおかげで今でも虫歯のない立派な歯をされています。




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