知っておきたい高齢者の食事講座

vol.10 遠野市【前編】
産官学が連携、データ活用で食事指導も

第10回は、岩手県遠野市の取り組みをご紹介します。柳田国男の「遠野物語」の舞台として知られる遠野は、日本の原風景ともいえる豊かな自然に囲まれています。市民の高齢化率は4割に迫っており、介護予防は喫緊の課題の一つです。市では産官学の連携の下、ICT(情報通信技術)を活用した新たな健康づくりの取り組みもスタートさせ、運動教室の中で、高齢者への栄養指導も行っています。今回は、市健康長寿課の方にお話を伺いました。前編・後編の全2回でご紹介します。

岩手県は、脳卒中の死亡率が全国的に高い傾向にあります。厚生労働省の2015年度の「都道府県別年齢調整死亡率」(対人口10万人)によると、男性は全国ワースト3位(51.8人)、女性がワーストワン(29.3人)と、いずれも上位にランクインしています。

脳卒中のリスクを高める高血圧は、塩分の摂りすぎが原因の一つとされています。市では2023年度までに、市民の塩分摂取量を男性8.0グラム、女性7.0グラムまで引き下げる目標を掲げていますが、2017年度の段階では、男性10.1グラム、女性9.6グラムと塩分過多となっています。

40~74歳の国保の加入者を対象に、市が2018年度に行った特定健診(受診率は49.6%)の結果を見ると、男女共に血糖値が高い傾向が読み取れます。これは、遠野には「おやつ」を表す「こびる(小昼)」という方言があり、農作業などの合間におやつを食べる風習があり、間食を摂る方が多いためです。また、女性では夕食後に間食をしている方が目立ちました。

一方、要介護認定を受けていない65~87歳の市民2018人(回収率は約7割)に、「基本チェックリスト」の項目について尋ねたところ、低栄養状態(半年で体重が2~3キロ減少かつBMI18.5未満)と判定された人は全体の1.1%(22人)にとどまりました。ただ、身長や体重はご自身に書いていただきますし、未記入の方もいるので、さらに多くの方が低栄養になっていると考えられます。

1人当たり医療費で年7.8万円の効果

市民の介護予防につなげようと、市では2016年秋から、歩行数や運動教室への参加などに応じて、市内の商店街などで使えるポイントを付与する制度をスタート。参加者には、歩行数や消費エネルギーなどを記録できる活動量計を貸し出し、血圧や筋肉量・体脂肪量などの情報と併せて、インターネット上で健康状態を管理できるようになっています。

また、週に1回、市内11カ所で開かれる運動教室には、管理栄養士も同行し、データを活用した個別の栄養指導を行っているほか、会場で「ミニ栄養講座」を開いたり、食習慣について啓発するちらしを配ったりしています。

利用できるのは原則40歳以上ですが、参加者1180人(2019年7月末現在)の約半数は65歳以上で、中には85歳の方もいらっしゃいます。要介護状態になる前の段階で専門職が関わることができるので、フレイル(虚弱)の予防にもつながると考えています。

市では、事業の参加者1人当たりの医療費について、年間7.8万円の抑制効果があると公表しています。また、県外の4市町と協定を結び、2024年までには、遠野市を含む5市町全体で、医療費と介護給付費合わせて年間12億円の抑制につなげることを目指しています。

天然だし普及も脳卒中予防に一役

岩手県は、毎月28日を「いわて減塩・適塩の日」と定めるなど、県を挙げて脳卒中の予防に取り組んでおり、市では、高齢者の食育支援の一環として、減塩・適塩の普及啓発を行っています。

県の委託事業で行っている「突撃!隣のお味噌汁」では、市の食生活改善推進員の方が、塩分測定器を手に一般家庭を訪問。ご自身の味噌汁の塩分濃度を知ってもらうことで、減塩の啓発につなげています。時には、地域の集会所に味噌汁を持って来ていただき、塩分の測定をすることもあります。

さらに、天然だしの普及にも力を入れています。だしなどで食材の旨味を引き出すことができれば、味噌の量が少なくても、味噌汁を美味しく、適塩で飲むことができます。高齢者だけでなく、赤ちゃんの健診の場で若いお母さん達にも試飲してもらい、ご家庭の味と比べていただいたり、煮干しと昆布をパックに詰めてお渡ししたりして、減塩・適塩の良さを広めています。

遠野市

菊池錠二氏(左)

遠野健康福祉の里 健康長寿課 包括支援係(遠野市地域包括支援センター)係長(社会福祉士・主任介護支援専門員)

板垣春実氏(右)

遠野健康福祉の里 健康長寿課 健康推進係(管理栄養士)

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