知っておきたい高齢者の食事講座

vol.12 献立選びの癖を知って栄養改善を

第12回は、介護予防のための栄養改善プログラムの第一人者として知られる熊谷修先生です。先生には、第1回にもご登場いただき、老化と食事の関係について解説していただきました。先生が開発した「10食品群チェックシート」は、読者から大きな反響がありました(vol.1 高齢者にとって望ましい食事とは何か?)。
先生は2018年12月、食品摂取の多様性を改善するための新たなツール「食事パタンチェック票」を発表しました。(熊谷修、地域高齢者の食品摂取の多様性を形成する食品摂取パタンと介護予防活動への応用、厚生の指標 2018;65(15):15-23)
新たなチェック票は、集団や個人の食品摂取の多様性がどのような食事様式で形づくられているのか、その特徴を知るために用います。栄養改善しようとする方の食事様式に偏りがないかを点検して、その偏りをなくすことで食品摂取の多様性を改善することを目指すものです。
今回は、シニア世代に求められる栄養改善の重要性と「食事パタンチェック票」についてお話を伺いました。

食品摂取の多様性に富んだ食事とは?

私は多くのメディアを通して、シニアにとって「肉類や油脂類の摂取がとても重要」なことを長年提唱し続けてきました。始めに、いま一度この科学的背景に触れましょう。

私たち、東京都老人総合研究所(現東京都健康長寿医療センター研究所)のチームは1991年から、日本で最も早く、老化と食生活の関係を解き明かす研究に着手しました。この一連の研究により、「日本食をベースにした適度に欧米化した多様性に富んだ食事」を営んでいるシニアほど老化が進みにくく、要介護になるリスクも低いことが明らかになりました。

戦後(特に東京オリンピック終了後の15年間)、日本のシニアは世界一の速度で平均余命を伸長させましたが、それには肉類、卵、牛乳、および油脂類の摂取量の増加が寄与していました。この歴史的知見は、私たちの研究成果ととてもよく符合するものです。

長年、シニア世代に肉類や油脂類の摂取を勧めてきたのは、これらの食材が「適度に欧米化した日本食」を象徴しているからです。(熊谷修;介護されたくないなら粗食はやめなさい、講談社 2011年)

10食品群の摂取頻度をもとに算出する食品摂取の多様性得点は、「日本的な食事様式をベースにした適度に欧米化した多様性に富んだ食事」を営んでいるのかどうかを評価するための数値です。こうした科学的背景を十分理解して、「10食品群チェックシート」を使うようにしてください。

老化と深く関わる食品摂取の多様性

食品摂取の多様性得点は、老化の速度を予測することができる優れた栄養指標です。老化の速度を遅くするためには、9点程度の高い水準の多様性が求められますが、自立した地域のシニアを実際に調査してみると、平均点は4.3点程度(満点が10点)しかありません。地域で元気に暮らしている高齢者の6割以上が、積極的な食事の改善が求められているのが現状です。

最近、シニアの健康問題をあえてフレイル、あるいはロコモティブシンドロームなどと表現して活動するケースが見受けられます。

しかし、これらのカタカナ用語は、老化を基盤としたからだの普遍的変化の一部を印象表現したものと考えていいと思います。これでは、老化による健康問題があたかも病気であるかのように勘違されてしまいます。そもそも老化と病気は全く異なる変化です。老化による健康問題は、病気の自然史に対応した予防概念(一次予防、二次予防など)に当てはめにくいのです。

病気には、進行段階に応じた治療手段がおおむねありますが、老化の場合、「ここまで老化が進んだらこの手立てがある」といった対処法は、今のところ確立されていないからです。従って、シニアのための健康づくり(介護予防活動など)は、老化に耐えられるからだの「予備力」を備えることが最良手段になります。

老化とはからだの栄養が低下する変化

意外と理解が広がらないのが、老化は、からだの栄養状態が自然に低下してゆく変化であるということです。シニア期は、“しっかり食べる”を基本とした食生活が土台になければなりません。にもかかわらず、老化に伴って食べる量は確実に減ってしまいます。

個人差はありますが、多くの研究からおおむね40~70歳の30年間に、食べる量が15~25%減ることが分かっています。シニア世代は、コンパクトな量でもしっかりと栄養が摂れるような食事構成が必要になるというわけです。そして、その手立てが食品摂取の多様性の向上です。

主菜と副菜の選択で、多様性は決まる

私たち日本人は、主食、主菜、副菜を組み合わせる食事を基本とします。このため、食品摂取の多様性は1日3食の主菜、副菜の影響を大きく受けることになります。すなわち主菜、副菜にどのような献立を選ぶかによって、多様性得点は決まってしまうのです。主菜と副菜がどのような食材で構成されているのかをわかりやすく類型化し、献立選びの特徴や癖をつかんで改善を促せば、食品摂取の多様性が自然と高まります。それを目指して開発したのが、「食事パタンチェック票」なのです。

主菜には、洋食系や和食系があり、嗜好も手伝って偏りが出がちです。一方、副菜は摂るか否かも違いとして出てきます。主菜、副菜の選び方の傾向に大きな個人差のあることは容易に想像できます。

また、「10食品群チェックシート」で丸印が多く入るよう、主菜や副菜選びで工夫するポイントも、メニュー選びの癖によって一人ひとり違うはずです。自らの献立選びの癖をつかみ、多様性得点が低いのは和食系の主菜に偏りがちなためなのか、それとも洋食系に偏りがちなためなのか、副菜を付けることが少ないからなのか、これらを点検して改善すれば、多様性の向上につながるでしょう。

熊谷 修 先生

熊谷 修 先生

一般社団法人全国食支援活動協力会理事。東京都健康長寿医療センター研究所協力員。学術博士。1979年、東京農業大学卒。地域住民の生活習慣病予防対策の研究・実践活動を経て、高齢社会の健康施策の開発のため東京都老人総合研究所(現・東京都健康長寿医療センター研究所)へ。わが国初の「老化を遅らせる食生活指針」を発表し、シニアの栄養改善の科学的意義を解明した。介護予防市町村モデル事業支援委員会委員、人間総合科学大学教授歴任。介護予防のための栄養改善プログラムの第一人者。

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