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おむつ実践講座 症状別の尿もれ対策方法をご紹介します。

認知症でおむつ交換に抵抗があり、尿もれにお悩みのTさん

対象者のプロフィール

【Tさん/87歳/女性/要介護5/38kg/福岡県北九州市在住】
Tさんは、アルツハイマー型認知症が進行するにつれ、記憶障害、妄想、判断力の低下、攻撃的な言動などの症状が現れてきました。現在は、ほとんど寝て過ごしていますが、時間や日によって症状は大きく変化し、状態のよい時は、起き上がってベッドに座ったりポータブルトイレを使用することもあります。

Tさんと2人暮らしの娘さんは、親が認知症であることを世間に知られたくないと、ヘルパーによる介護サービスを拒否して独りで介護を続けてきました。Tさんは、現在、テープ式のおむつに尿とりパッドを複数枚重ねて使用していますが、毎朝背中・股からの尿もれがあるため、シーツや衣類などの汚れ物も増え、娘さんは大量の洗濯に追われて自分の時間があまり持てません。長年の介護と尿もれによる家事の増大で、精神的にも追い詰められ、過労気味となった娘さんは、ついにヘルパーサービスを利用することにしました。訪問したケアマネジャーさんから、 「花王・リリーフふれあいダイヤル」 への相談をすすめられ、他人におむつの相談をすることに抵抗感があった娘さんも、自己流だったケアの仕方に見直しが必要かもしれないと、電話をかけてみることにしました。

相談内容

■認知症でおむつの品質など分からないと思い、1番安い特価品を使用している
■おむつの種類が多いのは知っているが、あれこれ探す 時間もなく、手っ取り早い方法だと思って尿とりパッドを何枚か重ねている
■おむつ交換のときに抵抗するので、ゆっくり交換できない
■手をおむつの中に入れて尿とりパッドを外そうとする
■認知症の症状は落ち着いている日もあるが、尿もれは毎日繰り返されるので洗濯など家事の負担が増大した

助言内容・対応方法とその結果

メンタル面のケア

認知症の方でも適切な排泄ケアは重要であること、尿もれが治まるにつれ、認知症の症状も落ち着くケースがあることを理解してもらいました。

「排泄」にかかわることは、大変デリケートな問題です。Kさんご自身も「排泄」に関して、自分の思うようにならないことに複雑な気持ちをお持ちのはずです。まして、そのお手伝いをご家族にしてもらい、負担になっているのではないかと心を痛めていらっしゃるのではないでしょうか。排泄ケア用品は、介護する方の使い勝手だけでなく、ご利用者様ご自身の立場に立ち、尊厳を守る、快適なおむつ選びが重要です。また、おむつのあて方についても同様です。

身体状況の確認

認知症が進行するにつれ、記憶障害、妄想、判断力の低下、攻撃的な言動の数々の症状を発症しています。認知症の方には、おむつ交換に抵抗したり、尿とりパッドを外そうとしたりする行為がみられます。また、認知症の症状は日によって状態の良し悪しが変動することもあり、排泄パターンも寝たきりでおむつ交換をする日もあれば、ベッド脇のポータブルトイレに座ることができるなど、一定ではありません。

アドバイスと対応

通常、寝て過ごす時間が多い方はテープ式おむつを使用するのが一般的ですが、おむつ交換の際の抵抗や、日によって心身の状態が変動することを考慮し、手早く交換できる、2wayタイプのおむつがおすすめです。

【抵抗時も2wayタイプのおむつで手早く交換】
おむつ交換に抵抗されたときは、おむつのテープを丁寧に止めていられません。2wayタイプのおむつなら、ミシン目を破いてテープ止めに開け、おむつ全体にギャザーが入っているので、テープを止めただけでパンツタイプのようにフィットします。取り急ぎテープを止めた後、位置を少し調整する程度でピッタリとおむつを当てることができます。

【尿とりパッドは1枚だけ、抵抗感が強ければおむつ単体でもOK】
尿とりパッドを外そうとする行為は、パッドの重ね使いによる違和感や不快感が原因と考えられます。また、尿とりパッドを重ねることで、もれを防げると思われがちですが、パッドを何枚重ねても吸水量は変わりません。尿とりパッドは尿が下に染みこまない構造なので、重ねて使っても意味はなく、かえっておむつと身体の間に隙間を作り、尿もれを起こしやすい状況を作り出してしまいます。それに、尿とりパッドを複数枚重ねると、おむつと身体との間に隙間ができ尿もれの原因となるため、尿とりパッドは1枚だけで使いましょう。尿とりパッドを適切に使用すれば、外側の2wayタイプのおむつを毎回交換することなく、汚れた尿とりパッドだけ換えればよいので経済的です。ただし、どうしても尿とりパッドを嫌がられる方には、おむつのみを単体で使用することも可能です。

【体調に応じて1枚2役を使い分け】
認知症の症状や体調の変動に応じて、パンツタイプとテープ式タイプの切り替えが簡単にできます。ポータブルトイレを使えるときは上げ下げしやすいパンツタイプ、心身の調子が悪くベッド上で寝たままおむつを交換する際はミシン目に沿っておむつを破いてパンツタイプからテープ式タイプへ変形して使用しましょう。 これらのご相談内容とアドバイスをまとめた冊子 「アドバイスブック」 を作成し、サンプル製品・製品カタログとともにお送りしました。

結果

後日、娘さんから 「サンプルのおむつを使ってみたら尿もれせず、洗濯が減ったので楽になった。これまで抵抗されて苦労していたおむつ交換も、伸縮性のあるおむつのおかげで手早く行える。尿とりパッドの重ね使いを止めたら不快感がないのか、おむつの中に手を入れる行為も減った。おむつ交換のとき、サラサラしている感触から通気性があることがよくわかり、おむつによってこんなに違うのかと驚いた。洗濯が減っただけでも自分の時間が取り戻せて気持ちに余裕ができた。先日、おむつ交換の時に話しかけてみたら母が笑顔を見せた。久しぶりにそんな表情が見られただけで世話する身には、うれしいもの」 と、ご報告をいただきました。

ケアマネジャーの皆さんへのワンポイントアドバイス

認知症の方は身体状態を自ら訴えることが少ないので、周囲の人が把握して対処することが重要です。しかし、懸命に介護しても抵抗されたり、記憶にとどめてもらえなければ 「何をしても現状は変わらない」 と、介護者が無力さを感じるのも無理はありません。さまざまな認知症の症状を、周囲の接し方だけで改善していくのは困難ですが、ケアマネジャーの皆さんには 「状態に合わせた介護をいかにしやすくするか」 という視点を忘れず、介護者をサポートしていただきたいと思います。

その方の状態に合った排泄ケアを普及させるには、単に製品についての関心を持っていただくだけでなく、住環境や身体状況なども考慮した多角的なアドバイスが求められます。例えば、認知症のご利用者様で、症状の進行を遅らせる薬や、ウツや不安をやわらげる向精神薬などを服用されている方が多くいらっしゃいます。薬剤の作用が尿量に影響することもあるので、排尿量を計測し、排尿パターンをつかむことも適切な排泄ケアの一環です。また、認知症は現在、根本的な治療法が見つかっていません。長期にわたり日常生活に支障をきたす症状があらわれ、それを支える介護者の精神的な負担は計りしれません。そうした方々の排泄トラブルにかかる余計な手間を省くことで、時間や気持ちに少しでも余裕が生まれるように、支援を続けて行きましょう。

ゆとりができた介護者が認知症の方へ声かけなどを行うと、言語機能の維持や感情、意欲の改善に役立つこともあります。Tさんの娘さんは 「声かけをしたら、久しぶりに母の笑顔が見られたが、それだけでうれしい」 と、電話をくださいました。認知症の対応に追われる介護生活でも決して失うものばかりでなく、介護のなかから得るものも少なくないことを、改めて認識させられたお言葉でした。ケアマネジャーの皆さんとともに、こうした現場の声に耳を傾けつつ、排泄トラブルに悩む方に快適な排泄環境を提供できるよう支援していきたいと思います。

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