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おむつ実践講座 症状別の尿もれ対策方法をご紹介します。

麻痺や拘縮のため、横向き寝の尿モレにお悩みのWさん

対象者のプロフィール

【Wさん/76歳/男性/要介護5】
Wさんは、右半身(右上肢・右下肢)に麻痺や拘縮があり、寝たきりの状態です。夜間は左側を下にして寝ています(左側臥位)。週に1、2度、朝起きた時に、衣類がぐっしょり濡れていることがあります。

介護者である娘さんが、おやすみになる12時頃に最後のおむつ交換をして、翌朝の6時にはおむつの交換をしています。

現在、テープ式おむつの中に、フラットタイプのおむつを敷き、その上に夜用の尿とりパッドを重ねて使用しています。

尿モレがあった時には、朝からパジャマの着替えをさせたり、シーツの交換をしたりしなければならないので大変です。介護者である娘さんから「周囲の人に、尿とりパッドを性器に巻きつける方法もあると聞いたが、尿モレ解決のために何かよい方法があれば教えてほしい」と「花王・リリーフふれあいダイヤル」にご相談がありました。

相談内容

■右半身(右上肢・右下肢)に麻痺と拘縮がある状態
■就寝時の姿勢は、左側を下にした(左側臥位)横向き寝
■テープ式おむつの股や横脇から尿モレ
■尿モレ防止のためにフラットタイプのおむつの上に尿とりパッドを重ねて使用

助言内容・対応方法とその結果

メンタル面のケア

Wさんの娘さんは、自分なりの方法で、尿モレを解決しようと試行錯誤の結果、テープ式おむつの中に、大きなフラットタイプのおむつを使う方法にいきついた様子です。しかし、なかなか尿モレが改善されずに悩んでいます。

週に何度も尿モレがあると洗濯物も多くなりますが、家事の負担だけでなく、精神的にも大きな負担になっていることを理解しましょう。

また、Wさんご自身も、朝のおむつ交換まで不快なお気持ちで待っているかもしれません。介護する方だけでなく、介護される方の立場に立ち、最適なおむつ選びとおむつのあて方をアドバイスします。

身体状況の確認

Wさんは右半身(右上肢・右下肢)に麻痺と拘縮があり、右脚が細くなり、股間を広げることも困難になっています。

同じ姿勢で長時間横になっていると同じ場所に体圧がかかり、床ずれができやすくなります。また、肌トラブルを少しでも少なくするためにもおむつ内の環境を快適に保つ必要があります。おむつ交換の際に、お尻や性器周辺に肌トラブルがないか必ず観察することが重要です。

アドバイスと対応

【尿モレの原因】
尿モレの原因は、いくつか考えられます。

(1) フラットタイプのおむつを、テープ式おむつの中に敷いていますが、フラットタイプの幅がテープ式おむつの股間幅よりも広いために、モレ防止の立体ギャザーをつぶしてしまうだけでなく、股間からはみ出してしまいます。

フラットタイプおむつには、立体ギャザーがないのでモレ防止の機能がありませんから、尿モレをおこしてしまいます。

(2) フラットタイプおむつの上に、尿とりパッドを重ねて使用していますが、尿とりパッドは外に尿がしみこまないように工夫されているので、重ねた部分がムダになるだけでなく、重ねた厚さですき間ができやすくなりモレの原因になります。

(3) 麻痺や拘縮があると、尿モレしやすくなります。 麻痺や拘縮のある側を動かすことがなくなるため、筋肉が落ち、細くなる傾向があります。また、拘縮で脚が曲がった状態だとおむつをきちんとあてることが難しくなります。

(4) 身体が斜めになると、どうしても尿が流れてモレやすくなります。 実際、仰向き寝と横向き寝の時の、おむつの尿吸収量を比較すると、横向き寝は、仰向き寝の1/2程度しか尿を吸収することができません。(従来のテープ止めタイプおむつと 尿とりパッド併用の場合)そのため、横向き寝の時間の長い方は、横モレ防止の対策が、どうしても必要になります。

(5) 男性の場合は、男性器は、寝る姿勢や体の動きで先端部が大きく動きます。左側臥位でおやすみになっているので、その方向に男性器が傾いているために、尿モレが発生していることも考えられます。

【体型に合ったおむつ選びと使い方】
現在、使用しているテープ式おむつには、脚まわりからのモレを防止する立体ギャザーがありますが、この立体ギャザーが脚のつけ根にしっかりと沿うことで、尿モレを防ぎます。

しかし、脚が細くなっている状態だとどうしても、立体ギャザーが脚のつけ根に沿うことができず、すき間ができてしまいます。脚まわりにも吸収体がついているテープ式おむつをおすすめしました。

細い脚の太ももに合せてピッタリと吸収帯で囲めば、尿モレを防ぐことができます。脚まわりが細い方の場合は、テープを仮止めした後、下のテープを上にひっぱり気味に止めます。

【体型に合ったおむつ選びと使い方】
フラットタイプのおむつは不要です。フラットタイプのおむつと尿とりパッドを重ねるのではなく、高吸収量の尿とりパッド1枚でしっかりと尿を吸収するようにあてることが大切です。

高齢者の男性の場合、尿とりパッドを性器に巻きつけて使用しても、おむつの中ではずれてしまっているケースが多く見受けられます。尿とりパッドの外側は尿が外に染み出さないように防水シートになっています。

おむつの中ではずれた尿とりパッドの防水シートの上を尿が伝ってモレてしまうことが考えられます。また、直接、防水シートがお肌にはりつき、肌トラブルを起こすことも考えられます。

男性でも尿とりパッドは敷いて使うことをおすすめします。高吸収量の尿とりパッドは、ひょうたん型をしていますので、男性の場合は幅の広い方を性器側にして使います。このときに尿とりパッドのモレを防止する立体ギャザーをしっかりと立たせます。

【重ね使いをしない】
尿モレが発生するからと、フラットタイプのおむつと尿とりパッドを重ねて使用していますが、かえっておむつとお体の間にすき間を作ってしまい尿モレの原因になってしまいます。外側のおむつの中に通気性のある尿とりパッド1枚で使っていただくことをおすすめします。ムレによる肌トラブル防止のためにも大切なことです。

結果

サンプルとあて方の説明(アドバイスブック)を読んで、実行してみたというWさんの娘さんからお電話をいただきました。

「テープ式のおむつにもいろいろなものがあることを知りました。おむつのテープの止め方や尿とりパッドの使い方を説明してもらい、自分なりにモレないようにと工夫していたことがかえって、モレをおこしていたことを知りました。

やはり専門の方に相談してよかったと思いました。 今のところ、朝の尿モレもなく、本当に感謝しています。父にとっても、娘に負担をかけているという思いから開放されてるのではないかと思います。

また、相談員の方に、「お肌のトラブルはありませんか?」と聞かれたことで、おむつ交換の時には、お尻が赤くなっていないかなど注意して見るようになりました。これからも、困ったことがあったら相談にのってもらえるところがあると思うと安心です。」

と、元気に話されていて、落ちついた様子にこちらも安心しました。

ケアマネジャーの皆さんへのワンポイントアドバイス

ご利用者様の体型は、ひとりひとり皆違います。今回のご相談のように、麻痺や拘縮がある場合や脚が細くなっていたり、脚のつけ根に凹みがある場合は、まず体型に合ったおむつ選びが大切です。

今回のご相談のケースでは、要介護5のために、行政からの支給があり、「フラットタイプおむつ」を選んでいるとのことでした。

行政支給がある場合は、申請方法だけにとどまらず、ご利用者様のお体の状態に合わせたおむつ選びをお手伝いいただくことが大切になります。

現物支給の場合は、ご利用者様にとって、一番必要とするおむつを選び、もし、自己負担分が必要になった時には何を購入するのが経済的にも負担が少なくて済むかまで、アドバイスできるといいですね。

また、麻痺や拘縮があると体位交換も大変になりますので、エアマットやクッションなどを利用して床ずれの防止にも配慮します。また、おむつ交換の時に、必ずお肌の状況を観察していただくようにしましょう。

床ずれが発生するとますます、ご利用者様のQOLが低下してしまいます。床ずれなど重篤な状態になる前に、変化を見つけたら医療機関と連携して、早めの処置を行ないましょう。

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