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小濱道博の介護経営よもやま話 小濱道博の介護経営よもやま話

VOL.3印鑑の無断使用は他人事ではない

2019/11/29 配信

居宅で印鑑を無断使用、2610万円返還へー京都・八幡市」―。11月1日のケアマネジメント・オンラインの記事は、介護業界に大きな衝撃を与えた。行政処分の対象が社会福祉協議会だったこともあるが、「印鑑を無断使用」の部分が非常にショッキングだ。

大きな声で言えなくても、判断力の欠如など、利用者から印鑑をもらえない状況の中、ケアプランの同意などで、仕方なく手持ちの三文判を使用したり、その誘惑に駆られたりしたことのある方は、意外と多いのではないだろうか。

増える遠方家族への説明・同意

近年は核家族化が進み、少子化も相まって、家族と同居する利用者は減少傾向にある。利用者本人が、認知症などで判断能力を欠く場合、長男など親族から同意を得ることが求められる。親族が近くにいれば良いが、転勤や結婚などで遠方にいるケースも多くなっている。ケアプランの説明・同意のためだけに地元に来てもらうことはできない相談だ。

家族が遠方で暮らしている場合は、仕事が終わって自宅に戻る時間帯などを見計らって、電話で説明するなどの対応を行う。電話で説明、同意を得た上で、その日を同意日に設定して書類を郵送。押印・サインをしてもらった後、書類を返送していただく。

このやり方は従来、介護施設の入居者で一般的だったが、近年は在宅サービスでも見かけることが多くなっている。それだけ孤独な利用者が増えているのだ。この辺りもしっかりとアセスメントした上でケアプランに盛り込み、サービス担当者会議で情報を共有し、地域としてのケアを考えなければならない。

話を元に戻そう。書類への押印を電話で依頼すると、通常は「すぐに送り返します」との答えが返ってくる。サービス利用当初は緊張感もあるので、すぐに対応してくれるが、それが何年も続くと、慣れが生じてくる。

「すぐに送り返す」と言いながら、何カ月経っても書類が届かない。意を決して催促の電話をする時、相手の虫の居所が悪いと、“逆ギレ”されることもある。そうこうしているうちに、次のケアプランの作成時期を迎え、同じ事を繰り返している間に、家族との関係がギクシャクする―。そんな経験をお持ちではないだろうか。

印鑑もらえない…どうする?

そんな時、実地指導の通知が届くと大変だ。一部のケアプランに同意のサイン・押印がない。このままでは、介護報酬の返還指導となり、最悪の場合、行政処分を受けるかもしれない―。

こうした切迫した状況下で、あなたは三文判使用の誘惑に打ち勝つことができるだろうか。人間は弱い生き物だ。些細なことで一度モラルを踏み外すと、一気に坂を転げ落ちることになる。「あれもこれも良いだろう」と自分勝手なルールを作り、印鑑を無断使用するケースが増えていく。そしていつの間にか、事業所全体に広がり、“暗黙のルール”となっていくのだ。

外部の事業所から転職した職員は当初、そのことに疑問を抱いたはずだが、人間は環境に染まるのが早い。そのうち、それが当たり前となり、今回のような事件に発展する。

最初は些細なことだとしても、一気に坂道を転げ落ちるリスクは至るところにある。利用者から金品を盗む。暴力を振るう。虐待、暴言、罵倒…。そこまでいかなくても、仕事で手抜きすることもあるだろう。こうした事態を防ぐには、コンプライアンスを理解した責任者が、強い管理体制を築くしかない。例外を認めず、「駄目なものは駄目!」ときっぱりと言い切ることが必要だ。それができない組織は崩壊する。

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小濱道博(こはま・みちひろ)

小濱道博(こはま・みちひろ)
小濱介護経営事務所代表。北海道札幌市出身。全国で介護事業の経営支援、コンプライアンス支援を手掛ける。介護経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。個別相談、個別指導も全国で実施。全国の介護保険課、介護関連の各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター等主催の講演会での講師実績も多数。C-MAS介護事業経営研究会・最高顧問、CS-SR一般社団法人医療介護経営研究会専務理事なども兼ねる。

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