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小濱道博の介護経営よもやま話 小濱道博の介護経営よもやま話

VOL.5居宅のみ赤字は作為的、背景に事業所の中立性

2020/01/30 配信

昨年末、厚生労働省は「令和元年度介護事業経営概況調査」の結果を公表した。それによると、居宅介護支援の収支差率はマイナス0.1%で、全サービス中で唯一マイナスだった。

収支差率とは、収入(介護報酬など)から支出(経費や借入利息など)を差し引いた金額(利益)が、収入全体の何割を占めるかを示す数字だ。一般的には利益率とも呼ばれる。

マイナス0.1%とは、月の収入が30万円の場合、300円の赤字という意味だ。居宅介護支援の収支差率は、この10年間で継続してマイナスとなっている。

1.厚労省の介護経営調査は2種類ある

ちなみに、今回の「介護事業経営概況調査」のほかにもう一つ、今年秋口に公表される「介護事業経営実態調査」があり、どちらも3年に1度の頻度で実施される。

その違いは調査対象の数(サンプル数)だ。今回の「令和元年度介護事業経営概況調査」の有効回答数は7330施設・事業所で、「平成29年度介護事業経営実態調査」(1万5062施設・事業所)の半分程度しかない。

これらの調査の目的は、介護報酬改定のための参考データを得ることにある。当然、サンプル数が多ければ多いほど、データとしての精度は高まるため、「介護事業経営概況調査」は、いわば“前哨戦”と言える。そして、その結果を基に、本調査である「介護事業経営実態調査」の概要が決まるのだ。

2.居宅介護支援の収支差率は改善傾向

「介護事業経営概況調査」における居宅介護支援の収支差率の推移を見ると、マイナス4%(平成22年度)→マイナス3.1%(同25年度)→マイナス1.8%(同28年度)→マイナス0.1%(令和元年度)と、改善傾向にあることがわかる。

調査年度 H22 H23 H25 H26 H28 H29 R1
介護事業経営概況調査 収支差率 -4% -3.1% -1.8% -0.1%
給与比率 79.8% 86.9% 85.6% 83.4%
介護事業経営実態調査 収支差率 -2.6% -1% -1.4%
給与比率 80.4% 81.9% 84.1%

その要因の一つが、給与比率の減少だ。給与比率とは、収入に占める給与費の割合である。だが、ひと口に居宅介護支援といっても、1人事業所から「特定事業所加算」を算定する中・大規模事業所まで幅が広い。それを一体的に捉えるのは無理がある。

先述した通り、「介護事業経営概況調査」は“前哨戦”の位置づけとなるため、データとしてはここまでである。一方、「介護事業経営実態調査」では、より詳細な分析が行われている。令和2年度の調査結果の公表は今年秋口になるので、今回は、直近の「平成29年度介護事業経営実態調査」を基に、居宅介護支援の経営について考察したい。

3.赤字と黒字の境は「利用者100人」

下のグラフは、「介護事業経営実態調査」における居宅介護支援の事業規模別の収支差率だ。右から左に向かって、調査年度が新しくなっていく。「20人以下」から始まる人数は、1カ月の利用者数を示している。これを見ると、居宅介護支援の経営の実態がひと目でわかると思う。

小濱道博の介護経営よもやま話

調査年度によって多少ばらつきはあるものの、1カ月の利用者数が多くなる、すなわち事業規模が大きくなるほど、収支差率は上昇し、収支がマイナス(赤字)からプラス(黒字)に変わる分岐点は、利用者数100人前後となっている。

利用者数100人前後ということは、ケアマネジャーが3人程度いる事業所ということになる。ケアマネジャーが3人在籍していれば、「特定事業所加算(III)」の算定も狙える。一方、利用者数40人以下を1人事業所と捉えると、「20人以下」で赤字幅は最大となる。

例えば、利用者数が30人の事業所の場合、

【収入】
30万円(単価1万円×利用者30人)

【経費】 
給与………25万円
通信費………2万円
車両経費………2万円
諸経費………3万円
合 計………32万円

「収入30万円−経費32万円」で、2万円の赤字だ。収支差率に直すと、マイナス6%となる。仮に家賃3万円を上乗せすると、合わせて5万円の赤字となり、収支差率はマイナス16%まで膨らむ。

ところが、「特定事業所加算」を算定すると、単価は1万円から1万3000円となり、収入は39万円に増える。3万円の家賃を支払っても、「39万円−35万円」で4万円の利益が見込める。

居宅介護支援事業所が、事業収支をプラス(黒字)にするためには、「特定事業所加算」の算定が必須だということが、おわかりいただけただろうか。試算が大雑把なのはご容赦いただきたい。

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小濱道博(こはま・みちひろ)

小濱道博(こはま・みちひろ)
小濱介護経営事務所代表。北海道札幌市出身。全国で介護事業の経営支援、コンプライアンス支援を手掛ける。介護経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。個別相談、個別指導も全国で実施。全国の介護保険課、介護関連の各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター等主催の講演会での講師実績も多数。C-MAS介護事業経営研究会・最高顧問、CS-SR一般社団法人医療介護経営研究会専務理事なども兼ねる。

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