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結城教授の深掘り!介護保険 結城教授の深掘り!介護保険

VOL.18どうなる、2割負担の拡大

2019/12/5 配信

2割負担の新基準、「188万円」になる可能性

2021年4月の介護保険法改正で、2割負担の対象者が拡大するかどうか―。これはケアマネジャーにとっても最大の関心事の一つだろう。現行の2割負担の基準が引き下げられ、より所得が少ない人にも2割の負担が求められるようになれば、要介護者の利用控えがさらに進む恐れがあるからだ。

その動向を予測する上で興味深い資料が、10月28日の介護保険部会で示された(表参照)。資料では、モデル(厚生年金)年金収入等188万円が明示され、それ以下の層は記されていない。この層は第一号被保険者の上位約35%となっている。

これまで私は2割負担の対象者が拡大されるとしたら、新たな基準は(1)市町村民税世帯全員が非課税(年収約155万円)か、(2)世帯全員が市町村民税非課税かつ本人年金収入等80万円以下(生活保護受給者含む)、(3)モデル年金(厚生年金)188万円-のいずれかになると考えていた。

上記の資料が示されたことで、仮に2割負担の対象拡大が実施されるなら、(3)が基準になる可能性が極めて高くなった。

見落とせない後期高齢者医療制度の動向

ただし、「これで2割負担の対象者が拡大する」と断言はできない。後期高齢者医療制度の改正に向けた議論の動向も注視していく必要があるからだ。

財務省の審議会では後期高齢者医療制度の自己負担について「新たに75歳になる者から、70~74歳時と同じ2割の維持(現在1割負担となっている者の負担の引き上げではない)」という提案がなされている。これから後期高齢者医療制度に加入する74歳以下の人は、既に2割分を負担しているから、75歳以降も同じ負担を求めてもあまり問題ではないというわけだ。その一方、既に加入している人の負担は1割で据え置かれることになる。

この案だけなら緩和的な制度移行といえる。だが、ここに介護保険サービスの2割負担拡大が加わると、75歳以上になる人には、かなり急激な負担増となる。それだけに後期高齢者医療制度の自己負担が変更になれば、介護保険制度における2割負担の対象者拡大は、政治的な判断によって見送られる可能性も出てくる。

なお、後期高齢者医療制度の負担割合変更については、既に政府の全世代型社会保障検討会議でも検討が始まっている。

国政選挙への配慮も影響?

医療や介護における自己負担増の改正を実施するか否かの判断には、国政選挙の日程も微妙に影響してくるかもしれない。参議院の場合、2019年夏に選挙が実施されたから、次回は22年夏だ。衆議院は解散があるか否かで未知数だが、とりあえず21年秋までが任期となっている。一方、介護の2割負担拡大が実施されるとしたら21年4月。後期高齢者医療制度の2割負担導入は、早ければ22年4月が想定される。

つまり、高齢者への負担増が連続する中、衆参の選挙が行われることになる。与党にとっては歓迎できる状況でないだろう。もしかすると、中期的な選挙戦略から医療か介護の自己負担割合の引き上げを見送るべきとの声が与党から上がり、官邸に届くかもしれない。

2割拡大の是非は、政治決着へ

昨今は、官邸を中心とした政治主導によって、政策や法案の方向が決まる傾向が強まっている。それだけに、例え介護保険部会などで制度改正の方向性が示されたとしても、その通りに制度が変わるかどうかは未知数だ。しかも、ここ数回の介護保険部会の報告書では、明確な方向性を示さない両論併記の結論が散見される。

こうした状況を思えば、介護の2割負担の対象者拡大についても、介護保険部会では明確な方向付けはなされないのではないか。両論併記となった介護保険部会の報告書を参照しながら、最終的には政治決着となる可能性が高い。

政治決着である以上、世論がその方向を左右することも大いにあり得る。それだけにこのテーマについては、ケアマネをはじめとした介護現場の関係者らが現場の声を集め、問題提起する余地も大いに残されている。

結城 康博(ゆうき・やすひろ)
1969年、北海道生まれ。淑徳大学社会福祉学部卒、法政大学大学院修了(経済学修士、政治学博士)。介護職やケアマネジャー、地域包括支援センター職員として介護系の仕事に10年間従事。現在、淑徳大学教授(社会保障論、社会福祉学)。社会福祉士や介護福祉士、ケアマネジャーの資格も持つ。著書に岩波ブックレット『介護職がいなくなる』など、その他著書多数がある。

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