CMO特別インタビュー 介護・医療業界の“旬な人”をピックアップ CMO特別インタビュー 介護・医療業界の“旬な人”をピックアップ

新春スペシャル対談(3)イノベーター2人を迎えて10年後、ケアマネの仕事はどうなる?Vol.12 岡本茂雄/株式会社シーディーアイ 代表取締役社長 × 鹿野佑介/株式会社ウェルモ 代表取締役CEO

2019/01/25 配信

前回のインタビューはこちら→「新春スペシャル対談(1)ついに商品化! “ケアプラン×AI元年”を振り返る」「新春スペシャル対談(2)“ケアマネ不要論”は杞憂、「ドラえもん」は夢物語

―このままAIが進化していったとして、10年後、ケアマネジャーの仕事はどう変化しているかと思いますか。希望も含め、未来予想図についてお聞かせください。

岡本:われわれが次に目指していることの一つが、正確な診断です。軽度認知障害(MCI)の症状などは、他人がそばにいる間に隠れることがあります。センシング技術やAIによる画像処理・解析を活用すれば、より精緻なデータが取れるので、例えば室内にセンサーを置くことで、細かな変化も把握することができる。それをAIが解析すれば、アセスメントの精度を高めるだけでなく、ケアマネの負担軽減にもつながります。これは10年も待たずに実現できると思います。

ケアマネはその分、利用者の意欲や思いに寄り添うことに力を入れてほしい。意欲って、すごく重要なんです。自立して元気になろうと思っている人は、やっぱり元気になる。でも、「もういいよ」と言って諦めてしまうと、治るものも治りません。そこをどう高めていけるか、行動経済学や行動心理学みたいなものをケアマネが学んで、そっちのプロになっていくんだろうと思います。

自立支援を進めるには、その方の気持ちを高める介入が必要ですが、訪問リハビリの時間は非常に短い。リハビリのスタッフが家に来ている時だけ手すりを使っても、意味はありません。トイレに行く機会は1日に6、7回はあるわけです。訪問時以外も手すりを使うように、やる気を引き出してあげる。それも、ケアマネの大切な仕事の一つだと思います。

今、ケアプランの中に「ケアマネの介入」については書かれていません。でも、ケアマネの“タイミング”を捉えた関わりはとても重要です。これらがケアプランに入るべきだと思いますし、10年後、ケアマネの仕事はそこまで進んでいると信じています。

―鹿野社長はいかがでしょう。

鹿野:考え方が近くてびっくりしています。うちは、児童発達支援の事業所も運営していますが、障害領域で特に大切なのが自己肯定感です。それがあると、つらいことも乗り越えられる。本人が自分に対してどう思っているのか。それをどのように育て、外部からどうサポートするのか。それがすごく大事なんです。

ケアマネの皆さんは、「いかに介護サービスを活用し、家族をどう巻き込むか」を考える“指揮者”なんですね。タクトを振る人間がぶれると、いい音楽を奏でられない。では、ケアマネさんがそれを意識されているかと言うと、今は、給付管理の方に目が向きがちという声も伺います。

一番大事なのは、人間にしかできない仕事をすること。人を巻き込む、対人援助、傾聴…。そういったところにフォーカスするのが専門性です。きちんとヒアリングをして、サービスにつなげる。そこに時間を割いて、専門性をさらに高める。ここだと思う。ケアマネさんは10年後、「人間にしかできない、心の仕事」のプロフェッショナル、そんなふうになっていくでしょう。

■法律、専門性、利用者貢献、3分野が融合?

―ケアプランの作成を支援するAIはどうなっているのでしょうか。

鹿野:うちの「ケアプランアシスタント」(※編注 ウェルモが開発するケアプラン作成支援のAIの心臓部)は、基礎資格による経験と知識の差を小さくしましょうという「知識支援」をやっています。これを利用者目線で言えば、何らかの改善が必要な方に、「もう少しこうした方がいいのではないか」という示唆を与える支援。つまり、専門性と利用者に対する貢献の部分です。将来、ここに法律のチェック機能が入ってくると思います。

法律を学習したAIが、「これは条例違反に当たる」など、細かなミスを指摘してくれる。法律、専門性、利用者に対する貢献、この3つが融合して、ほとんど分からないことがない状態になる。ケアマネはAIを使いこなしながら、ご本人のやる気を高め、サービスをうまく活用する仕事に専念できると思います。

岡本:繰り返しになりますが、私は、ケアプランの作成を支援するというよりは、ケアマネジメントの業務全体の質を高め、効率化したい。だから、アセスメントの項目も見直していきたいし、お客さんにどうサービスを提供するかという「業務革新」も併せて進めたいと考えています。

介護保険制度の創設から18年が経ちましたが、法律は1度つくってしまうと、否定せずに上乗せする“パッチワーク”になりがちです。この際、2021年度の次の改正で、介護保険を“さら地”に戻して、全く新しいシステムに変えてはどうでしょうか。少しずつ変えると効率が悪い。技術革新がここまで進んだのだから、ケアマネジメントの領域も変えてしまいましょうと。「ケアマネジメントの再構築」を提案したいですね。

■原資が無い…IT投資の議論を“最高速度”で

―今後、AIを使うケアマネをいかに増やすかが課題の一つになると思います。普及に向けた“壁”があるとすれば、それは何ですか。そして、それをどのように乗り越えますか。

鹿野:居宅介護支援の報酬が少なすぎて、ITへの投資ができないという声をよく耳にします。赤字の事業所が多い中、現状では、ITへの投資はほぼ不可能の状態にあると言っていい。最大の理由は、単純に原資が無いから、これに尽きます。「赤字でもいいから導入しよう」という熱意のある方もいますが、ごくわずかです。

投資会社も、介護業界には投資したくないと言われることがある。介護って、国のお金が回ってこないので、新しい製品ができても買ってもらえない。だから、投資会社自体が投資にブレーキをかけてしまうんです。そうなると技術革新も起こらず、硬直化し続け、社会保障費は増大の一途をたどる―。まさに負のループですよね。

今すぐ介護保険給付の在り方を見直して、事業所のIT投資をどうするのかという議論を、“最高速度”でやるべきです。これをやらない限り、日本に未来はないと思います。このまま労働集約型を続けても、離職率は下がらないでしょう。

岡本:ITに投資するための原資について、もっと真正面から議論すべきだというのは全く同意です。1990年代は、コンピューターを導入するよりも、誰かアルバイトを雇って書類を作成してもらった方が経費が安く済んだ。今は全く逆なのに、まだそう思っている人がいる。ITを導入すれば、圧倒的に業務効率が上がるはずです。でも実態は、いまだに紙のファクスが使われている。

医療の業界って、毎年、いや毎日、良い治療法とは何かを考え続けている。もちろん、全員ではありませんが、ケアマネ側も、「今日のケアプランよりも明日のケアプラン」という姿勢で取り組むプロフェッショナルが増えれば、介護分野のAIの開発が進み、原資の議論にもつながるのではないかと思います。

■15歳から成人へ、“専門職”に進化―岡本社長

―2019年は、どのような年にしたいですか。最後に、新年の抱負をお願いします。

岡本:昨年10月に有償版のサービスの提供を開始し、今、さまざまな評価を受けているところなので、まずは、その部分の改良・改善を進めていきます。うちのAIは今、人間で言えば15歳ぐらい。まだアルバイトとしてお金がもらえる段階です。2019年はぜひ、成人したプロになりたい。“専門職”としてのAIに進化したいと考えています。

それともう一点は、個別のサービスの将来予測について、さらに高い次元のものを出していきたい。今後、在宅から施設まで一貫した、地域包括ケアシステムの“道具”へと進化させていきます。

■有償化リリース目指す、飛躍の一年に―鹿野社長

―鹿野社長はいかがですか。

鹿野:現在、福岡市と大規模な実証実験をやっていますが、2019年にそれが終わり、年末ごろまでに製品のリリースを予定しています。うちは岡本さんよりもワンステップ遅れている状況ですが、ようやく有償化が実現します。まさに今が正念場です。その意味で、非常に大事な年になります。2019年の後半までの間に、どこまでレベルを上げられるのか。今、研究開発メンバー含め、ウェルモ全員で気合を入れてやっています。本当に、飛躍の年というか、夜明けのような感じですね。

AIの研究開発をスタートしてから4年目を迎えますが、まだ表に出していないものが幾つかあります。実は、ケアプランはその中の一部に過ぎません。アセスメントからケアプランの作成、現在東京電力パワーグリッドさんと共同開発している電力センサーなどのIoT(※編注 物のインターネット化。身の回りのあらゆる物がインターネットとつながる仕組み)によるモニタリングまで、一気通貫で支援することが、最終的な目標です。2019年は、それを製品化まで仕上げていく、極めて重要な年になると思います。

対談は当社社長の別宮圭一(左)の司会で行われた
対談は当社社長の別宮圭一(左)の司会で行われた

他のインタビューを読む

ケアマネジメント・オンライン おすすめ情報

  • 自立に役立ち、介助する方の使いやすい福祉用具をご提供
  • ケアマネに必要な高齢者への「食事」の支援方法
  • 食事でお悩みのご利用者に。少量でしっかり栄養補給
  • 種類、選び方はもちろん、「こんな時どうする?」実例集も掲載
  • 「CMOメディカル」のメッセージを読むだけでポイントが貯まる!
  • 介護報酬・診療報酬の改定を読み解くためのヒントをお届け

介護関連商品・サービスのご案内

ログインしてください

広告掲載・マーケティング支援に関するお問い合わせはこちら >>

お知らせ