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目線はフラットに、多職種で介護の夢をVol.15 高瀬比左子/NPO法人「未来をつくるkaigoカフェ」代表

2019/06/24 配信

月に一度、コーヒーやスイーツを楽しみながら、リラックスして介護について語り合う「未来をつくるkaigoカフェ」。毎回100人以上が集うこの人気イベントは、現役のケアマネジャーでもある高瀬比左子さんが2012年夏に立ち上げた。3年前に事業を法人化し、自ら代表も務めるが、ケアマネの資格を取った当初は、「将来のキャリアのことで悩んでいた」という。政府主導による働き方改革が始まった令和元年。施設ケアマネとNPO法人代表という二つの肩書を持つ高瀬さんに、これからの働き方について聞いた。

高瀬比左子/NPO法人「未来をつくるkaigoカフェ」代表
カフェには毎回100人以上が集うという (高瀬さん提供)

―もうすぐカフェを始めてから丸7年になります。最近は全国を飛び回っていますが、これまでに何回ぐらいカフェを開いたんですか。

通常のカフェは月に一度ですが、3年前から、地域でカフェを開きたい方たちを支援する「ファシリテーター講座」を開いているので、それも合わせると200回以上はやっていると思います。

特に地方にお住いの方で、カフェには参加できないけれど、地域でコミュニティーのような場所をつくりたいという方のために、こうした講座が必要だと考えたんです。昨年には、クラウドファンディングで運営費を募り、テキストも作りました。今では全国10都市にまで広がり、修了者は600人ぐらいになります。カフェをやっている方もいますし、講座で得た気づきを生かして、地域の“つなぎ役”になっている方もいます。

―現在、介護施設のケアマネとして働いていますが、NPO法人の活動で多忙な中、どのように時間をやりくりしているのですか。

非常勤でケアマネとして働きながら、カフェをやっています。カフェという媒体を活用して、さらに活動の幅を広げていきたいと考えているので、私にはこの働き方が合っていると思っています。

介護の仕事から完全に離れてしまうと、“現場感覚”みたいなものが薄れてしまって、現場で何が起こっていて、どこに課題があるのかが分からなくなると思うんですよね。カフェだけになってしまうと、いろんな意味で見えなくなるものも出てくるので、居場所がいくつかあった方が、精神的にも良いと考えています。

■理想と現実にギャップ…ケアマネに夢描けず

―カフェを立ち上げたのは、将来のキャリアについて悩んだことがきっかけと伺いました。介護の現場で働いて3年後に介護福祉士、5年後にケアマネと順調にステップアップしたように見えますが…。

ケアマネになってから、理想と現実とのギャップに悩んだというか、夢を描けなくなっていったんです。ケアマネって、専門職として職人のような道を選ぶか、法人の中で管理職になるかの二者択一というイメージがありますが、当時の私には、どちらもピンと来ませんでした。

それに、職場の先輩は全然生き生きとしていない。居宅は居宅で、施設以上に忙しいという話も聞いていましたし、楽しそうに働くケアマネの姿が想像できなくなり、不安になっていったんです。そんな中で、専門職か管理職のどちらかを選べと言われても、自分の将来をイメージできないですよね。

身近な先輩は、日々の業務に追われて余裕がなく、職場全体の空気もピリピリしていて、対話が成り立たない状況でしたし、当時、マネジメントのような仕事もやっていたんですが、その分野の勉強もしていないので、他職種とのコミュニケーションにもすごく悩みました。多くの方が現場でぶつかる壁に、私も当事者として直面したんです。

―それでも思いとどまって、カフェを立ち上げたのはなぜですか。

介護業界そのものに、愛着があったんですよね。訪問介護をやっていた頃の利用者さんとの出会いが、自分自身を成長させてくれたということもあります。それに一緒に働いていた先輩たちも、介護の仕事が嫌いなんじゃなくて、忙しい毎日の中で、感情がネガティブになっていったはず。だから、価値観の違う人同士が対話をして、同じ方向に歩んでいくための環境を整える必要があると思ったんです。

■多職種との対話で自分を客観視

―カフェには、医療職やご家族の方も参加されるそうですが、さまざまな立場の方と話をすることで、仕事への考え方って変わるものなんですか。

人って経験を積んでくると、自分の考えだけが正しいと思い込みがちですよね。でも、いろんな方の意見を聞くと、「それだけが正解じゃなかったんだ」と気づき、フラットな目線で学べる。カフェに参加する多職種の方の話を聞き、現場に戻ってその感覚を思い出して、仕事に取り入れてもらえればうれしいです。

私は一つの仕事にのめり込み過ぎると、あまり良い影響は出ないと考えています。執着心というか、自分のプライドを守るために意固地になったり、本当は利用者さんのためのケアプランなのに、自分の信念を曲げないための“道具”になってしまったり、おかしな方向に行きやすくなると思うんですよね。ベテランになればなるほど、その傾向は強くなるのではないでしょうか。

だから、自分を客観視できる場というか、仕事以外で夢中になれることがあれば、余裕を持って仕事に取り組めると思います。常勤の場合、そういう状況をつくるのが難しい方も多いかもしれませんが、どこかに工夫の余地はあるはず。国の方も、残業を減らすための後押しをしているので、そのための環境は整いつつあると思います。

―カフェの体験を通して、高瀬さん自身の考え方に変化はありましたか。

自分自身の言動を振り返って、相手との関係性を修復するまでのサイクルが速くなりましたね。また白黒はっきりさせるだけじゃなくて、“グレー”の部分を大切にすることも学びました。

「相手の立場を深く考えず、自分の意見ばかり言っちゃったな」とか、「その時の状況を理解しようとしないで、こっちで勝手に判断しちゃったな」とか、後で振り返って反省することもあります。相手との向き合い方を変えることで、お互いに後腐れのない関係を築けると思いますし、それが働きやすい職場づくりにもつながるのではないでしょうか。

■「名刺プロジェクト」で、自分の強みをPR

高瀬比左子/NPO法人「未来をつくるkaigoカフェ」代表

―2年前から、「介護職の名刺作り応援プロジェクト」を進めていますね。

介護業界では、長年キャリアを積んでいても、名刺を持っていない方が多いですよね。それって、経営者の方が、一般社会へ目を向けていないからじゃないかと思ったんです。「社会で発信する機会がない介護職に、名刺を持たせる意味がない」という価値観の表れじゃないかって。

お医者さんや看護師さんの場合、子供の頃から誰でも医療機関を受診するので、世間の人に知ってもらいやすいですが、介護職の場合、家族に介護を必要とする人がいない限り接点がない人の方が多いですよね。

その事業所や施設の“顔”なんだから、どんどんPRしていかないと、その職場の存在にすら気づいてもらえません。介護と医療の連携がさらに進んでいくことを考えると、特に中小規模の事業者の方は、そういった視点を持たざるを得なくなっていくと思います。

このプロジェクトでは、名刺を作る前段階として、自分の強みの“棚卸し”をしてもらうためのワークショップも行っています。「自分はこういう強みを持っていて、こういうことを名刺に入れたい」ということが分かれば、名刺は個人でも作れます。

介護って、ただでさえマイナスのイメージが強いのに、生き生きと働いている人が増えなければ、人材不足は解消されません。最近、ケアマネ試験の受験者が減っているのも、ケアマネの未来に希望を見出せない方が増えているからではないでしょうか。自分なりの強みとか、個性を見出した上で、社会に発信していけるような人を増やす必要がありますし、その後押しができればいいなと思っています。

■ため込まず、事業所の外に目を向けて!

―高瀬さんと同じように悩んでいるケアマネに対して、何かメッセージはありますか。

内にため込んでしまうと燃え尽きてしまうので、事業所や施設の外へ目を向ける必要があると思います。以前の私のように、「介護の仕事は好きだけど…」という方って、結構多いと思うんですよね。近くにカフェのような場所がない場合は、SNSで情報発信するという方法もあります。仕事にのめり込み過ぎず、視点を変える意識が大切です。

高瀬比左子(たかせ・ひさこ)
大学卒業後、訪問介護事業所の立ち上げや現場での業務経験の中で、自らの対話力不足や現場での対話の必要性を感じ、2012年、介護職やケアに関わる者同士が立場や役職に関係なく、フラットに対話できる場として「未来をつくるkaigoカフェ」をスタート。現在、通常のカフェ開催のほか、小中高への出張カフェ、一般企業や専門学校などでのキャリアアップ勉強会や講演、カフェ型の対話の場をつくる人材を育成する「カフェファシリテーター講座」の開催を通じた地域でのカフェ設立支援も行う。著書に「介護を変える 未来をつくる ~カフェを通じて見つめるこれからの私たちの姿~」(日本医療企画)がある。介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員の資格を持つ。

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