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仕事は無理しない、頑張らないが大切Vol.18 千福幸子/介護福祉士、ケアマネジャー【後編】

2019/11/21 配信

相手の心に寄り添うこと―。千福さんは、ヘルパーとしての信条をそう話すが、背景には、子供の頃の厳しい体験があった。「人生100年時代」が叫ばれる中、千福さんが掲げている目標とは何か。インタビュー後編では、仕事で悩んでいるケアマネジャーへのアドバイスも聞いた。

前回のインタビューはこちら→「更新研修も修了、85歳の現役ヘルパー

85歳の誕生日に、事業所の仲間と(プラスワンケアサポート提供)
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■とにかく聞くこと、答えは変えない

―ヘルパーとして、一番大切にされていることは何ですか。

それはもう、心に寄り添うことです。それに尽きると思いますよ。「ごちそう食べたい」とか思ってはらしませんよ、年寄りは。とにかく、昔の話がしたい。誰かに聞いてほしい。家族も聞いてくれない世の中ですやん、今。だから、何べん同じこと言われても、ひたすら聞く。さっき言うてはったことをまた言ってはるけど、その人は一生懸命言うてはるやんか。だから、「はいはい、そうですね」と言うてます。

―聞くことですか。

ただ、ひたすら聞く。「ああ、それ、こうやったことですな。そりゃあかんな」と言うてね。そして声掛けもね、やっぱりしますわな。その言わはったことに対して。自分の体験したこととか、「その時、こんなんやったん違いますか」と言うと、相手も「せや、それやそれ」と返してくる。

そして、同じことを何べんも言いはるけど、必ず同じ答えをする。違う答えをしない。絶対にそれはやったらあかん。「この前こう言うてたん。違うやんか」となりますから。そういうことには、ものすごく敏感な人おるからね。だから、ずっと同じ答えにする。

私ね、今この人が何してほしいかなというのが、大体わかりますねん。利用者さんの中には、「こんなん嫌やねんけど、言うたら悪いかな」という人もいる。その時、「ああ、この人、今日はそない食べたくないけど、ちょっと喋りたいんや。これだけは聞いてほしいと思ってはんねんな」とわかったら、それに照準を合わせてね、「お昼あれだけ残してはるいうことは、夜はこうしてほしいと思ってはるな」と、相手の気持ちをくんで作るんです。

■幼少期の体験がヘルパーに生きる

―なぜ、相手の気持ちがわかるんですか。

「両親って誰やっけ」いうような環境で、ずっと過ごしてましたからね。あっちこっちの家でお世話になりました。長屋なら、他の子供1人ぐらい食べててもわからん。でも、「ここで手伝わんと、ご飯がよばれられへんな」いうのが、子供心にわかるわけですよ。そうしたら、小さい子供のおもりしたり、洗濯物の手伝いをしたりして、そういうふうにして生き延びてきたわけです。

昭和16年(1941年)に大東亜戦争(太平洋戦争)が始まった。その時、国民小学校の入学式やったけど、両親が来たとか、ランドセル背負ってとか、そういう記憶は一切ないです。ランドセルなんか背負ったことない。

―ご両親はいらっしゃったんですか。

いてたけど、ばらばらですねん。別れたり引っ付いたりしてたんでしょう。で、ちょっと引っ付いてる間に私を連れ戻しにきて、ちょっといてて、またすぐにいなくなってしまう。「これ、どこの家かな」というようなところに預けられたのが、昭和16年でした。

―子供の頃の体験が、ヘルパーの仕事にも生きているんですね。

そう、いろんな体験、いろんな家の。100軒いてたら、100軒の家庭があるもんやから、そこの夫婦の生き方、子供たちの生き方を見てますやん。

その道一筋で行って、それで終われる人もあるけれども、いろんな経験をしてね、そのうちに、「自分はこれしよっか」というのを見つけた人の方がええんやないかと思うんです。経験したことは、絶対に役に立ちますやん、生きていく上で。

■「こそ」は自分ではなく、相手に付ける

―昨今、「人生100年時代」と言われるようになりましたが、お仕事を続ける上で、何か目標のようなものはありますか。

とにかく、動かれんようになるまでやらしてもらいたいと思ってるんです。80済んだらね、ほんなもん、一年先のことなんかとてもわかりませんよ。足が立たんようになったら、(訪問に)行かれんしね。動ける間は、行かしてもらいたいと思ってますけど、そんな大それたことは考えてないんです。きょう一日できた。明日もできるかな。これがいつまで続くかな。それは自分にもわからないし、「きょう一日喜んでもらえたから、これで良かった」いうようなもんです。先のことなんかね、そんなん考えられやしませんねん。

―最後に、仕事で悩んでいるケアマネに一言お願いします。

とにかく、頑張らない。ひたすら、やる。頑張ったらね、無理が出るんです。いつかね、破裂する時が来ます。頑張るいうのはね、嫌々していることが多いんですよ。楽しみながらやるとね、下手でも遅くても、よろしいやん。それを重ねていった方がね、ええ結果につながると思うんですよ。

それから、腹が立っても、自分に「こそ」を付けない。相手に付ける。自分に「こそ」を付けたら、あんたのことを許してないんやないのという気になるでしょ。そうじゃなくて、相手に「こそ」を付ける。自分の方に「こそこそ」しない。

―自分中心ではなく、相手に気持ちを向けると。

相手がいるから「こそ」、私みたいな新米でも受け止めてもらえてるんや、その気持ちを持つ。向こうが年上やし、「このケアマネさん、新米なんや」って思いはるかもわからんけど、そう思われても、私みたいなもんでも、あなただから「こそ」、(家に)入らしていただいているというね。

相手に「こそ」を付けてたら、その気持ちがだんだん向こうに移っていく。そしたら向こうもね、「あんたやから『こそ』、来てくれてんねんな」という気持ちになってくれはる。

若い人はね、聞かせていただいたらええんですよ。「そんなん初めて聞きましたわ」「もっと教えてください」という気持ちになって、相手に教えてもろたらよろしい。この歳になっても、知らんことはなんぼでもありますよ。だって、人生が違うんやもん。違う経験してはる相手でしょ。だから、私の知らないことを教えてくれはるんです。やっぱり、年かさの人の話はどこか、身になることがあると思うんです。だから聞かないとだめですよ。聞き出すいうんじゃなくて、教わるという気持ちを持ってください。

取材・構成/敦賀陽平

千福幸子(せんぷく・ゆきこ)
1934年、大阪市淀川区生まれ。73歳の時、夫の介護をきっかけに旧ヘルパー2級を取得。株式会社プラスワンケアサポート(本社・兵庫県川西市)の豊中支店(訪問介護事業部)で、ヘルパーとして働き始める。その後、76歳で介護福祉士、80歳でケアマネジャーの試験にいずれも一発合格を果たした。現在も週に数回、ヘルパーとして豊中市内の利用者宅を訪問している。

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