知っておきたい高齢者の食事講座

vol.9 胃ろうから経口摂取へ、退院困難者を救え!

咀嚼と嚥下反射のメカニズムに新事実

もう一つ、ぜひ知っていただきたい最新のトレンドがあります。実は、ここ数年の研究で、食べ物を噛んで飲み込みやすい大きさにしている動作と、舌の運動で食べ物を口から咽頭へ送り出す動作が同時に行われていることが分かってきました。それまで、食べ物が咀嚼中に喉の奥へと入り込むのは、口腔内の機能によるものではなく、喉で食べ物が止まらず、単に流れ落ちていると思われていたのです。

しかし、実際は、咀嚼中の食べ物が唾液と混ざっている間に喉への移動が始まり、食べ物の塊が咽頭に一定量たまった時に嚥下反射が起こっていたのです。こうしたメカニズムを、鶴見大歯学部生理学講座の塩澤光一准教授が発見しました。

病院では、食事の形態をよりやわらかい物に変えた方が、「患者にとって安全」という認識が一般的です。しかし、咀嚼している最中の舌の運動によって、食べ物を咽頭へ送り込む機能があるのならば、ある程度、硬さや大きさを残した方が良いことになります。

咀嚼のコントロールができれば、嚥下のコントロールもできる。つまり、咀嚼の状態をつくる口の機能に、食事の形態を合わせる時代がやってきたのです。このメカニズムが判明したことで、義歯を外したり入れたりするタイミングも正確に言えるようになりました。非常に高度ですが、私たちは今、この点に着目した新たなリハビリにも取り組んでいます。

18年度の法改正に込められた国のメッセージとは?

日本老年歯科医学会と日本歯科医学会はこの春、「口腔機能低下症」に関する基本的な考え方を公表しました。摂食嚥下障害などの口腔機能障害の前段階として、「口腔機能低下症」という疾病の概念を新たに追加し、それを診断するための7つの要素を決めたのです。

口腔機能低下症の概念図

「口腔機能低下症」は7つの要素が複雑に絡み合い、比較的自立度が高い場合にも起こります。しかし、軽度の段階で外来を受診する人は少ない。利用者の小さな変化に気づいて、歯科の早期受診につなげることが大切です。

今年4月の介護報酬改定に伴い、ケアマネジャーは、ヘルパーから伝達された利用者の口腔に関する問題点や、自身がモニタリングなどで把握した利用者の状態について、主治医に必要な情報を提供することが義務付けられました。

ケアマネジャーは、利用者の日常生活の動作にもう少し目を光らせてほしい。例えば、食事の様子を観察するだけで、幾つかの機能を評価していることになります。最近、たまにむせるようになったとか、食べこぼしが増えてきたとか、ご飯を軟らかく炊くようになったとか、こうした小さな変化がスタート地点となります。それに気づくことが重要です。ぜひ、先ほどお伝えした7つの要素を意識し、実際の現場で活かしていただきたいと思います。

菅 武雄 先生

菅 武雄 先生

鶴見大学歯学部高齢者歯科学講座講師。歯学博士。介護支援専門員。
1990年、鶴見大学歯学部歯学科卒業。同年、鶴見大学歯学部補綴学第一講座臨床研修医。1996年、高齢者歯科学講座助手(移籍)。2010年より現職。
『在宅歯科医療まるごとガイド』(永末書店)、『ホームヘルパーのための口腔ケアハンドブック』(日本医療企画)など著書多数。

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