知っておきたい高齢者の食事講座

vol.10 高齢者の低栄養改善で、多職種連携の強化を

18年度の法改正に込められた国のメッセージとは?

前回のインタビューで、ケアマネジャーの皆さんに「高齢者の栄養状態にもっと意識を向けてほしい」とお伝えしました。病院に入院できる日数が短くなり、急性期の状態を少し脱したばかりの方が退院を余儀なくされ、栄養状態が改善できていない状態で在宅に戻ってきています。また、団塊の世代が全員75歳以上を迎える2025年に向け、一人暮らしの高齢者の数が増加の一途をたどっています。

今後、ケアマネジャーの皆さんが、介護現場で栄養の問題に直面する機会はさらに増えると思いますが、食事の量や体重の変化に気づかない方や、褥瘡ができてはじめて、栄養状態の悪化に気づく方が依然として多い現状があります。

今回の同時改定は、介護保険の要であるケアマネジャーの皆さんに、利用者の栄養状態の改善に取り組んでほしいという、国からのメッセージだと思います。その象徴とも言えるのが、「栄養スクリーニング加算」の新設です。

この加算ができたことで、ケアマネジャーは、介護職員から情報提供を受けた際、対応策を考えざるを得なくなりました。ご利用者の体重や食事の内容について、これまで以上に注意を払わなければならなくなった。「必ず何らかの栄養問題がある」という意識を持って、ご利用者に接していただきたいと思います。

栄養状態を評価する際は、体重の測定が非常に重要です。実は、体重を測らずに「なんとなく太った」「なんとなくやせた」と感覚的に捉えている人が多いのです。これでは食事制限をしても、体重の変化を実感できず、ご本人のモチベーションも上がらないでしょう。

デイサービスやデイケアの施設には、車椅子ごと載せられる体重計があります。また訪問入浴の際、つり上げ式の体重計で体重を測ってくれる事業所もあります。体重の“見える化”をした上で、これまで以上に多職種が連携して、栄養状態の改善に取り組むことが大切です。

今後、ケアマネジャーから管理栄養士に相談するケースも増えるでしょう。せっかく介護職員から受け取った情報を生かさず、低栄養の方を放ったらかしにするのでは意味がありません。ささいな相談でも構いませんので、ぜひ、地域の管理栄養士をフル活用してほしいと思います。

ケアマネからの質問

Q:咀嚼が弱まったあるご利用者が、きざみ食に変わった途端、食事の量と一緒に体重も減りました。きざみ食が合わないようです。食事中にむせることはなくなったのですが、どうすればよいでしょうか?

A:嚥下機能評価の習慣を身に付けて!
常食や一口大きざみを食べていた方の食事が、元の形がよく分からない形状に変わると、肉なのか魚なのかすら区別できず、見た目の悪さから食欲を失ってしまい、食事量が減ることがあります。嚥下の評価をしないで、「むせるからペースト状でいいや」と、安易に極きざみを選んでしまうと、食欲が低下してしまうのです。こうした場合は、多職種が連携して、ご利用者が食べにくい原因を調べる必要があります。それが歯の問題だけならば、軟らかくする程度に煮て、形を少し残してあげた方がよいでしょう。
食事の形態がその方にとって適切なのか、嚥下機能の評価をする習慣を身に付けてほしいと思います。最近は、医科と歯科の連携が進んでいるので、病院に入院中でも施設に入所中でも、嚥下機能の評価は可能です。必要以上にとろみをつけて、のりみたいになったおかゆを食べさせる施設もあります。嚥下機能の評価を多職種で共有して、たとえば、食事のポジショニングや食事介助の仕方などを考える。安易に食事形態を選んだ結果、その方の食べる楽しみを奪うようなことになってはいけません。

中村 育子 先生

中村 育子 先生

管理栄養士。医療法人社団福寿会福岡クリニック在宅部栄養課課長。1994年、女子栄養大学栄養学部卒業。2009年、女子栄養大学大学院栄養学研究科栄養学専攻修士課程入学。2011年、女子栄養大学大学院栄養学研究科栄養学専攻修士課程卒業。2012年、静岡県立大学大学院薬食生命科学総合学府博士後期課程食品栄養科学専攻入学。2018年、静岡県立大学大学院薬食生命科学総合学府博士後期課程食品栄養科学専攻終了(食品栄養科学博士取得)。1997年から福岡クリニック在宅部勤務。2014年6月から、日本在宅栄養管理学会の副理事長を務めている。

キユーピー「やさしい献立」をご自宅までお届け
キユーピー「やさしい献立」 商品特設サイトはこちら
パンフレットダウンロード
かんたんアレンジ!「やさしい献立」に一手間加えたレシピご紹介します。
アンケートフォーム

このページをご覧になった感想をご記入ください。また今後取り上げてほしいテーマがありましたらご記入ください。(任意)