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ケアマネジメントスキルアップ講座 VOL.21
「待つ」ためにこそ必要な地域との連携(後編)

「待つ」ためにこそ必要な地域との連携

2018年4月の介護保険法改正を踏まえ、現場のケアマネジャーや居宅介護支援事業所が対応すべきポイントを取り上げた今回の「ケアマネジメントスキルアップ講座」。 日本ケアマネジメント学会副理事長で株式会社フジケア社長の白木裕子先生にお話を伺い、前編では居宅介護支援事業所の管理者も兼ねることになった主任ケアマネに必要となるスキルについて紹介させていただきました。後編では、利用者が納得するプランを作るためのスキルや、地域と連携する上で重要なスキルなどを紹介いたします。

前編はこちら「ケアマネに求められる『3つの連携力』」

「押し付ける」のではなく「待つ」姿勢が重要に

日々のケアマネジャーの活動を見ていてちょっと気になることがあります。プランを組む時、家族や利用者の話を十分に聞かず、自分が考えるサービスを利用者に押し付ける例が、かなり見受けられることです。こうした押し付けは、利用者を理解する力も、適切なアセスメントを行う力も不十分であることの現れと言わざるを得ません。つまり、ケアマネとしての専門性に欠けているわけです。

ちなみに、押し付けをするケアマネの中にこのように指摘すると、「いえいえ、私はちゃんと相手に共感し、傾聴しています」と反論する人もいます。実際に現場に行って様子を見ると、確かに全く聞いていないわけではない。利用者が話している時には「ああ、そうですね」「それは、お辛いですねえ」と、うまく相槌を打っていたりします。でも、残念ながらそれだけ。いざプランを提案するとなると、家族や利用者の思いを切って捨てるような提案をしているのです。

「待つ」ためにこそ必要な地域との連携

例えば、「仕事と母の介護の両立はつらいけど、何とか頑張ってここまで続けてきた。でも、自分の体力を思うと、これから先、ずっと続けられるかどうかわからない」と切々と訴える人に対し、さんざん相槌を打ち、共感してみせながら、プランの提案となると、「もうお母さんは施設に入所してもらいましょう」と、その場で即座に提案し、プランに落とし込もうとするケアマネがいたりします。

相談している人は仕事と介護を両立させ、なんとか母親に自宅にいてほしいと考えています。ただ、自分や家族の将来を思うと不安の方が大きい、と訴えているわけです。このまま頑張るべきか、施設入所を決断すべきなのか、それとももっと別の道があり得るのか―。そんな風に思い悩み、揺れ動いているのです。そんな人に対し、ほとんど即座に入所を提案しては、相談者は「一体、このケアマネは話を聞いていたのか。いや、そもそも話を聞く気があるのか」と不審に思い、決して納得してくれないでしょう。

納得してもらうには、決定を押し付けるのではなく、家族の揺れる思いに寄り添いながら、うまく決断を促す必要があります。つまり、結論に至るまでのプロセスを重視し、丁寧に対応するのです。当然、時間がかかりますが、ケアマネはそこで待たなければなりません。

そう指摘すると「地域で待っている間に何か起こったらどうするのか。そんなリスクは抱えたくない」というケアマネもいます。確かに、ひどい虐待を受けている人など、このままの生活を続けるのはリスクが高すぎる人については、一刻も早い決断が必要でしょう。

ただし、在宅の現場では、そこまで早急な対応が必要はない事例も多く見受けられます。例えば、認知症の人の徘徊がひどくなったから、在宅で介護し続けるのが不安になったといった事例は、よく耳にするでしょう。こうした例であれば、見守りサービスとつなげることで在宅生活を続けられる場合が少なくありません。そうした地域の資源と利用者をつなぐ提案ができれば、利用者の在宅生活の限界点をぐっと引き上げることができます。結果として、家族や利用者の揺れる思いに寄り添いながら、十分に納得した決断を下してもらうための時間を作ることができるのです。

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地域の資源を確保するツールとしての「地域ケア会議」

「待つ」ためにこそ必要な地域との連携

そしてケアマネが地域の資源を確保する上で有効なツールとなるのが「地域ケア会議」なのです。

残念なことにケアマネさんの中には「地域ケア会議」への参加を嫌がる人が結構います。嫌がるほどではないにしても、地域の多職種との連携を強化しようとせず、既に事業所が持っているネットワークだけで何とかしようとしてしまう傾向が強いように思います。せっかく「地域ケア会議」という場が用意されているのに、これではあまりにもったいないですね。

特に主任ケアマネであれば、より有効な連携を実現するためにも、地域全体を俯瞰する「鳥の目」の視座の高さで会議に参加し、時には会議を主導してほしいですね。

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白木 裕子 氏のご紹介
白木 裕子 株式会社フジケア社長。介護保険開始当初からケアマネジャーとして活躍。2006年、株式会社フジケアに副社長兼事業部長として入社し、実質的な責任者として居宅サービスから有料老人ホームの運営まで様々な高齢者介護事業を手がけてきた。また、北九州市近隣のケアマネジャーの連絡会「ケアマネット21」会長や一般社団法人日本ケアマネジメント学会副理事長として、後進のケアマネジャー育成にも注力している。著書に『ケアマネジャー実践マニュアル(ケアマネジャー@ワーク)』など。

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