ケアマネのための身守り講座 VOL.3
利用者や家族からのセクハラへの対応
日本ケアマネジメント学会副理事長で、ケアマネとしても20年近くのキャリアを持つ白木裕子先生が、ハラスメントの発生を防ぎ、いざという時に身を守るための術を伝授する「ケアマネのための身守り講座」。第3回のテーマは「利用者や家族からのセクシュアルハラスメントへの対応」です。白木先生は、ご自身の経験なども踏まえつつ、「ハラスメントは許さないという姿勢で、毅然と対応することが大切」と指摘します。
「身の危険を感じる」セクハラに遭遇…
実は、私自身も利用者からのセクハラに遭ったことがあります。介護保険が誕生したばかりのころで、セクハラという言葉も、あまり普及していない時代でした。
当初、その利用者はヘルパーにセクハラを繰り返していました。体を触ったり、介護を受ける部屋とは別の部屋に連れ込もうとしたり…。そこでヘルパーは2人体制で対応するようにしたのです。その結果、ヘルパーへのセクハラはなくなりました。
ところが、今度はその“矛先”が私に向かってきました。何かと理由をつけて訪問を求める上、私が座ると、隣にくっついて座ろうとするのです。部屋の鍵をかけようとしたことや、部屋中のカーテンを閉めようとしたこともありました。
さすがに身の危険を感じたので、事業所に相談し、担当を交代してもらうことにしました。
利用者に明確に伝えたメッセージ
ただ、困ったことに、後任のケアマネも女性でした。そこで私は、利用者に交代する旨を連絡した際、次のことも、はっきりと伝えました。
- 必要もなくケアマネを呼び出さないこと
- 本人が不快に感じるような近い距離まで接近しないこと
- 不必要に体に触れないこと
以上のことを守るようお願いした上で、守れない場合は、キーパーソンの息子さんに相談し、対応を検討することも伝えました。その結果、後任のケアマネは、セクハラを受けることはありませんでした。
セクハラへの対応、鉄則4カ条
思い出したくもない昔話をあえてしたのは、この時の対応に、セクハラへの対応のポイントがまとまっていると思ったからです。
ポイントは次の通りです。
(1)何がNGか、はっきりと伝える
(2)キーパーソンを巻き込む
(3)組織で対応する
(4)ハラスメントは許さないという基本姿勢で、毅然と対応する
このうち(1)については、団塊の世代が増える今後、特に重要になってくるでしょう。(3)は基本中の基本といえます。ケアマネが不快と思う事があった場合は、それが判明した段階で事業所が対応に乗り出してください。
ケアマネがセクハラを受ける前にヘルパーが被害に遭うこともあります。その場合も、居宅介護支援事業所と訪問介護事業所が連携し、対応を検討しましょう。もちろん、その利用者を担当するケアマネと情報を共有することも忘れずに。
事前の対策としては、セクハラなどがあった場合、ケアマネの訪問やヘルパーのサービス提供をやめる場合があることを重要事項説明書に書き、利用者に伝えておくのも有効です。
ケアマネごとの違いも見極めて!
また管理者は、同じハラスメントを受けても、さらりと流せる人もいれば、「もう2度と出向きたくない」と思ってしまう人もいるということを認識しておいて下さい。その上で「我慢できない」と感じるケアマネがいれば、即応しましょう。間違ってもあってはならないのは「そのくらいなら、他の人は我慢しているよ?とりあえず、こらえてください」と、問題解決を先送りすること。そんな対応をされたケアマネは、事業所も管理者も信じられなくなるでしょう。それ以外のケアマネも、事業所や管理者に不信感を抱くはずです。
- 白木 裕子 氏のご紹介
- 株式会社フジケア社長。介護保険開始当初からケアマネジャーとして活躍。2006年、株式会社フジケアに副社長兼事業部長として入社し、実質的な責任者として居宅サービスから有料老人ホームの運営まで様々な高齢者介護事業を手がけてきた。また、北九州市近隣のケアマネジャーの連絡会「ケアマネット21」会長や一般社団法人日本ケアマネジメント学会副理事長として、後進のケアマネジャー育成にも注力している。著書に『ケアマネジャー実践マニュアル(ケアマネジャー@ワーク)』など。
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