白木裕子の「実践! 仕事力の磨き方」 VOL.09
在宅でリハビリが必要な人への対応のポイント(前編)
日本ケアマネジメント学会副理事長の白木裕子先生が、介護保険制度や社会情勢に対応するためのポイントや心構えを、わかりやすく伝授する「実践! 仕事力の磨き方」。今回はリハビリが必要な人への対応についてです。
在宅のリハビリで、常に意識しなければならないのは「漫然とした取り組み」にならないこと。そのために心掛けるべきことを紹介します。なお、在宅でのリハビリを必要とするのは、主に脳出血の後遺症や長期入院の影響などで介護が必要になった高齢者です。今回は、そうした人への対応を想定した内容になっています。
訪問リハはデイケアなどと組み合わせると効果的
自宅でのリハビリというと、訪問リハビリをイメージする人も多いでしょう。ただし、このサービスだけをケアプランに位置付けるのはちょっと考えにくいですし、効果も期待できません。例えば、訪問リハビリとは別にデイケアに通う日を設けると、より効果的でしょう。
要介護4や5の人では、体の拘縮(こうしゅく)を防ぐために訪問リハビリを使うこともありますが、その場合でも訪問看護と組み合わせるのが有効です。
目標と「スモール・ステップ」の設定
特に大切なのは、目標の設定です。
まず意識しなければならないのは、到達可能な目標を設定すること。当たり前のことのように思えますが、これが案外できていない。例えば、「入院前にできていたことを、また、できるようになりたい」と希望する人は多いでしょう。しかし、脳出血や長期入院の影響が思ったより大きければ、入院前にできていたことも、「無理な目標」になることもあります。
設定された目標が到達可能かどうかは、医師やセラピスト、訪問看護師、そして家族の意見をしっかり聞いた上で判断しましょう。
目標を立てた後は、達成するまでの「スモール・ステップ」を設定する必要があります。例えば「1年後、1人でトイレに行く」という目標に対しては、「ベッドから降りて立つ」「手すりを伝ってポータブルトイレまで移動する」「ポータブルトイレに座る」といったような、ステップを設けることができます。当然ながら、この「スモール・ステップ」の内容と進捗状況についても、セラピストだけでなくヘルパーや訪問看護、家族とも共有しておく必要があります。
最初の面談で心掛けるべきこと
適切な目標の設定には、適切なアセスメントが不可欠です。その際、重要なポイントとなるのが最初の面談です。
最初の面談では、次の2点について、はっきりと伝えましょう。
- 話をしたくないことは無理に話さなくてもよい
- ケアマネは、利用者から聞いた話を無断で他の人に伝えることは、決してない
ケアマネさんの中には、最初の面談から、利用者が何に困っているかを聞き出そうとする人もいます。特にまじめな人ほど、その傾向が強いようです。もちろん、困っていることを聞くのは大切です、でも、そればかり聞いていると、「ケアマネさんには困ったことを伝えればいいのか」と思い、本当にやりたいことや、実現したいことは話してくれなくなるかもしれません。
むしろ、最初の面接では、「あなたを支えるために、あなたのことが知りたい」というメッセージを伝えなければならないのです。例えば、現状を本人がどう思っているのか、あるいは、今まで大切にしてきたことは何かなど、本人の生活歴や家族の成り立ちにかかわるような質問を投げかければ、そのメッセージをうまく伝えることができると思います。
逆にお勧めできないのは、最初の面談で契約書や重要事項説明書の内容を丁寧に説明すること。状況にもよりますが、契約書などについては「よかったら後で読んでおいてください。次回、お会いした時にきちんと説明します」という対応でも、たいていは問題ありません。
- 白木 裕子 氏のご紹介
- 株式会社フジケア社長。介護保険開始当初からケアマネジャーとして活躍。2006年、株式会社フジケアに副社長兼事業部長として入社し、実質的な責任者として居宅サービスから有料老人ホームの運営まで様々な高齢者介護事業を手がけてきた。また、北九州市近隣のケアマネジャーの連絡会「ケアマネット21」会長や一般社団法人日本ケアマネジメント学会副理事長として、後進のケアマネジャー育成にも注力している。著書に『ケアマネジャー実践マニュアル(ケアマネジャー@ワーク)』など。
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