白木裕子の「実践! 仕事力の磨き方」 VOL.10
在宅でリハビリが必要な人への対応のポイント(後編)
日本ケアマネジメント学会副理事長の白木裕子先生が、介護保険制度や社会情勢に対応するためのポイントや心構えを、わかりやすく伝授する「実践! 仕事力の磨き方」。今回は、在宅でのリハビリをスムーズに進めるためのポイントについてです。
「本当に治るのか!」と問われた時には…
リハビリに前向きに取り組めない人も少なくありません。中にはリハビリを提案されると「それで私は本当に治るのか!」と質問してくる人もいるでしょう。
「治るのか」と聞かれた時、真っ先にやるべきことがあります。それは、利用者のつらい状況に共感すること。ここを省いてしまうと、後の対応がどれだけ適切でも、うまくいきません。
その上で「治るかどうか。それが関心事なのですね。そのことはセラピストにお聞きしましたか」と確認しましょう。その際、ケアマネは医療職ではないため、自分がその判断をすることはできない点も明確にしておく必要もあります。
セラピストに治るかどうかを尋ねていない人もいるでしょう。その時は「もしかして、セラピストに聞きにくいのですか」「なかなか話すタイミングが難しいですか」と、利用者の気持ちを確認しましょう。場合によっては、ケアマネが代わりにセラピストに伝えたり、質問したりすることも検討すべきです。
「もうこりごり」という人を動かすために
「病院でがんばってきたから、もうリハビリはこりごり」という人もいると思います。
この場合も、まずは、利用者の気持ちに寄り添い、これまでの努力をねぎらいましょう。その上で、次のことをはっきりと伝えてください。
- 自宅では、生活そのものがリハビリである
- 病院でできたはずのことが自宅でうまくできなくても、気にしなくてもよい
病院と自宅では、床の状態も部屋の形も食器の種類も、なにもかも違います。例え病院でスムーズにできたことでも、自宅に帰ったら、トライ&エラーを繰り返すのが普通なのです。
努力してできるようになったことが、再びうまくいかなくなるのは、誰にとってもしんどいことです。だからこそ、ケアマネは利用者のつらい気持ちに寄り添わなければなりません。その上で、失敗を恐れずに生活を続ければ、少しずつできることが増えていくことを伝え続けましょう。
自宅でリハビリを続ける際、家族がどのように対応するかも重要なポイントです。優しい家族であれば、苦労している利用者の姿を見ると、つい手を貸してあげたくなるものですが、それでは本末転倒。利用者を見守り、待つことを意識してもらうようにしましょう。
ともに喜び、褒めたたえることも大切!
もう一つのポイントは、できることが増えた時には、ケアマネも家族もヘルパーも、一緒になって喜ぶことです。そして、努力した利用者を褒めたたえましょう。
男性の中には人を褒めるのが苦手という人もいるでしょう。そういう人には「ご主人が褒めて差し上げると、奥様はもっと努力されると思いますよ」というふうに勧めてみてはいかがでしょうか。その際、自分の妻を支える男性を褒め、ねぎらいの言葉をかけることも忘れずに。
- 白木 裕子 氏のご紹介
- 株式会社フジケア社長。介護保険開始当初からケアマネジャーとして活躍。2006年、株式会社フジケアに副社長兼事業部長として入社し、実質的な責任者として居宅サービスから有料老人ホームの運営まで様々な高齢者介護事業を手がけてきた。また、北九州市近隣のケアマネジャーの連絡会「ケアマネット21」会長や一般社団法人日本ケアマネジメント学会副理事長として、後進のケアマネジャー育成にも注力している。著書に『ケアマネジャー実践マニュアル(ケアマネジャー@ワーク)』など。
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