白木裕子の「実践! 仕事力の磨き方」 VOL.18
悩ましい「入浴介助加算II」問題、対応のポイントを伝授!(前編)
日本ケアマネジメント学会副理事長の白木裕子先生が、介護保険制度や社会情勢に対応するためのポイントや心構えを、わかりやすく伝授する「実践! 仕事力の磨き方」。第18回は、昨年4月の介護報酬改定で新設されたデイサービスの「入浴介助加算II」との向き合い方を白木先生が伝授します!
「自宅での入浴」を後押しするための新加算
昨年4月の介護報酬改定で、デイサービスの「入浴介助加算」が変更され、新たに同加算「II」が創設されました。この新加算をめぐり、デイサービスの事業者とケアマネの間で、見解が分かれることが多いようです。
まずは、改定前からある「入浴介助加算」と、新設された同加算「II」の要件を、改めておさらいします。
つまり、ご利用者が自宅で入浴することを目指す取り組みを後押しするのが、「入浴介助加算II」の狙いであるわけです。
案外リスクが高い、高齢者の自宅での入浴
入浴は日本人にとって大切な文化です。また、銭湯などのように集団でお風呂に入るという習慣は薄れつつありますから、集団での入浴から個浴を基本とする方針転換は理解できます。
ただ、自宅でお風呂に入るのは、身体機能が衰えた高齢者本人や家族にとって、かなりの大仕事。転倒や溺れるなどのリスクがあります。特に深さがあり、浴槽の壁が直角に立ち上がっているような古いタイプの風呂で入浴したり、その準備・後始末をしたりするのは、高齢者にとっては大変なことです。
とりわけ大変なのは服を脱ぐことを嫌がる方が多い認知症の方の入浴介助です。中でもBPSDが著しい方の場合、自宅での入浴はきわめて困難で、無理強いをするとBPSDが増強される可能性があります。だから、認知症の方の多くはデイサービスで入浴しているのです。
デイの経営を左右する「II」の算定
当然ながら、デイサービス側にとっても、入浴はとても重要な支援です。だから、それぞれの事業者が「安心できる、楽しいお風呂」と「入浴の自立」の両立をめざし、できる限りの知恵を絞り、工夫をこらしています。
そうしたデイサービスの取り組みを報酬で後押ししていたのが「入浴介助加算」だったのですが、4月の介護報酬改定では、その単位が削られました。さらに通所介護の基本報酬があまり引き上げられなかったこともあり、創設された「入浴介助加算II」の算定の有無は、デイサービスの経営を左右する要素となってしまったのです。
- 白木 裕子 氏のご紹介
- 株式会社フジケア社長。介護保険開始当初からケアマネジャーとして活躍。2006年、株式会社フジケアに副社長兼事業部長として入社し、実質的な責任者として居宅サービスから有料老人ホームの運営まで様々な高齢者介護事業を手がけてきた。また、北九州市近隣のケアマネジャーの連絡会「ケアマネット21」会長や一般社団法人日本ケアマネジメント学会副理事長として、後進のケアマネジャー育成にも注力している。著書に『ケアマネジャー実践マニュアル(ケアマネジャー@ワーク)』など。
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