美味しい、うれしいという
思いを共有したい。
だからこそ口から食べることに
こだわり続けていきたい。
左:橋本英子さん(64歳)/右:今井公子さん(98歳)
※年齢は取材当時(2016年)
できる限り家で介護したい
自宅で98歳の母を介護する、橋本英子さん
踊りが趣味で、年を重ねても元気に稽古していたという公子さん。しかし、今から5年ほど前、「右手に力が入らない」「練習すると痛い」と言って稽古を休むようになった。同じ頃、徐々に認知症も進んでいったという。
「だんだん会話が成り立たなくなって、家の中で転倒することもあったので、一人にしておくことができなくなりました。当時は介護について何も知らなかったので、娘の私が面倒を見られる間は介護サービスは受けられないと思っていたんです。ところが主治医に相談してみたら、受けられるサービスがいろいろとあることがわかったので、利用してみることにしました」
そう語るのは、公子さんの実の娘である英子さん。本当に自宅で面倒を見られるのか不安もあったそうだが、担当したケアマネジャーは、公子さんの通院が難しくなってからは訪問診療に切り替え、入浴の介助や介護ベッドの手配をしてくれた。また、必要に応じて理学療法士や鍼灸師も来てくれた。そのサポート体制に、「これなら家で介護できるかもしれない」と自信がついたという。
「最初はうまくやっていけるのかしらと思っていましたが、家でもこんなにできるんだと安心しました。言葉数は今年に入ってだいぶ少なくなってしまいましたが、意思表示はしてくれます。私が言ったこともちゃんとわかるし、手伝いがあればトイレもできる。たまにデイサービスを利用することもありますが、やっぱりうちにいるのが本人も一番いいみたいなので、できる限り家にいてもらいたいんです」
英子さんは、公子さんに対して「お母さん」や「おばあちゃん」ではなく、「キミちゃん」と呼び掛けている。子どもの頃から母親や友人にそう呼ばれていたそうだ。
「ケアマネジャーさんたちも、みんなそう呼んでくれています。その方が元気が出るかなと思って。踊りをやっていたこともあって、昔から写真を撮ってもらうことが多かったんです。今日も撮影のために髪を染めたんですよ(笑)」
たとえ寝たきりであっても、訪ねてくる人のために身だしなみを整える。人と会うこと、人を喜ばせることが好きな公子さんの性格をよく知っているからこそ、英子さんはそういった気配りを忘れない。
次ページ:
安心できることが介護の支え
- 1
- 2