有識者コラムICTの「真価」を介護現場に届けたい――神奈川県担当者の思い 【後編】
介護現場における効率化・生産性向上には、ICTの導入が不可欠です。2019年度からは「地域医療介護総合確保基金」という国交付金の補助メニューにICT導入支援が位置付けられ、各自治体でさまざまな事業が展開されています。そこで、神奈川県福祉子どもみらい局福祉部高齢福祉課福祉施設グループの中原強さん、林雄大さん、山口一人さん、吉田晴香さん、そして本事業の実務を受託する公益社団法人かながわ福祉サービス振興会の得永真人さんにインタビューを依頼。後編となる今回は、ICT導入を進めるためのポイントや相談窓口などについて伺います。
得永:長年、県内の介護事業所の皆さんと接してきて、ICT導入においては「ヒト・モノ・カネ」の3要素を満たすことが欠かせないと実感しています。本事業により「カネ」の面で補助を受けられる意義は非常に大きいですが、それだけでは不十分。どのようなICT機器やソフトウェアが必要かは、事業所の状態や目的によって大きく異なります。「良い製品だと聞いたから」といったあいまいな理由ではなく、真に生産性向上につながる「モノ」を厳選したいところです。また、どれだけ環境を整えたとしても、それを活用できる「ヒト」がいなければ意味がないので、人材育成も急務だといえます。 林:そうした意味では、かながわ福祉サービス振興会の「介護生産性向上総合相談センター」を活用してもらうことも重要ですね。人材確保や業務改善はもちろんのこと、ICT導入・活用についても積極的にアドバイスを行っています。何をどのように取り入れればよいか悩んでいる、幅広く情報を収集したいといった方は、ぜひ相談してみてください。また、本センターでは介護ロボットの試用貸出も行っており、多くの問い合わせが寄せられているそうです。 中原:実は、介護ロボットの普及は、県が注力しているテーマの一つなのです。もともと「さがみロボット産業特区」などを通じて生活支援ロボットの普及を推進してきましたが、その一環として2024年度からは、介護事業所でのロボット導入における効果検証にも着手。現場への導入だけでなく開発企業への支援も行うことで、本格的に実用化を後押ししているので、ぜひ今後もご注目ください。 林:ICTにせよ介護ロボットにせよ、どうしてもハードルが高く感じる方は少なくないと思います。だからこそ、導入したらどのように職場環境が改善されるかを具体的にイメージすることが、積極的に活用につながるのではないでしょうか。 山口:とりわけ、新しい機器を取り入れた当初に、慣れるための時間や労力がかかる点が懸念される傾向にあります。それを最小化するためにも、介護生産性向上総合相談センターなどを上手に頼ってみてください。 吉田:日頃の職場環境の整理をすること自体が生産性向上の第一歩、という捉え方もできます。日常的な困りごとをコツコツと解消していく先にICT化があるとイメージすれば、ハードルが少し低くなるかもしれませんね。 得永:これからの日本では、「施設はあるけれど働く人がいない」といった状況も十分に起こり得ます。まずは介護業界全体に人を呼び込むことが重要であり、そのための貴重なツールの一つがICTだと思えば、決して見過ごすことはできないはずです。 中原:神奈川県では「高齢者が安心して、元気に、いきいきと暮らせる社会づくり」を基本目標として掲げています。その実現のためにICTや介護ロボットがあり、サービスの質向上や人材確保・定着、ひいては介護業界全体のイメージアップにもつながっていくと確信しています。県内の介護事業者の皆さんも、ぜひ「この先」を見据えて本事業を活用いただければ幸いです。「ヒト・モノ・カネ」の3要素を考え抜いて
今だけでなく「この先」を見据えたICT活用を
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