どうするICTへの対応…居宅のための導入講座どうするICTへの対応…居宅のための導入講座

有識者コラム居宅介護におけるICT化のハードルと、その飛び越え方 【後編】

介護のICT化は引き続き大きなテーマであり、介護保険法の2027年改改正に向けてもさまざまな議論が進められています。施設介護ではICT化の進展が著しいとの観測もありますが、居宅介護ではどのような状況になっているのでしょうか。今回は、茨城県水戸市で在宅介護事業や居宅介護支援・相談支援事業を手がける株式会社ケアファクトリーの代表取締役で、茨城県介護支援専門員協会副会長を務める能本守康氏にインタビューを実施。後編では、ICT導入による懸念点について伺います。

能本守康さん(株式会社ケアファクトリー代表取締役/茨城県介護支援専門員協会副会長/介護福祉士/主任介護支援専門員/相談支援専門員)

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「ICTへの向き合い方は事業所ごとに濃淡」

ICTによる効率化にも限度はある

介護のICT化は、現場レベルだけでなく経営レベルでも大きな影響をもたらします。例えば、ICT機器の活用による人員配置の効率化などを通して経営効率を高めようという流れがあり、これは介護保険法の2027年改正でも引き継がれるでしょう。

すでに、ケアプランデータ連携システムを導入することで、事業所が担当する利用者人数を50件近くまで引き上げることができるという説が喧伝されています。しかし、これは本当でしょうか。私の考えでは、ケアプランデータ連携システムの導入だけでそこまで効率化を図れるわけではなく、50件近くも担当しようとすれば仕事が雑になるだけです。人間がやらなければならないところはしっかりとやって、仕事の質や専門性を担保する前提で言えば、おそらく40件くらいが適正ではないでしょうか。

私も経営者ですから、職員に適正賃金を渡すためにも、やはり売上という数字は大いに気になります。ICT化で経営効率が高まるのは基本的には結構なことですが、私たちの仕事の意義に照らして「これ以上の効率化に踏み込んではならない」というラインがおのずとあるはずです。

もちろん、報酬改定をめぐる議論でもそこのバランスについては慎重に検討されていると思いますが、私が先に言ったことを踏まえれば、40件くらい抱えれば安定経営できるような水準に報酬を設定していただくことが望ましいと思っています。

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個人情報の取り扱いにはさらなる注意を

介護のICT化に関しては、個人情報保護の観点でも注意が必要です。例えば、ケアプランのたたき台を作るために対話型生成AIサービスを用いる場合、利用者さんに関わる極めてセンシティブな個人情報が外部に漏れる可能性があるわけです。そのリスクを踏まえて入力する情報をコントロールしなければなりません。

ケアマネジメントでは、最初に利用者さんから包括的な同意を頂くことで、個人情報がケアチームの間で共有されています。ただし、際限なく何でも共有できるわけではないですし、取り扱いを間違えれば、それこそ対話型生成AIサービスに「学習」されてしまうことだってありうるわけです。

令和6年から法定研修のカリキュラムが変わり、倫理面の学習が強化されたことも、こうしたことが背景の一つになっています。利便性の裏に落とし穴が潜んでいるということで、われわれ専門職は気を引き締め直さなければならないと思います。

介護は、生身の人と人が接するという意味では、とても原始的な仕事です。そこにはICTが入り込む余地がある部分とない部分がありますが、人でしかなし得ない仕事に対する価値というものは、今後ますます高まっていくでしょう。

ケアマネジャーの皆さんは、利用者さんに適切なサービスを過不足なく提供する上で極めて重要な役割を果たしており、介護保険に限っても数多くのサービスがある中で、その枠外のインフォーマルと言われている部分も含めて調整していく必要性が高まっています。また、利用者のニーズが多様化する中で、その人の価値観に合わせたサービスを調整するためにも、ケアマネジャーの存在は欠かせません。

私がこの仕事をしていてつくづく思うのは、人生の質は最終コーナーで定まるということ。高齢者介護に携わる専門職は、いわば利用者さんのファイナルステージをプロデュースする立場です。そこにやりがいを持って、大変なことも多いですが、一緒に頑張っていきましょう!

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能本守康(のもと・もりやす)
1964年茨城県水戸市生まれ。1988年青山学院大法学部卒、同年水戸信用金庫入庫。1993年株式会社ケアファクトリー設立。現在、同社代表取締役、有限会社共立看護婦家政婦紹介所取締役。日本介護支援専門員協会常任理事や茨城県介護支援専門員協会副会長など、職能団体などで多数の要職につく。著書に「初めて学ぶケアマネジメントテキスト」(中央法規出版)など。介護福祉士、主任介護支援専門員、相談支援専門員。

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