有識者コラムICT活用による介護現場の負担軽減を目指して――北九州市による「北九州モデル」導入支援の取り組み【前編】
昨今、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少により、介護人材不足の深刻化が懸念されています。介護現場における業務効率化や生産性向上には、ICTの導入が不可欠です。政令指定都市で最も高齢化が進む北九州市では、こうした状況を踏まえ、2020年に介護ロボットなどのテクノロジーを活用した業務改善手法「北九州モデル」を確立。ICTの活用・導入を希望する介護事業者に対し、伴走支援を実施しています。前編では、北九州モデルの概要や支援の流れ、実際に支援を受けた事業者からの反応などについて伺います。

後列左から:熊谷順子さん(北九州市 保健福祉局 地域共生社会推進部 介護イノベーション推進室 普及促進担当係長)、内田佳那子さん(北九州市 保健福祉局 地域共生社会推進部 介護イノベーション推進室 主任)、樽本洋平さん(麻生教育サービス株式会社 北九州支店 介護福祉ソリューション課 課長)
内田:北九州モデルとは、テクノロジーを活用した業務改善手法です。業務の仕分けや課題整理、ICTや介護ロボットの適切な選定・導入を通じて、業務量の削減と介護の質の向上を図ります。現場に「時間のゆとり」を生み出すことが、北九州モデルの導入価値といえます。 北九州市は政令指定都市の中で最も高齢化率が高く、人口のおよそ3人に1人が高齢者です。さらに、2040年まで85歳以上の人口増加が見込まれており、介護需要の一層の高まりが予想される一方で、生産年齢人口は減少する見込みです。こうした背景から、北九州市では介護人材不足対策の一環として、2016年度から介護ロボット等の導入実証を重ね、2020年に北九州モデルを構築しました。 樽本:北九州モデルは、大きく3つのステップで構成されています。1つ目は、「介護業務の見える化」です。施設内の業務を全て洗い出し、約1ヶ月かけて可視化します。まず施設職員にスマートフォン端末を共有し、全業務の時間を計測するとともに、困り事に関するアンケート調査を実施します。これにより、24時間の業務の流れと、負担の偏りを客観的に把握できます。 2つ目は、「業務仕分け」です。見える化の結果をもとに課題を明確化し、解決の方向性を設定します。施設職員を中心としたグループワークで具体策を検討し、代替・効率化可能な業務を洗い出したうえで、施設の実情に合った介護テクノロジーの導入を検討します。 3つ目は、「業務オペレーションの整理」です。テクノロジー活用によって生まれた余力を有効活用するため、業務手順や役割分担を見直します。北九州モデルでは、これらの3ステップを一体的に実施することで、効果的かつ効率的な業務改善を実現します。 内田:2021年からスタートした「北九州モデル」導入支援では、理学療法士や作業療法士、介護福祉士などの資格を持つ専門相談員が、北九州モデルの導入や実践に向けた支援を実施しています。毎年5施設に対し、10ヶ月間の伴走支援を行っており、2021年から2025年までに25施設を支援しました。 導入支援施設からは、「記録ソフトの導入などのデジタル化により、記録時間を最大50%(介護職員4割・看護職員5割)削減できた」「見守りシステムの運用の見直しを行ったところ、夜勤帯の巡回を2時間ごとから4時間ごとへ変更できた」「産休・育休による月750時間の残業増加見込みに対し、テクノロジー導入とタスクシェアにより600時間の抑制に成功した」といった声が寄せられています。 樽本:伴走支援時に特に多いのが、記録業務の負担軽減に関するお悩みです。介護業務は直接業務と間接業務に分けられますが、記録業務を含めた間接業務に時間を取られると、利用者さんのケアの時間が圧迫されます。いかに間接業務を効率化し、直接業務へ振り向けるかが重要です。 伴走支援時、こうした課題に対しては、テクノロジーの活用を段階的に進めています。例えば記録業務では、手書きからパソコン・スマートフォン入力に移行する業務を食事介助などに限定したところから始めて、徐々に拡大し効率化を図ります。また、さらに音声入力へと発展させる事業所もあります。 また、テクノロジーの導入にあたっては、機器を一方的に選定するのではなく、メーカーによるデモや、既に導入している施設の見学などを通じて、各施設が最適な選択をできるよう支援しています。テクノロジー活用を軸とした、先進的な業務改善手法を確立


10ヶ月の伴走支援の結果、残業見込み時間600時間削減も

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