有識者コラムICT活用による介護現場の負担軽減を目指して――北九州市による「北九州モデル」導入支援の取り組み【後編】
昨今、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少により、介護人材不足の深刻化が懸念されています。介護現場における業務効率化や生産性向上には、ICTの導入が不可欠です。政令指定都市で最も高齢化が進む北九州市では、こうした状況を踏まえ、2020年に介護ロボットなどのテクノロジーを活用した業務改善手法「北九州モデル」を確立。ICTの活用・導入を希望する介護事業者に対し、伴走支援を実施しています。後編では、同モデルの伴走支援を受けた介護事業所の事例を通じて、導入前の課題や具体的な業務改善のプロセスについて伺います。

後列左から:熊谷順子さん(北九州市 保健福祉局 地域共生社会推進部 介護イノベーション推進室 普及促進担当係長)、内田佳那子さん(北九州市 保健福祉局 地域共生社会推進部 介護イノベーション推進室 主任)、樽本洋平さん(麻生教育サービス株式会社 北九州支店 介護福祉ソリューション課 課長)
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「テクノロジー活用を軸とした、先進的な業務改善手法を確立」
米多:当施設では以前より、人材不足による業務負担の増加が大きな課題でした。それに伴い残業時間も増え、職員の疲弊やモチベーション低下につながっていました。職員の負担軽減とケアの質の両立を図りたいという思いはあったものの、従来の業務フローを大きく変えることへの抵抗感が強く、抜本的な改善には至らない状況が続いていたのです。そうした中で、施設長から北九州モデルの話を聞き、伴走支援を受けながら課題を解決できる点に魅力を感じて申し込みました。 山口:導入前は、複数の業務において負担が積み重なっている状態でした。まず身体介助では、おむつ交換の対象となる利用者さんが多く、特養特有の一斉対応も重なって、職員への負担が大きくなっていました。記録業務にも課題があり、十分な作業時間を確保できないため、内容を細かく残しきれない状況でした。手書きとタブレット入力を併用していたものの、タブレットは各階に1台しかなかったため、同じ内容を二重に記録する必要があり、業務時間を圧迫していたのです。 また、入浴業務では必要な人員を確保できず、残業が常態化していました。こうした状況が、職員の負担増加や業務効率の低下につながっていたと感じています。さらに、夜勤帯のコール対応が多いことも大きな課題でした。 小濱:今回の伴走支援では、こうした課題に対して「業務の整理・振り分け」「見守りセンサーの設定変更とデータ活用」「音声記録の導入や活用」といった支援を受けました。中でも大きな変化があったのが、見守りセンサーの活用です。当施設ではもともと「眠りSCAN」という見守り支援システムを導入していましたが、データを十分に活用できていませんでした。そこで、取得したデータをもとに利用者さんの生活リズムを見直すことにしたのです。 例えば、夜間に十分な睡眠がとれていない利用者さんの様子を確認したところ、日中に車椅子上で傾眠している姿が見られました。そのため臥床時間を調整した結果、徐々に睡眠リズムが整っていきました。こうした取り組みにより、夜間に安定して休まれる方が増え、コール回数は従来の約78回から13.5回へと大きく減少しています。個別設定への見直しによって、不要なセンサー反応が減ったことも要因ですが、こうした目に見える成果が、職員全体の意識変化にもつながったと感じています。 樽本:好日苑さんへの支援では、小さなPDCAサイクルが継続的に回っていた点が印象的でした。見える化によって明らかになった課題に対し、改善策の実行と評価を繰り返しながら、次の手段へとつなげていく流れが非常にスムーズでした。特に夜勤帯のコール削減については、データに基づくケアの見直しにより、現場負担の減少と利用者さんの自立支援の両立につながった好事例だと捉えています。当初はプロジェクトチームを中心とした取り組みでしたが、その後は他の職員の方々にも展開され、最終的に現場全体に広がっていった点も大きな成果だと感じています。 内田:現在、人手不足でお困りの施設には、ぜひ北九州モデルを導入のうえ、業務効率化を図っていただきたいと考えています。特に介護テクノロジーの導入を検討されている施設には、伴走支援への参加をご検討いただきたいです。 北九州モデルの今後の取り組みとしては、外部人材の活用があります。北九州モデルでは課題解決策の一つとして外部人材の活用も推奨していますが、現場ではまだ十分に進んでいないのが実状です。そのため、2026年度からはその普及を進めていく予定です。 また、北九州モデルで得られた知見を活かし、在宅版北九州モデルの構築を進めています。北九州市の在宅介護の現場では、自宅での生活を希望する方が多い一方で、実際には病院で最期を迎える方が多いのが現状です。施設版で培った知見とノウハウを活かし、高齢者が自宅でも安心して過ごせる環境とサービスの構築を目指して、今後も取り組みを続けていく予定です。伴走支援によるICT活用で、業務改革を実現



施設版の知見を活かし、在宅版北九州モデルの構築へ

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「テクノロジー活用を軸とした、先進的な業務改善手法を確立」
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