有識者コラム結局どうすべき?まだ間に合う、ケアプランデータ連携システムの導入と活用【前編】
ケアプランデータ連携システムの本格的な運用が2023年にスタートし、はや3年がたちました。皆さんの事業所では、このシステムを導入し、十分に活用できているでしょうか。「時間に余裕ができたらいつか」「うちは紙のやり取りでいいから」などと先延ばしにしているなら、黄色信号かもしれません。ケアプランデータ連携システムの推進を担当する厚生労働省の北川美歩さんと、現場で大いに成果を上げている株式会社トライドマネジメントの長谷川徹さんのお話から、本システムへの知見を深めておきましょう。

長谷川 徹さん(株式会社トライドマネジメント 代表取締役/主任ケアマネジャー)
「どうして使わない?」と疑問に感じる便利さ

北川:皆さんご存じの通り、日本では「現役世代」の人口が急減し続けていて、介護領域でも人材確保が大きな課題になっています。解決のためには生産性向上が不可欠で、そのためのツールがケアプランデータ連携システム(以下、本システム)です。従来はFAXなどで行っていたケアプランのやり取りをオンライン化し、介護ソフトにデータを自動取り込みすることで、事務負担を大幅に軽減できます。2026年7月末時点での登録率は53.1%で、居宅介護支援事業所に限っては50%を超えました。
長谷川:当社では、約3年前から本システムを導入しています。紙文化ゆえの非効率さを改善したい、ケアマネジャーが本来業務に専念できる環境を整えたいといった課題感があったので、早々に勉強会を実施。それほど難しい話ではないと分かったので、すぐに運用の仕方を検討し始めました。本システムでどれだけ負担が減るかを実感してきたので、今では「こんなに便利なのに、どうして使わない事業所があるのだろう?」といった感覚を持つほどです。
北川:今までのやり方を変えることには、勇気が必要なのかもしれませんね。使い始めることで、そして導入する事業所が増えることでどんどん効果を実感しやすくなるので、「まずはお試し」でもいいので使ってもらうことが大切だと思います。
紙の提供表が2100枚から600枚に激減!

長谷川:実際、本システムの導入によって、当社では大きな成果が出ています。もともとFAXでやり取りしていた紙の提供表の枚数は月2100枚にも及びましたが、現在では600枚程度にまで削減され、送受信やデータ転記にかかる労力が大幅に減少しています。データ連携できる事業所数も年々増加し、今では全体の半数近く(330事業所のうち161事業所)になりました。
北川:生産性向上の結果、ケアマネジャー1人当たりの平均要介護者数が34.5人から43.7人に増加していますね。御社の場合、医療ニーズに特化しているという強みもあるので、ケアマネジャーがフットワークよく動けることや専門性を高めることを重視して頭を捻り、上手に本システムを活用いただいた結果なのだと思います。
長谷川:これだけ手間が省けることを実感するようになると、どうしても「データ連携できる事業所に依頼したい」と考えるようになりますね。時代が変わりつつあることを理解し、同じスピード感で動ける事業所を優先しないと、結局は自社の職員に負担がかかるわけですから。
北川:そうした意味では、他事業所への働きかけも大切ですね。まずは関係のできているところに声をかけてみて、「一回テストデータを送り合ってみましょう」などと気軽に始めてみるのもよさそうです。
「今まで通り」に危機感を抱いてICT導入

北川:御社の場合は、ケアマネジャー以外でも可能な入力業務は事務員が担うなど、役割分担による効率化を同時並行で進めたことも大きかったと思います。これから独居の高齢者が増えることもあり、ケアマネジャーには一層その力を発揮してもらわなくてはなりません。本業に時間を割ける環境をいかに整えるかが、どの管理者にも問われています。
長谷川:うちは地域で後発の事業所だったので、生き残りのために課題を一つずつ、確実にクリアしていかなければという危機感がありました。もし、「今まで通り」「他と横並び」でいたら、おそらく多くの職員が疲弊して辞めていったと思います。人で改善できることは何か、ツールで解決できることは何かを常に考えてきたので、本システム導入の際にも抵抗がなかったのかもしれません。

- 北川 美歩(きたがわ・みほ)
- 厚生労働省 老健局 高齢者支援課 介護業務効率化・生産性向上推進室 介護業務改革推進官
社会福祉法人信愛報恩会にて26年間勤務し、施設長などを経験した後、厚生労働省に入省。2026年4月より厚労省老健局高齢者支援課に配置され、介護業務改革推進官として生産性向上やICT普及などに取り組んでいる。

- 長谷川 徹(はせがわ・とおる)
- 株式会社トライドマネジメント 代表取締役/主任ケアマネジャー
ケアマネジャーや管理者として経験を積んだ後、2017年に株式会社トライドマネジメント(単独型居宅介護支援トライドケアマネジメント運営)を設立。会社を挙げた生産性向上などの取り組みが評価され、「令和7年度 介護職員の働きやすい職場環境づくり内閣総理大臣表彰・厚生労働大臣表彰」にて、内閣総理大臣表彰を受賞している。
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