有識者コラム結局どうすべき?まだ間に合う、ケアプランデータ連携システムの導入と活用【後編】
本格運用から3年がたった今も、ケアプランデータ連携システム(以下、本システム)の導入に二の足を踏んでいる事業所は少なくありません。しかし、「現状維持」では立ち行かない未来が待っているとしたら、どうでしょうか。本システムの推進を担当する厚生労働省の北川美歩さんと、現場で大いに成果を上げている株式会社トライドマネジメントの長谷川徹さんに、前編に引き続いてお話を伺います。

長谷川 徹さん(株式会社トライドマネジメント 代表取締役/主任ケアマネジャー)
長谷川:私自身、会社のトップとして生産性向上に取り組んでみて、「素直に新しいものを受け入れる」ことの大切さを実感しています。時代の変化に伴い、居宅介護支援事業所も変わらなければならない。それを大前提として、改善のために必要なものは(たとえ個人的に抵抗感があっても)受け入れる必要があると思います。また、単に無駄を省いて効率化するだけでなく、評価制度や待遇の改善にまで結び付けることが肝要です。当社では本システムの導入後、有給休暇取得率は74%から83%※1に、平均年収は427万円から491万円※2に増えています。 北川:御社をはじめ、生産性向上の取り組みに成功している事業所の多くは、トップが「今のままではいけない」という問題意識を持っていますね。ボトムアップで現場の声を拾う一方で、トップダウンでスピーディーに物事を動かしていく――。そのためにも、間にいるミドル層の果たす役割が大切で、取り組みの定着を大きく左右します。DXに強くなることを含めて、ミドル層の教育にしっかりと投資することも、長期的な目線では欠かせないと感じます。 長谷川:自分たちの取り組みを思い返しても、最初はトップ主導で現場の課題に向き合い、「ICTの端末は何がベスト?」「オンラインにつなぐ方法は?」と一つずつ話し合いながら解決していきました。そうしたフェーズが過ぎてからは、「目に見えない課題」に挑戦する一つ上の段階に入ってきて、ボトムアップで次々と職員から意見が出るようになっています。 北川:私は以前、サ高住で施設長をしていたのですが、介護職は「手間をかけること」に重きを置きがちですよね。「自分が楽になることを追求するなんて……」と抵抗を感じやすいからこそ、ICTを具体的にどう生かすのか、生み出せた余剰時間をどのように活用するのかを、しっかりと現場ごとに話し合う必要があると思います。ICT導入はあくまでも手段だと理解し、目的化しないよう注意しなければなりません。 長谷川:対話の必要性は、本当に私たちも痛感したところですね。性格や価値観が違う人間が集まって、一つの方向に向かって進もうというわけですから、「分かったふり」は禁物。雑談レベルから本格的な会議まで、対話の回数はどうしても多く必要となります。一見、時間がかかるように思えますが、こうして組織の土台を整えることこそが最重要事項であり、まさに「急がば回れ」だと感じます。 長谷川:当社を視察した事業所の方に「お勧めのICTツールは何ですか?」と聞かれることがありますが、表面的な手法だけを真似ても、結局は定着しない印象です。まずは、それぞれの現場で何が必要かを徹底的に話し合うこと。そしてトップ自身が、「今の事業所にとって何が最適か」「職員は何を望んでいるか」を、これ以上答えがないというところまで考え抜くことが、何より大切ではないでしょうか。 北川:DXは、現場が抱えていたモヤモヤを解消する絶好のチャンス。職員に話を聞けば、「本当はもっと利用者さんを散歩に連れていきたい」「レクリエーションに力を入れたい」などの本音がきっと出てくるはずです。時間ができたら何をしたいか具体的に考えることで、「やらされている感」から抜け出し、主体的にDXに取り組むことにもつながるでしょう。なお、本システムは2027年1月には介護情報基盤へ統合され、在宅サービスにおけるスタンダードなツールになっていきます。いよいよ時代が変わる――。そう捉えて準備を進める最終段階に、私たちは今、立っているのです。今の時代、居宅のトップに求められる意識とは?

※1 2022年から2023年の変化
※2 2022年から2024年の変化重ねた対話の質と量が、課題解決の礎になる

主体的なDXで、時代の変化に追いつこう


- 北川 美歩(きたがわ・みほ)
- 厚生労働省 老健局 高齢者支援課 介護業務効率化・生産性向上推進室 介護業務改革推進官
社会福祉法人信愛報恩会にて26年間勤務し、施設長などを経験した後、厚生労働省に入省。2026年4月より厚労省老健局高齢者支援課に配置され、介護業務改革推進官として生産性向上やICT普及などに取り組んでいる。

- 長谷川 徹(はせがわ・とおる)
- 株式会社トライドマネジメント 代表取締役/主任ケアマネジャー
ケアマネジャーや管理者として経験を積んだ後、2017年に株式会社トライドマネジメント(単独型居宅介護支援トライドケアマネジメント運営)を設立。会社を挙げた生産性向上などの取り組みが評価され、「令和7年度 介護職員の働きやすい職場環境づくり内閣総理大臣表彰・厚生労働大臣表彰」にて、内閣総理大臣表彰を受賞している。
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