知っておきたい高齢期の食事と栄養 知っておきたい高齢期の食事と栄養

vol.2 北九州市
24人の管理栄養士を中心に
楽しみながら取り組める栄養改善を推進

「自治体の食事支援の取り組みについて」の第2回は、北九州市の取り組みを紹介します。
北九州市では、市全体で24人もの管理栄養士を雇用。各行政区にも管理栄養士を配置し、市民の栄養改善に積極的に取り組んでいます。今回は、食育・栄養改善担当課長を務める管理栄養士の大村美智子さんに、北九州市の高齢者の食の支援について伺いました。

楽しく食べることで栄養状態も改善する

高齢者の食の支援に最初に取り組んだのは、もう10年以上前のことになります。人間総合科学大学教授熊谷修先生のお話を聞いたのがきっかけでした。当時は、高齢者は魚を食べましょう、という意見が主流だった頃。しかし、熊谷先生は高齢者こそ肉を食べなくてはいけない、低栄養に目を向けなくてはいけないと提唱されていたんです。そのお話にとても共感し、先生に教えていただきながら、当時私が勤務していた区役所で低栄養予防の教室を、5回を1クールとして開催しました。

その時、熊谷先生に言われたのは、「高齢者対象の教室をするなら、とにかく行って楽しいと思える教室にしなさい」ということ。ただ知識や情報を教えるのではなく、おもしろかった、楽しかったという体験の中に、身近な生活で生かせる気づきがあり、行動変容につながるものにする。そうでなくては続かないと言われました。

教室では参加者全員に血液検査をして、血清アルブミン値(※1)、血中コレステロール値、貧血の有無等を調べました。そして、最終回にまた同じ項目を調べて、どのような変化があったかを見ました。すると、実におもしろいことがわかりました。

食に関心がない、食欲がないという方は、その多くが低栄養状態でした。ところが、教室に通う中で食べることに関心がわいてきたり、食べることが楽しいと思えるようになったりすると、栄養状態が改善していくことがわかりました。食事は栄養バランスへの配慮以上に、楽しく食べること、食べることに関心を持つことが大切なのだと、改めて気づかされました。

(※1)血清アルブミン値…栄養状態を図る指標。介護保険認定や死亡リスク予測の観点からは、3.8g/dl以下が、要支援予備軍として特定高齢者に分類される。

ほめられたいという気持ちが行動変容を生む

教室では、初回に熊谷先生が考案された「食のバランスチェックシート」(※2)を全員に配布しました。特に、記入して持ってくるようには伝えませんでしたが、次の回のとき、8割ぐらいの方が持ってこられました。その時、せっかくなので、「よくできました」と花丸を付けてお返ししました。すると、それからは毎回、みなさん、競うように持って来られて。これだ!と思いました。

年を重ねると、なかなか人からほめられる機会がなくなります。バランスシートを見てもらう、ほめてもらうという体験が、参加者の前向きな行動を引き出したんですね。「肉を食べましょう」とこちら側が言うような、押しつけ的な指導ではダメなんです。このシートを付けることで意識して食べるようになり、自発的な行動変容を起こすことができた。それで、みなさんの合計点数は、毎回、毎回、持って来るたびに上がっていったのです。食事は、楽しく、おいしく、バランスよく、だとしみじみ思いました。

血圧の高い人は、減塩が必要だといいますが、減塩で味がしない、おいしくないものを食べても楽しくないですよね。教室でもやりましたが、味噌汁を作るのが面倒だったら、インスタント味噌汁でいいんです。その味噌の袋を半分に切って、お湯の量も半分にすれば、普通の濃さの味噌汁でも食塩の摂取量は半分になります。何も、無理に味を薄くしなくてもいいんです。半分にして量が少なくさみしいと感じるなら、お豆腐をたくさん入れればいい。そうやっておいしく減塩する方法も伝えていきました。

(※2)食のバランスチェックシート…熊谷修氏が考案した、バランスのよい食事を摂ることに意識を向けるためのチェックシート。10日間、毎日の食事を思い出し、摂取した食品群に丸を付ける。右下の合計が100になることを目指す。

大村 美智子氏

大村 美智子氏

北九州市保健福祉局健康推進課
食育・栄養改善担当課長
(認知症支援・介護予防センター
地域活動推進担当課長(兼務))

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