知っておきたい高齢期の食事と栄養 知っておきたい高齢期の食事と栄養

vol.6 和歌山市【前編】
介護予防の3つの運動プログラムを用意
食についてのアドバイスも盛り込む

「自治体の食事支援の取り組みについて」の第6回は、和歌山市の取り組みを紹介します。和歌山市では、一般介護予防事業と、赤ちゃんから高齢者までのポピュレーションアプローチ(※)を行っている地域保健の取り組みの中で、高齢者の食に関する支援を行っています。和歌山市の地域包括支援課、地域保健課の皆様にお話を伺いました。前編・後編の全2回で紹介します。
(※)ポピュレーションアプローチ…病気等のリスクが高まっていない集団全体に働き掛け、将来的なリスクを軽減すること

課題は運動不足と野菜摂取不足

和歌山の住民全体の特性を県単位で見ると、運動不足、野菜摂取不足が目につきます。 これは、厚生労働省が毎年実施している「国民健康・栄養調査」の結果を、平均寿命と健康寿命が比較的長い長野県などと比較して見えてきたことです。

和歌山市はというと、ここ6年間で徐々に健康寿命が延伸しています。しかし、平均寿命の伸びの方が大きいため、平均寿命と健康寿命の差が縮まっていないのが現状です。 当市としては、運動不足や野菜摂取不足という課題に対応していくことで、結果として健康寿命の延伸につなげたいと考えています。

高齢者に関しては、自ら進んで運動不足の解消、健康維持に取り組んでもらおうと、65歳以上の全高齢者が対象の一般介護予防事業として、現在3つの事業を推進しています。 一つずつ説明していきましょう。

3カ月で体力が向上した「つれもて健康体操」

一つ目は、2016年に開始した「WAKAYAMAつれもて健康体操」です。「つれもて」とは、和歌山の言葉で「みんな一緒に」という意味。 ゆっくりした動きやストレッチ中心の体操を取り入れることで、初心者も気軽に参加できるようにしています。 住民の自主的な活動を支援することを意図しており、対象は、「週に1回以上運動を続けたい」と希望する5人以上のグループ。 高齢者の運動機能などを熟知するリハビリのプロが合計4回、体操のやり方、健康に関する知識等を伝え、4回目には体力測定も実施します。

終了から3カ月後と1年後には、理学療法士が各グループを訪問し、運動の継続を支援しています。 その際、再び体力測定も行います。その結果、下記の通り、体力と筋力がおおむね向上しており、運動の成果が見られました。

4回目(破線)と終了後3カ月(実線)の体力測定の結果の比較
4回目(破線)と終了後3カ月(実線)の体力測定の結果の比較

2016年度、2017年度の2年間で58グループ、約1100人の高齢者がこの取り組みに参加しました。 現時点では、その全てのグループが今も自主的に運動を続けています。

つれもて健康体操は、理学療法士の他にも、作業療法士や言語聴覚士にも講師として加わってもらっています。 作業療法士から伝えてもらっているのは、認知症予防に効果的な生活習慣や運動との関係性。 また、言語聴覚士には“のみ込み”のプロの視点から、嚥下力を維持する方法や口腔ケアなどについてアドバイスしてもらっています。

参加者には、「1人ではなかなかできないけれど、グループでみんなとやれば楽しくできてよいと思う」「体操とおしゃべりが大変よい。よいきっかけになりました」など、好評です。 今後さらに参加者数を増やしていくため、市のホームページも活用。 新たに運動を始めたいと思った人が最寄りの自主グループを見つけやすいよう、活動中のグループの名称と活動場所などの一覧表をダウンロードできるようにしました。

3つの運動プログラムの提供で選択肢を増やす

二つ目は、「市民ボランティア養成講座」です。この講座は、単に自分が運動を楽しむだけでなく、リーダーとして自主グループを運営していけるボランティアを養成することを目的としています。 介護予防のための筋力トレーニングなどを研究テーマとする和歌山大学の先生から講座を受けるため、参加者は週1回、3カ月間にわたって大学に通います。

ここで学ぶのは、踏み台などを用いて行う「わかやまシニアエクササイズ」という和歌山県と和歌山大学が協働で作った運動プログラムです。 全12回の講座で他の高齢者に指導できるレベルまで身に付けます。同時に、運動の後にタンパク質を摂取すると筋肉量が増えるといった栄養に関する知識や、自主グループの大切さなどリーダーとしての役割も学びます。 2016年度、2017年度でそれぞれ約100人を養成。参加者は修了後、参加者同士で自主グループを作ったり、地域でグループを立ち上げたりするなど、具体的なアクションを起こしています。

三つ目は、「自主活動移行教室」です。既存のデイサービス事業所や接骨院(整骨院)等を活動の場として、参加者は最長6カ月間通って運動の習慣を身に付けます。 取り組む運動は通所先によって異なりますが、目的は、教室が終わってからも自分たちで運動を続けてもらうことです。 この教室は、通いやすい場で運動ができることがメリット。2017年度からスタートし、1年間で754人が参加しています。

一般介護予防事業で、あえて3つの違う場、違う内容の運動系プログラムを提供しているのは、自分の好み、事情に合う場を見つけてほしいからです。 多くの人に、いずれかのプログラムに参加してもらい、自主的に運動を続けるとともに、栄養面や認知機能の低下にも気を付ける習慣を身に付けてほしいと考えています。 そして、2025年までに自主グループでの活動者数について、和歌山市の高齢者人口の1割にあたる約1万1000人を目指していきたいです。

ケアマネジャーと一緒に高齢者の自立支援への理解深めたい

元気なうちに運動や栄養に配慮した生活習慣を身に付けて、健康の維持を図る。たとえ要支援、要介護になっても、少しでも改善に向けて努力する。 3つの事業では、そうした住民を増やしていくことを意図して取り組んでいます。しかしながら、要支援・要介護になった高齢者を見てみると、“自立支援型”サービスより“お世話型”のサービスの利用を望む傾向があります。 高齢者の自立支援に対する理解を深めるため、ケアマネジャーの力を借りたいところです。

現在、ケアマネジャーや介護サービス事業所の職員を対象とした自立支援に向けての研修を実施しています。「介護予防ケアマネジメント研修会」「アセスメント研修会」「自立支援型地域ケア会議研修会」などです。 ケアマネジャーとして、利用者や家族の方の思いに寄り添うのはもちろん大切なことです。しかし、そこからさらにもう一歩踏み込んだ支援をしてほしい。 ケアマネジャーには、利用者が健康で自立した生活を続けられるよう、リードする存在であってほしいと考えています。

和歌山市 地域保健課

赤山辰如氏(右)

和歌山市健康局保険医療部地域包括支援課副課長

松浦英夫氏(中央)

和歌山市健康局健康推進部地域保健課課長

金谷裕代氏(左)

和歌山市健康局健康推進部地域保健課健康総務班 管理栄養士

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