コラム【令和時代の排泄ケア】
真の課題解決につながる
排泄アセスメントの実際

日本ケアマネジメント学会副理事長)
一口に「排泄ケア」と言っても、その常識は時代によって変化していきます。古い常識に縛られたままでは、利用者の不利益につながりかねません。昔とは異なる部分も多い、今の時代ならではの排泄ケアとは、どのようなものなのでしょうか。ここでは、日本ケアマネジメント学会副理事長の白木裕子先生(株式会社フジケア取締役社長)に、今求められる排泄アセスメントの在り方について教えていただきます。
排泄のアセスメント項目、深掘りが求められる背景は?
皆さんは、2023年から介護サービス計画書の課題分析標準項目が改正されたことを、日頃の業務でどのくらい意識しているでしょうか。利用者さんの状態像をより適切に把握すべく、多くの項目に変更が加えられましたが、その一つが排泄の項目です。
| 旧 | 新 |
|---|---|
| 失禁の状況、排尿排泄後の後始末、コントロール方法、頻度などに関する項目 | 排泄の場所・方法、尿・便意の有無、失禁の状況等、後始末の状況等、排泄リズム(日中・夜間の頻度、タイミング等)、排泄内容(便秘や下痢の有無等)に関する項目 |
あらためて見比べてみると、収集すべき情報の量や細やかさが、大きく変化していることが分かるでしょう。実は、改正前のアセスメント項目が設定されたのは、介護保険制度が始まる以前のこと。自立支援を前提に本制度が確立したこと、介護人材が不足していることなどを受けて、より正確なアセスメントにより「必要な介護量」を見積もることが求められているのです。
一見、同じくらいのADLに見える方でも、排泄の状況は大きく異なる場合があります。声かけで誘導できるか、使用している薬の影響はないか、トイレまでの距離はどのくらいか、夜間や冬場ではどうか……。こうした細かな点まで理解し、ケアプランの週間スケジュールを用いて排泄のタイミングを整理することで、必要なケアが見えてきます。
「お手洗いのことは聞きにくい」を乗り越えるために
しかし、多くのケアマネジャーは、排泄のアセスメントにハードルを感じているのではないでしょうか。特に初回のアセスメントでは、「初対面でお手洗いのことを根掘り葉掘り聞くなんて……」と抵抗を感じやすいもの。実際、聞かれる側もプライドを傷つけられやすい話題であることは事実ですから、「失礼な質問で恐縮ですが、皆さんにお尋ねしています」と前置きするなど、一定の配慮は必要です。
また、初回のアセスメントですべてを聞き出そうと、焦る必要はありません。ケアマネジャーであれば、基本的に毎月、利用者さんやご家族と面会の機会があるはず。少しずつ信頼関係を築き、排泄の困り事についても深掘りしていけばよいのです。実際、月日がたつにつれて課題感は移り変わっていくことが多いため、経時的に利用者さんを見ていくという意味でも、こうした感覚は重要です。
特に意識したいのが、入院から在宅に戻ってくるタイミングです。病院では転倒させないことが優先になりがちで、多少は動ける方でも、おむつやポータブルトイレ利用になる場合が少なくありません。ベッド上から動かない期間が長くなるほど機能低下が進み、自宅に帰ってから、排泄面でも新たなトラブルが起こりやすいのです。病院から共有される退院サマリーなども参考に、ADLの変化をしっかりと捉えましょう(区分変更が必要な場合もあります)。本人への質問も、「入院生活はいかがでしたか?」などと切り出すと、自然に排泄の話題も出てきやすいものです。
ADLだけでなく「思い」や「生活環境」に着目
こうして集めた情報を重ね合わせて、分析することがアセスメントであり、ケアマネジャーがその真価を発揮すべき業務の一つです。ここで注意したいのが、「本人の状態像」だけに注目し過ぎないこと。もちろん、ADLは排泄ケアを考える上で非常に大切ですが、そこだけにフォーカスしていると、適切な解決案につながらない可能性があります。
まずは、利用者さんの「思い」に耳を傾けましょう。何が何でも自力でトイレに行きたいと考える方もいれば、夜間に目が覚めると再び寝付けなくなるから、就寝時はおむつを使う方が安心と考える方もいます。排泄ケアについても本人の意向をしっかりと確認し、そこに寄り添う姿勢を忘れないようにしましょう。
そしてもう一つ、見逃してはならないのが、生活環境です。利用者さんの寝室や居間とトイレはどのくらい距離があるのか、フロアは一緒なのか、トイレのドアはどのような形状か、手すりはどこに設置されているか――。こうした点に着目し、「寝室を1階に移す」「片開きのドアをスライドドアに替える」といった調整を図るだけでも、困り事が解消されるケースもあります。少し視野を広げて、利用者さんを包括的に見ることで、排泄ケアの質はグンと上がるのです。
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