令和元年度(第22回)介護支援専門員実務研修受講試験
解答速報
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- 保健医療サービスの知識等
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- 福祉サービスの知識等
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総評
- 高齢社会権利擁護研究所 所長 野島 正典
2019(令和元)年度、第22回介護支援専門員実務研修受講試験(以下、「第22回試験」といいます)は、10月13日(日)午前10時から、全国一斉実施の予定でした。
しかし、大型の台風19号が非常に強い勢力を保ったまま、東海または関東に上陸すると予想されたため、「第22回試験」の実施の判断は、試験の実施主体である都道府県(以下、地方自治体といいます)にゆだねられました。その結果、台風の予想進路にかかる地方自治体では、「実施するか」「試験開始時刻を繰り下げるか」「中止するか」の判断や決定、およびその発表をバラバラに行いました。
受験者は、試験日の明け方まで中途半端な状況に置かれたことでしょう。直前に思わぬ負担を強いられた点、同情を禁じ得ません。
結局、「第22回試験」は、1都12県(青森、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、埼玉、千葉、東京、神奈川、長野、山梨、静岡)で中止されました。また山形県など5県が試験開始時刻を繰り下げました。
こうした状況を踏まえ、例年持ち帰ることができた問題文も、内容の漏洩などによる不公正取り扱いを回避するため、①試験当日の問題文の持ち帰り禁止②試験終了時刻前(および終了後一定時間)の途中退出の禁止③受験問題内容の文字起こしによるSNSでの拡散の自制-などが受験者に申し送られたと聞いています。
ただし、この取扱いも徹底されませんでした。一部の県では問題文の持ち帰りが認められたと聞いています。試験日午後には、当該問題文(内容)が、ツイッターに表示されたり、問題文そのものがインターネットオークションなどで販売されていたりしたという噂もありました。私としては「漏洩された問題文情報を得て受験した人など一人もいない」「試験の公正性は担保されていた」と信じたいところですが…。
地震とは違い、台風は発災のタイミングや被災する地域はある程度前から予測できます。台風19号についても対策を講じる余裕はありました。国と地方自治体が協議し、試験を行うかどうかの判断を全国で統一することもできたはずです。地方自治体に判断をゆだねるとしても、実施・中止などの判断・結果の発表に時間を要し、かつその方法がバラバラだったことは問題です。いずれも、受験者の立場を全く考慮しない対応と断じざるを得ません。今後の課題として改善を求めたいところです。
介護支援、保健医療分野とも内容は「例年並み」
「第22回試験」の当日実施の試験問題文(以下「第22回今回試験」といいます)は16日に「社会福祉振興・試験センター」のホームページで公表されました。
その内容を解析しましたが、総じて長寿社会開発センター発行の「八訂 介護支援専門員 基本テキスト」の記載内容に沿って出題されていました。介護支援分野、保健医療福祉分野ともに、例年並みのレベルと判定できるでしょう。
もしかすると、受験した人の中には「介護支援分野が例年より簡単」と感じた方もいるかもしれません。これは問題文の表記が平易になり、選択肢文が短文化されたためです。内容自体は広く浅く、割とあなどれないものでした。
例えば、正しい答えを3つ選ぶタイプの出題は、最後の1つを選ぶのが難しい上、問題を解くための時間もかかるため、受験者にとってはやっかいな存在です。第22回今回試験では、このタイプの出題が介護支援分野では25問中15問(60%)、保健医療福祉分野では35問中26問(74%)、全60問中41問(68%)と、かなりの割合を占めました。昨年の73%よりは少ないものの、それなりのハードルの高さだったといえるでしょう。
以下、各分野別に解説します。
介護支援分野では、地域支援事業の「第1号介護予防支援事業」と予防給付の介護予防支援との違いを問う出題(問19)がありました。また、例年なら2問以下に絞られていた「要介護認定」について、3題(問題21~23)も出題されていました。
また、いわゆる「ヒッカケ問題」や、日本語の解釈が難しい、クセのある問題文はありませんでした。そういう意味では、例年よりは取り組みやすい内容だったとは言えます。
保健医療福祉分野も介護支援分野と同様に、「八訂基本テキスト」から、まんべんなく広く浅くの出題でした。とは言え、問題27の「食事・嚥下プロセス」などは見逃しがちなポイントです。さらに問題45の「介護医療院」の選択肢3「医療法の医療提供施設に該当するか否か」は、厚生労働省の公表資料からの細かい出題でした。
「アドバンス・ケア・プランニング」(ACP:人生会議)の出題(問題41)や「生活困窮者自立支援制度」(問題58)、「生活保護制度」(問題59)などは、時流や社会情勢を反映させた内容と言えます。
保健医療福祉分野では、介護報酬の「加算要件」や「同時加算の可否」など、実務的で詳細な内容も含まれており、受験者を悩ませたのではないでしょうか。
以上の出題内容を踏まえて、第22回今回試験の合格基準については、介護支援分野14点(昨年度13点)・保健医療福祉分野22点(昨年度22点)、60点満点で36点(60%)辺りではないかと予想します。
未実施県等の取扱いについて―提言と再試験の出題予想
試験を中止した地方自治体の対応については、「日を改めて再試験」「本年度は中止のまま未実施」など、様々な情報が飛び交っています。
「年度末までに、新たな問題文を作成し、再試験を実施する」とする報道もありますが、この試験に関する最終判断は、地方自治体にゆだねられています。それだけに、中止した地方自治体の中でも受験予定者が少ない県と、最も多い東京都(4000人余り)では、判断が違ってくる恐れもあります。
地方自治体にもいろいろな事情はあるでしょう。だが、ケアマネの現任従事者の不足やその高齢化といった現実を思えば、中止となった1都12県すべてで、本事業年度内に再試験を実施する以外の選択肢はあり得ません。
今回、受験したくてもできなかった人は約1万9000人に達します。その分、試験会場の確保などが難しいという面もあるでしょうが、国も関与して頂き、是が非でも全員が受験できるような対応をお願いしたいものです。
再試験、出題傾向は変わらず、実施は2月か3月?
再試験が実施されるとしたら、その時期は、来年になるでしょう。ただし、来年といっても2月か3月には行われるものと思います。2004年、新潟県中越地震の影響で、新潟県などが試験を中止した時には、その翌年2月に再試験が行われています。
再試験の出題傾向は、第22回今回試験とほぼ同様と思われます。「八訂基本テキスト」の記述の中から、同程度の出題があるでしょう。
ただし、第22回今回試験では出題の少なかったものの例年出題される「高齢者に多い疾病とその予防」や「認知症とそのケアの留意点」、認知症対応の「施策と地域支援事業の関係」などは要注意です。対策としては、昨年度以前2か年分の過去問題に加えて、第22回今回試験での出題内容も確認しておくことをお薦めします。
ところで、再試験の受験者は10月13日の試験受験者より「準備の時間が多く確保できる」とし、不公平だと指摘する声があります。こうした指摘をする人の気持ちはわかります。ただ、再試験を受ける人は、思わぬ試験中止に直面した上、再試験が行われるまでの間は中途半端な状況に置かれています。さらに、一度切れた緊張感や集中力を再び戻す時間と努力も必要です。こうした状況まで思えば、たいした不公平は生じていません。
また、「第22回今回試験と再試験の内容が違うと難易度にも違いが生まれるため、やはり不公平だ」という指摘もあります。これも気持ちはわかります。ですが、はっきり言わせて頂けば、試験の難易度を厳密に測るモノサシは存在しません。そのモノサシもないのに、第22回今回試験と再試験の「不公平」を論じるのは不毛で無意味な事です。
それよりも「住んでいる土地に台風が来た。その事実一つで、試験を受けられなかった人がいる」という、理不尽極まりない状況を放置する方が大問題です。
自然災害は、誰もが被災当事者になる可能性があります。極力、公平公正な形が保持できるように、受験者、関係者の皆さんの理解と協力を重ねてお願いし、総評とします。
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