

ケアマネなら知っておきたい!“介護食”の基礎知識
※この記事は 2018年4月23日 に書かれたもので、内容が古い可能性がありますのでご注意ください。
間違えたくない「とろみ剤」の使い方
- 2018/04/23 09:00 配信
- ケアマネなら知っておきたい!“介護食”の基礎知識
- 平井千里
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介護や介護食に関わるようになると、初めて聞く言葉がたくさん出てくると思います。その中で、もっとも戸惑うもののひとつが「とろみ」ではないでしょうか。
普通、料理で「とろみ」というと、水溶き片栗粉を使って作る、少し粘度のある液体を指します。ただし、水溶き片栗粉は必ず加熱して使わなければならないため、それなりに手間暇が掛かります。効率よく安全な介助が求められる介護の現場では、少し使い勝手が悪い材料といえるでしょう。
介護の現場で、飲み物などに粘性を持たせる時には、「とろみ剤」を使うのが一般的です。
ところが、この「とろみ剤」をうまく使いこなしている人は、意外なくらいに少ない。家族介護者だけでなく、プロである介護職員や看護職員の中にも、正しい方法を理解しないまま使っている人が散見されます。
適度な「とろみ」をつけるためには、「とろみ剤」の量の調整も大切
「とろみ剤」の使い方は、基本を押さえればそれほど難しくはありません。少しの時間と「ひと手間」が必要なだけです。ただ、忙しい介護の現場では、どうしても必要な「ひと手間」を省いてしまい、「とろみ剤」を無駄にしてしまっているケースが見受けられます。さらに、「とろみ」の濃さは、利用者の状態の変化に合わせて変えていかなければなりませんが、中には一律に「濃いとろみ」を提供している例も見受けられます。
「とろみ剤」は毎日、毎食使います、さらには食事だけでなく、お茶やジュースを飲む際など、ありとあらゆる飲み物でも活用します。それだけにコストもかなりのもの。高いだけならあればまだしも、「とろみ」が強過ぎると、今度は飲んだものが胃に届くまでに時間がかかります。そして長い時間、食道にとどまったままの飲み物は、誤嚥のリスクを高めます。万が一、誤嚥性肺炎を起してしまえば、利用者のために用意したはずの「とろみ」が、逆に利用者を苦しめる原因となってしまいます。
そうした事態を防ぐために、利用者に適した「とろみ」を、正確に提供できるようにスキルを磨いてください。
良い「とろみ」をつけるために、その1~基本編~
小型泡だて器でしっかりかき混ぜることが、よい「とろみ」をつけるポイント
「とろみ剤」の活用方法には、いろいろな応用がありますが、まずは基本的な使い方をお話します。
(1)飲み物の入ったコップに、「とろみ剤」を入れる
(2)小型泡だて器(※100円ショップに売っています)で30秒間かき混ぜる
(3)「とろみ」がついたことを確認する
これで出来上がりです。
非常に簡単ですが、ポイントは(2)の「30秒間しっかりかき混ぜる」こと。ここを省略してしまうと残念な「とろみ」になってしまいます。
「30秒」の手順の重要さ―とろみがつく原理
なぜ、30秒間かき混ぜることを省略してはいけないのかを、その原理から説明します。
かき混ぜることにより、実は次の2つのステップが発生します。
・「とろみ剤」が飲み物の中に拡散する
・拡散した「とろみ剤」が飲み物の水分を吸収してふくらむ
このうち「吸収・膨張」こそが、飲み物に適切な「とろみ」を持たせる上で絶対に必要なステップです。そして「吸収・膨張」を実現するには、かき混ぜることによる「拡散」の手順も不可欠。「とろみ剤」は飲み物よりも重いため、飲み物の中に入れただけでは底に沈んでしまい、均一に広がらないからです。さらに底に沈んだ「とろみ剤」はそのまま捨てることになるので、コストのムダでもあります。
残念ながら、「とろみ剤」が十分に生かされず、ただ捨てられるような事態は、現場では非常によく見受けられます。忙しいのは分かるのですが、「30秒間かき混ぜる」の手間を惜しんではいけません。
飲み物の種類によってとろみがつくまでの時間も異なる
もう1点、気をつけなければならないことがあります。「飲み物の種類によって、とろみ剤が水分を吸収する時間は異なる」ということです。
例えば、お茶や水などの混ざり物の少ない飲み物であれば、吸収も早いのですが、食塩や出汁などを含む「みそ汁」や「吸い物」「スープ」、糖分を含む「ジュース」、脂肪やたんぱく質を含む「牛乳」などでは、吸収は遅くなります。
飲み物や「とろみ剤」の種類によっては、10分くらい経ってから、適当な硬さになるものもあります。ですので、混ぜた直後に「変わらないなぁ…」と、「とろみ剤」を追加しないようにして下さい。後で硬くなりすぎてしまう可能性が高いです。
とろみをつけよう ~応用編Ⅰ~
「とろみ剤」に飲み物を注げば、効率よく「とろみ」をつけることができる
とはいえ、飲み物を提供するたびに30秒以上、泡だて器でかき混ぜるのはかなりたいへんな作業です。楽にかき混ぜる方法を2つお教えします。
<とろみ剤に飲み物を注ぐ>
(1)「とろみ剤」をコップに入れる
(2)飲み物を注ぐ
(3)泡だて器でかき混ぜる
(4)「とろみ」がついたことを確認する
ポイントは、「とろみ剤」を先にコップに入れておくこと。つまり、「とろみ剤」に飲み物を注ぐわけです。
なかには、「やっぱり、かき混ぜる必要があるのね?」と思った人がいるかもしれません。しかし、「とろみ剤」が入っているコップに飲み物を注ぐと、飲み物を注いだ際の勢いで「とろみ剤」が自然と拡散します。その状態でさらにかき混ぜると、飲み物の中に「とろみ剤」を入れるよりも、楽に、しっかりかき混ぜることができます。強くお勧めする方法です。
<ペットボトルを利用する>
(1)ペットボトルに半分くらい飲み物を入れる
(2)「とろみ剤」を入れる
(3)強くシェイクする
(4)「とろみ」がついたことを確認する
この方法も楽です。ただし、ペットボトルの口が小さく、「とろみ剤」がこぼれやすいこと、飲み物があわ立ちやすいなどのデメリットもあります。 読者の中には「とろみ剤を入れてから飲み物を半分くらい入れれば、さらに楽では?」と考えた人もいるかもしれません。ビンゴ!です。ぜひ試してみてください。
とろみをつけよう ~応用編Ⅱ~
ジュースや牛乳、みそ汁など、混ざり物の多い飲み物は「とろみ」がつくのが遅いのは先述の通り。このような飲み物に、「とろみ」をつけるには、「2度混ぜ法」が便利です。
<2度混ぜ法>
(1)コップに飲み物と「とろみ剤」を入れる
(2)30秒間、かき混ぜる
(3)待つ(飲み物と「とろみ剤」の種類によりますが、10~15分待つ必要があることも…)
(4)「とろみ」がついたら再度かき混ぜる
(5)「とろみ」がしっかりついていることを確認する
正直、10分待っている間に温かい飲み物は冷めてしまいますが、この点は気にしなくて大丈夫。高齢者は私たちが思っているような適温よりも人肌に近い温度の食べ物を好む傾向が強いからです。10分待ったほうが適温になっている可能性もあります。
「とろみ」の強さの決定は、専門の病院などに相談を
「とろみ」の強さを数値化するためには、「B型粘度計」などの大型の機械で調べる必要があります。しかし、一般家庭や介護施設で「B型粘度計」を持っているところは皆無と言ってよいでしょう。そのため従来、「とろみ」の強さについては、「ポタージュスープ状」「はちみつ状」などあいまいな表現がとられていました。
2013年になってやっと「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2013」で3段階の分類が示されました。
利用者の状態にあった「とろみ」をつけることが大切。写真の飲み物は左から右に、「とろみ」が強い順に並んでいる。
実際に、この分類のどの強さ(もしくは2つの強さの中間も考えられます)が、利用者に適しているのかを調べるためには、嚥下造影法を実施している病院か、言語聴覚士に相談するのが一番です。
確かに素人目でも飲み込む動作をしたかどうかの判断はできます。男性ならのど仏が動きますし、女性ものどをよく見ていると、のどが一瞬、上がるのが分かるでしょう。しかし、飲み込んだ動作をしていても、誤嚥している可能性はあります。さらに怖いことに、誤嚥をしていてもむせ込まない人もいます。高齢者の場合、喉から肺へのルートと胃へのルートをコントロールしている咽頭蓋(いんとうがい)の機能が低下している人もいます。濃いとろみは誤嚥を防ぐため、ゆっくり食道を通過しますが、それでも間に合わず、肺に飲み物がダラダラと入り続ける人もいます。そして、誤嚥に気付かないまま肺炎を発症させてしまう事例も少なくありません。
「とろみ」をつける行為は、在宅・施設を問わず、日常的に行われている、何気ない行為です。ただし、利用者に適した「とろみ」でなければ、時にはその健康を損なう要因になります。どの程度の「とろみ」が最も適当なのかについては、やはり嚥下造影法を実施している病院か、言語聴覚士に相談して決めるべきでしょう。

- 平井千里
- 女子栄養大学大学院(博士課程)修了。名古屋女子大学助手、一宮女子短期大学専任講師を経て大学院へ進学。「メタボリックシンドロームと遺伝子多型」について研究。博士課程終了後、介護療養型病院を経て、現職では病院栄養士業務全般と糖尿病患者の栄養相談を行うかたわら、メタボリックシンドロームの対処方法を発信。総合情報サイトAll Aboutで「管理栄養士 /実践栄養」ガイドも務める。
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