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※この記事は 2018年9月20日 に書かれたもので、内容が古い可能性がありますのでご注意ください。

オンライン診療に介護はどう関わるべきか/武藤真祐(株式会社インテグリティ・ヘルスケア 代表取締役会長)

2018年春の診療報酬改定に伴い、スマートフォンなどの画面越しで医師の診察を受ける「オンライン診療」が保険適用となった。一見、介護業界には関係のない話のように映るが、今後、在宅医療での普及が進めば、ケアマネジャーが担当する利用者にも影響してくるだろう。介護は、オンライン診療にどう関わるべきなのか―。オンライン診療システム「YaDoc(ヤードック)」の開発を手掛ける「インテグリティ・ヘルスケア」(東京都中央区)の代表取締役会長で、在宅医でもある武藤真祐氏に話を聞いた。

武藤真祐/株式会社インテグリティ・ヘルスケア 代表取締役会長

―保険適用から半年近くが経ちました。どのような手応えを感じていますか。

幾つかの見方がありますが、診療報酬の要件や国のガイドラインが厳しい中で始まったため、現時点では、当初想定されていたほど、オンライン診療の導入が進んでいないのは事実だと思います。こうした中、私たちは、さまざまな企業と連携し、普及に向けた取り組みを行っています。

今年5月には、電子カルテメーカー5社と業務提携を結びました。これにより、各社の電子カルテを導入しているクリニックで、私たちのオンライン診療システムをより便利に利用できるようになりました。例えば、クリニックの先生が電子カルテを開くと、「YaDoc」というボタンがあって、それをクリックすれば、ビデオチャットの画面に飛んで、患者さんとつながるなどといった仕組みです。

電子カルテを利用するクリニックは全国に約3万2400施設あります。先ほどの5社の導入実績を合わせると約1万7400施設になるので、半数超の施設で「YaDoc」を利用できる環境が整ったことになります。この割合は現在もなお増えており、今後もさらに推進していきます。

―「YaDoc」にはどのような特徴があるのでしょうか。

患者さんの日常の状態の変化を知るための「モニタリング」、診察時の主訴を確実に把握するための「オンライン問診」、そして患者さんの表情や状態をオンライン上で確認しながら診察する「オンライン診察」の3つの機能があります。

機能だけでなく、デザインやユーザーエクスペリエンスにもこだわっており、分かりやすく、直感的に操作できるよう工夫しているので、ITに慣れていない高齢の方々にも、上手に使っていただいていると思います。例えば「モニタリング」の際、心不全の患者さんであれば、体重を入力してもらったり、むくみの症状を伝えてもらったりすることで、治療に有用な情報が集まります。それらの情報を画面上で分かりやすく、例えば集計したり、グラフ化したりと、整理された形で経時的に見ることができる。それが特徴の一つと言えます。

仕事と介護の両立でオンライン診療を活用

―今年7月、サントリーホールディングスとの業務提携を発表しました。社員と離れて暮らす高齢のご家族にオンライン診療を行うことで、仕事の介護の両立を支援する内容です。

プロジェクトの狙いは、サントリーホールディングスの社員の健康管理と、高齢のご家族を抱える方の負担を減らすことです。前者は、生活習慣病予備軍に当たる40歳未満を対象とした「オンライン保健指導」、そして後者は、離れて暮らす高齢の親御さんの継続通院の不安に対応するための「オンライン診療」です。

サントリーホールディングスの社内アンケート調査の結果、介護に不安を持つ社員は全体の9割に上り、介護離職する社員が毎年10人おられたそうです。「社員が心身共に健康で生き生きと働くことは、企業としての競争力の源泉」との新浪剛史社長のお考えから、さらに魅力的な企業であるために社員の「家族」の未病・重症化予防に取り組まれることとなり、今回のオンライン診療の取り組みにつながりました。

―「オンライン診療」の中で、介護はどう関わるのでしょうか。

今回のプロジェクトは、社員とそのご家族、医師という3者の話なので、介護がダイレクトに関わるわけではありませんが、当然、地域には医療連携のネットワークがあります。例えば、患者さんのお宅を訪問するケアマネジャーや訪問看護師などが、高齢の患者さんと医師との間の通信サポートを行うことにはニーズがあると思います。また将来的には、「YaDoC」に集まった情報をその中で生かせればいいなと思っています。例えば、ケアマネジャーが情報を見ることができれば、利用者さんが受ける介護サービスに反映させることができるのではないでしょうか。

わたしたちの目標は、患者さんの日常の情報を、医師がしっかりと把握できる仕組みをつくることです。血圧などのデータもそうですが、例えば、せきや痰の状況がどうなっているといった、症状に関する情報が入る仕組みをつくり、それを医師に伝える。オンライン診療であっても、対面診療であっても、情報をきちんと医師に届けたいというのが大前提としてあります。

その上で、地域医療の現場では、さまざまな職種が関わっています。こうした方々にとっても、それらの情報は役に立つでしょうし、ケアマネジャーも含め、みんなで情報を共有することで、医療と介護の距離が縮まると考えています。オンライン診療を一つのきっかけに、そうした取り組みを前へ進めることができればいいなと思っています。

最大の課題は診療報酬の要件

―今後、オンライン診療を普及させる上での課題はありますか。

最も大きいのが診療報酬の要件です。例えば、初診から6か月間は、同じ医師が対面診療を行うことがオンライン診療の実施要件であったり、緊急時に概ね30分以内に診察できる体制を整備する必要があったり、実際の診療の現場から見ると、あまり現実的ではないものもあります。また、対象となる疾患が限定されているので、有用だと思われるシーンでも利用が制限される場合があります。さらに、診療報酬の点数がもう少し増えれば、現場の先生方もより取り組みやすくなるでしょう。

―ケアマネジャーに対しては、どのような役割を期待しますか。

ケアマネジャーは基本的に月1回、利用者さんのご自宅を訪問するわけですが、それ以外の利用者さんとの接点は少なくなりがちです。利用者さんの普段のご様子は、ヘルパーや看護師を通して知ることになりますが、もう少しダイレクトに情報を把握することができれば、それがケアマネジャーの業務にも生きてくるでしょう。

例えば、歩ける方ならば、普段どれぐらい歩いているのか。センサーなどを使えば、少しふらついたとか、そういった動きも見えてくる。インターネットで位置情報が取れると、部屋から全然動かなくなったとか、細かな状況も分かると思います。そうなれば、より生活の視点に立ったケアプランニングが可能となり、サービスの内容を柔軟に見直すことにもつながるのではないでしょうか。

モニタリングや問診の情報を医師と共有することで、ケアマネジャーが医療的な視点を身に付けるきっかけにしてほしいとも思います。例えば、利用者さんの血圧の推移を見ることで、ケアマネジャーが考えるべきこともあるはずです。

地域での情報共有が“最終形態”

―最後に、オンライン診療の将来ビジョンをお聞かせください。

これからの大きな課題は、医療機関を受診することが困難な患者さんが増えるということです。一人暮らしのお年寄りが増え、介護をする方が近くにいないケースも多くなります。在宅医療が急に広がらないとなると、医師に診てもらうこと自体が大変な時代がやって来る。医師の業務の一部をオンライン化することによって、患者さんの負担も減るでしょう。

中身や頻度を含め、医療と介護を柔軟に提供できる時代が訪れればといいなと思っています。患者さんの日常の情報が、看護師や介護職なども含めた多職種で共有できれば、医療や介護の質の向上につながるでしょう。

ケアマネジャーの中には、頻繁に利用者さんのご自宅を訪問する熱心な方もいますが、全員がそうできるわけではありません。状況が分からない中でケアプランを考えるのは不安だと思います。ある程度、患者さんの状態を把握した上でケアプランを作ったり、修正したりできるようにするのが理想です。

ただ、私たちの主軸は、あくまで医師と患者さんの関係性の向上です。地域における情報共有の話は、ある意味、オンライン診療の“最終形態”と言えます。まずは、私たちがやれるところから始めて、そちらにめがけてやっていきたいと思っています。

武藤真祐(むとう・しんすけ)
東大病院、三井記念病院にて循環器内科に従事後、宮内庁で侍医を務める。その後マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、2010年に医療法人社団鉄祐会を設立。2015年には、シンガポールでTetsuyu Healthcare Holdings Pte, Ltd. を設立。2016年にインテグリティ・ヘルスケア代表取締役会長に就任。東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科臨床教授。日本医療政策機構理事。一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ理事。東京大学医学部卒業(MD)、同大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D.)。INSEAD Executive MBA。Johns Hopkins MPH。

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