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管理者=主任CMの衝撃

昨今、ケアマネジャーの間で大きな話題となっているのが、居宅介護支援事業所の管理者を主任ケアマネに限定する制度変更だ。この変更が提案されたのは昨年11月22日の社会保障審議会介護給付費分科会(給付費分科会)。そして、年末に同分科会の審議報告が取りまとめられ、この制度変更は確定的になった。制度の完全実施までの経過措置の期間は3年程度と見込まれているから、このままいけば、2021年度には、すべての居宅介護支援事業所が、管理者として働いてくれる主任ケアマネを確保しなければならない。

管理者の半数に満たない主任ケアマネ保有率

この制度の変更については、居宅介護支援事業所のケアマネならだれもが「管理者になってくれる主任ケアマネを確保できず、存続の危機に立たされる事業所が出るのではないか」ということが気にかかるだろう。

そのリスクを考える上で、少しデータをひも解いてみたい。

現在、主任ケアマネは全国で約6万人おり、その約8割が居宅介護支援事業所で働いている。それでも厚生労働省のデータによれば、「管理者が主任ケアマネジャー資格を保有する割合」は44.9%にすぎない(16年度)。

関係者のなかには、「3年の経過措置があるんだから、その間に増やせば何とかなるのでは」と考える人もいるだろう。確かに経過措置の間に、主任ケアマネが十二分に増えれば問題はない。図1を見てもらえばわかる通り、毎年の主任ケアマネになるための研修の受講者数は、例外を除いて5000~6000人はいるから、なんとかなる可能性もある。

ただし、この研修については現段階でも重大な懸念がある。ケアマネの間ではよく知られたことだが、希望者全員が必ず受講できる研修ではないということだ。私自身、居宅介護支援の現場で、「主任ケアマネの受講申し込みをしても順番が回ってこない」という嘆きの声を何度となく耳にした。

最大の懸念は「1人ケアマネ」の今後

とりわけ心配なのは、いわゆる「1人ケアマネ」の事業所の今後だ。これもケアマネの間では常識かもしれないが、事業所の運営と数十人分のケアマネジメントを一手に担う1人ケアマネは文字通り、寝る間もないくらいに忙しい。

そんな1人ケアマネにとって、主任ケアマネになるために70時間分の研修を受けるのは、決して容易なことではない。それだけに今回の制度変更の情報に衝撃を受け、事業の継続をすべきかどうか、悩んでいる1人ケアマネも少なくないのではないか。

そもそも1人ケアマネの中には、収益より介護保険の理念に基づいたケアマネジメントの実現にこだわりたいと考え、独立したという人が多い。私の知人の中にも、65歳前後で「収入はそれほど気にせず、公立・中立性に基づいたケアマネジメントをしたい」と、独立を考えた人もいる。

研修の受講機会、1人ケアマネを優先すべき

管理者を主任ケアマネに限定する制度変更の目的は、質の高いケアマネジメントを推進することだという。ただし、その変更を導入した結果、志の高い1人ケアマネの廃業が相次ぐようでは、全くの逆効果だ。こうした事態を避けるためには、例えば、現在の管理者が優先的に主任ケアマネの研修を受講できる仕組みを整えるなどの工夫が不可欠だ。

むしろ「管理者」を養成する仕組みこそが必要だった

さらに、この制度変更で、多くのケアマネや関係者が気にしている点がある。

「主任ケアマネだからといって、管理者としての能力を有しているのか?」ということだ。

厚労省資料によれば、ケアマネらが感じる居宅介護支援事業所の管理者としての課題は、「人材の確保・育成」が48.2%、「業務の実施状況の把握」が46%、「従業者の管理」が43.3%となっている。

これらの課題に対応するため、16年度から新たに主任介護支援専門員更新研修(46時間)が設けられるなど、質的向上施策は講じられている。(図2)。だが、その研修項目を見ると、これだけで後進のケアマネジャーを育成・管理できる能力が備わるとは、どうも考えにくい。まして経営能力が育成されるとは思えない。

もちろん、主任ケアマネの中には、そうした能力を十全に備えた人もいるだろう。だが、たまたま優れた人がいたというだけで「主任ケアマネの研修を受ければ、良き管理者としての資質が伴う」と社会的に認め、制度とすることには疑問が残る。

むしろ、管理者としての資質・向上を目指すための、新たな「居宅介護支援事業所管理者」を養成する仕組みを設けるべきだったのではないだろうか。

市町村の「力量」も懸念材料

もう一つ、気にかかることがある。居宅介護支援事業所を指導・監督する保険者の「力量」だ。

今年4月には、居宅介護支援事業所の指定や改善勧告、指定取り消しなどの業務を担う権限が都道府県から市町村に完全に移される。

しかし、全国の市町村の介護関連部署の公務員が、制度の詳細と現場の実情に精通しているとは言い難い。中には厚労省の専門部署の担当者ですら及ばないほどの知識と見識を兼ね備えた人材もいるが、残念ながら、そうした職員は少数派だ。

そんな市町村に、同時改定による制度変更と同じタイミングで、指定や改善勧告などを担う権限まで下りてくるのだ。当然、役所は混乱するだろう。そんな混乱の中で、1人ケアマネ事業所の実情に配慮し、研修の在り方を工夫できる市町村は、それほど多く出てくるとは思えない。

厚労省はこうした市町村の実情に十分配慮すべきだろう。例えば、管理者であるケアマネには優先的に主任ケアマネの研修を受けさせることを市町村に事務連絡するくらいの工夫はあってもよいのではないか。

結城康博
1969年、北海道生まれ。淑徳大学社会福祉学部卒、法政大学大学院修了(経済学修士、政治学博士)。介護職やケアマネジャー、地域包括支援センター職員として介護系の仕事に10年間従事。現在、淑徳大学教授(社会保障論、社会福祉学)。社会福祉士や介護福祉士、ケアマネジャーの資格も持つ。著書に岩波ブックレット『介護職がいなくなる』など、その他著書多数がある。

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