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結城教授の深掘り!介護保険

デイの区分変更がCMにもたらす試練

2018年1月26日の社会保障審議会介護給付費分科会(給付費分科会)で、介護保険サービスの新しい単価表が公表された。その印象を一言でいえば「微増」。0.54%という微妙な全体の引き上げ幅を、そのまま反映したかのように、ちょっとずつ基本報酬が引き上げられたサービスが目立った。

各サービスの単位、多くは「微増」

それでも「引き上げは引き上げだから、一安心」という介護関係者も少なくないだろう。しかし、サービスごとの単価や運用基準を詳細に見ていくと、必ずしもプラス改定の恩恵を得ることができない分野もある。今回は、デイサービス(通所介護)について考えていきたい。

厳しい結果を突き付けられた通常規模型デイ

昨年6月21日の給付費分科会の資料によれば、デイサービスの利用者の割合をサービス提供時間区分(区分)で見た場合、2015年度末では「7時間以上9時間未満」の利用者が全体の約6割に達していた。残りは、おおよそ「5時間以上7時間未満」と「3時間以上5時間未満」の利用者で占められていた。

さらに、「7時間以上9時間未満」の区分の利用者を細かく見ると、実際にサービスを受けた時間は7時間以上7時間半未満という人が最も多い。「5時間以上7時間未満」の区分では、実際の利用時間は6時間以上6時間半未満という人が最多となる。「3時間以上5時間未満」の区分であれば、3時間以上3時間半未満に利用者が集中する。

そして今回の介護報酬改定では、区分が2時間ごとから1時間ごとに変更になった。この新しい区分に、先に述べた実際の利用時間のピークを対応させた上で、改定前と改定後の報酬を比較してみる。

表1を見ていただきたい。最も多い「7時間以上9時間未満」の区分の人のうち、7時間以上7時間半未満のサービス利用者は、単純に考えれば、新たな区分では「7時間以上8時間未満」に移行することになる。そうなると事業者側は11単位から20単位の減収を余儀なくされる。

ところが、同じ利用者が新区分「8時間以上9時間未満」に移行するとなるとどうだろう。改めて表1を見ていただきたい。事業者側が得る単位数は全く変わらないことが分かる。

つまり、現在は「7時間以上9時間未満」の区分の利用者が、新区分の「7時間以上8時間未満」に移るか、「8時間以上9時間未満」に移るかは、事業者側にとってみれば、マイナス改定になるか、なんとか基本報酬を維持するかの分かれ目ということになる。

こうした状況を思えば、通常規模型デイサービスの利用者を担当するケアマネジャーには、少しでも長い区分への変更を求める事業者側から、大きなプレッシャーが掛けられる懸念がある。

2012年度介護報酬改定の後に起こったこと

実は、過去の改定でも同じようなことがあった。やはりデイサービスの区分が変更された2012年度の介護報酬改定の時のことだ。

この時は「6時間以上8時間未満」の区分の利用者に対し、「5時間以上7時間未満」に移るか、「7時間以上9時間未満」に移るかの選択肢が突き付けられた。そして、多くの利用者は「7時間以上9時間未満」を選んだ。

この利用者の選択に、デイサービス事業者が経営的視点から介入していた可能性は極めて高い。その理由は、表2を見ていただければ、推し量ることができるだろう。「5時間以上7時間未満」と「7時間以上9時間未満」では、同じ条件でも付けられた単位が88単位から162単位も違ったのだ。

これほどの差が付けられた以上、多くの事業者は、利用者を「7時間以上9時間未満」に誘導するために、相当な「努力」をしたはずだ。中にはケアマネにも利用者にも相談せず、利用者の家族とだけ打ち合わせをし、利用者の区分を変更してしまった事業者もいたようだ。

区分変更に関われなかったCMが4割も

実際、私が2012年度の改定後の4月―6月、542人のケアマネジャーに行ったアンケート調査では、デイサービスの区分変更に「関与できなかった」と答えたケアマネが約4割もいた。

さらに、アンケートの自由意見では、次のような声も寄せられた。

  • 「デイサービスから(区分を変更したと)事後報告であった」
  • 「デイサービスが主流で、個別ケアが難しい」
  • 「利用者は、早く帰りたいと言っているが、事業所が(長い時間への変更を)主導」
  • 「(区分の変更について)デイサービスから相談なく、一方的であった」
  • 「家族とデイサービス側の意向が強かった」
  • 「デイ側からの相談、利用者への説明はしたが、選択できず、ほぼ決定事項を伝えることになりました」

いずれもケアマネを置き去りにした事業者の“暴走”を暗示するコメントだ。そして、今回のデイサービスの改定によって、同じことが引き起こされる可能性は極めて高い。

ケアマネの真価が問われる春

それだけにケアマネは、充分に本人の意向を確認しながら区分の変更について考えていく必要がある。経営重視型の一部のデイサービスでは、本人よりも家族の意向を重視して提供時間の変更を促すかもしれない。もちろん、必要であれば現状よりも長い提供時間への変更も問題はない。だが、本人が望まない延長であれば問題だ。まして、その延長が本人の自立支援に何の益もないとするなら、ますます大問題だ。

通常規模型だけでなく地域密着型でも同じことが起こりうる。むしろ、地域密着型デイサービスの方が、提供時間が長くなれば報酬単価がより高くなる改定となっているため、事業者からの圧力はもっと強いかもしれない。

こうした事業者の“暴走”を、介護保険の要であるケアマネがどこまで食い止めることができるか。さらに言うなら、目先の単位のみにとらわれた不当な圧力をはねのけ、自立支援と尊厳の保持という、介護保険の理念を守りとおすことができるか―。この春は、ケアマネの真価が問われる時といえるかもしれない。

結城康博
1969年、北海道生まれ。淑徳大学社会福祉学部卒、法政大学大学院修了(経済学修士、政治学博士)。介護職やケアマネジャー、地域包括支援センター職員として介護系の仕事に10年間従事。現在、淑徳大学教授(社会保障論、社会福祉学)。社会福祉士や介護福祉士、ケアマネジャーの資格も持つ。著書に岩波ブックレット『介護職がいなくなる』など、その他著書多数がある。

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