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「老計10号」の改正がもたらすもの

この4月、訪問介護の区分を一変させる変更があった。厚生労働省による「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」の改正。いわゆる「老計10号」の改正だ。これによって従来の身体介護と生活援助の区分は大きく見直された。

これまでケアマネジャーをはじめとした介護職の多くは、「身体介護」と「生活援助」の違いを、要介護者の身体に直に触れるか否かで判断するといった、おおざっぱな概念で理解していた。そして、その理解は、さほど的外れでもなかった。

今回の「老計10号」の見直しは、そんな線引きを大きく変えた。「自立生活支援・重度化防止のための見守り的援助(自立支援、ADL・IDAL・QOL向上の観点から安全を確保しつつ常時介助できる状態で行う見守り等)」という位置付けで、新しい「身体介護」の行為事例を明記したのだ。

「掃除」「調理」「ゴミ分別」も条件次第で身体介護に

その結果、これまでは「見守り的援助」で「身体介護」とみなす事例は7種類だったが、見直しによって、その種類は15種類まで増えた。

新たに身体介護となったものの中では、例えば次のような項目がある。

  • 利用者と一緒に手助けや声かけ及び見守りしながら行う掃除、整理整頓(安全確認の声かけ、疲労の確認を含む)
  • ゴミの分別が分からない利用者と一緒に分別をしてゴミ出しのルールを理解してもらう又は思い出してもらうよう援助

他にも「利用者と一緒に手助けや声かけ及び見守りしながら行う調理、配膳、後片付け(安全確認の声かけ、疲労の確認を含む)」「利用者と一緒に手助けや声かけ及び見守りしながら行う衣類の整理・被服の補修」といった事例も挙げられている。

これまでは、「掃除」「調理」「整理整頓」「調理」などは、ヘルパーと利用者と一緒に行ったとしても、「生活援助」として認識されていた。それが今回の改正によって、自立支援につながる身体介護と位置付けられるようになったのだ。この点、極めて画期的な改正といえる。

増える?身体と生活を組み合わせる訪問介護

この改正によって生活援助から身体介護に変更されるサービスも増えるだろう。なにしろ身体介護の方が報酬単価は高い。その上、この10月から生活援助中心型のサービスをケアプランに位置付ける回数は制限されるのだ。むしろ生活援助から身体介護への変更が進まない方が不思議だ。

その結果、身体介護と生活援助を一つの時間の区分の中で組み合わせて提供するケースが増えるのではないか。つまり、身体介護中心型のサービスに生活援助のサービスを加算する「複合型」が増えるということだ。

例えば、現場ではケア時間が概ね70分弱とされている「生活援助3」が、「身体介護1、生活援助2」と位置付けられることもありうる。

図を見ていただければわかるが、生活援助中心型や身体介護中心型に比べて、身体介護と生活援助を組み合わせたサービスは、それほど多く提供されていない。しかし、現場のケアマネジャーやサービス提供責任者、そして市町村介護保険担当者が、充分に「老計10号」の改正を理解すれば、そうした組み合わせを選択する利用者がもっと増えることは、十分にあり得る。

懸念される「ケアマネの無理解」

ここで心配なのは、ケアマネが「老計10号」の改正を理解せず、身体介護となりうるサービスまで生活援助のまま提供し続けてしまうことだ。

実際、「ケアマネが老計10号の改正について理解していない。全く気付いていない」といった声も耳にしている。その結果、身体介護になるはずのサービスがあっても従来通り生活援助中心型サービスで提供しているという。

介護保険の要であるケアマネがこれでは話にならない。もちろん、大多数のケアマネは、「老計10号」の改正の内容を熟知しているだろうが、少しでも自信がないと思われる方がいるなら、改めて「老計10号」の改正の通知を熟読していただきたい。

「老計10号」の改正に関する情報などはこちら

より懸念される「自治体職員の無理解とローカル・ルール」

ある意味、ケアマネより心配なのは、市町村介護保険担当者が、現場の現状も老計10号の改正も十分に理解せず、旧態然としたローカル・ルールを現場に押し付けてしまうことだ。

だが、仮にそのような事態が起こったとしても、現場のケアマネは臆することはないと思う。3月30日に公表された厚労省通知を示しながら、市町村介護保険担当者を啓発すればよい。繰り返すが、ケアマネは介護保険制度の要なのだ。珍妙なローカル・ルールを振り回す役人については、自らの手で丁寧に教え導くくらいの気概と知識を持っていただきたい。そのためにも、ケアマネは3月30日の厚労省通知をしばらくは持ち歩いた方がいいかもしれない。

利用者の負担増という側面も忘れずに

最後に今回の改正が利用者にもたらす影響を考えてみたい。

生活援助の一部が身体介護に位置付けられると、一回の自己負担分が100円弱増えることになる。月額で考えると低所得者層にとっては無視できない額だ。それだけに、生活援助を身体介護に変更することは、事業者にはメリットがあるものの、利用者にとってはメリットになるとは限らない。

それだけにケアマネは、利用者の経済状況も鑑みながらサービス提供責任者らと調整を腹かなければならない場面が出てくるだろう。

在宅介護ヘルパー不足が深刻化する中で、「老計10号」の改正は「身体介護」の再評価と経済的保障といったメリットとなる部分もあり、筆者も一定の評価をしたい。しかし、一部の利用者への充分な理解も必要不可欠だ。そういう意味でケアマネの担う役割は、ますます重さを増したといえるだろう。

結城康博
1969年、北海道生まれ。淑徳大学社会福祉学部卒、法政大学大学院修了(経済学修士、政治学博士)。介護職やケアマネジャー、地域包括支援センター職員として介護系の仕事に10年間従事。現在、淑徳大学教授(社会保障論、社会福祉学)。社会福祉士や介護福祉士、ケアマネジャーの資格も持つ。著書に岩波ブックレット『介護職がいなくなる』など、その他著書多数がある。

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