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どうすればいい?ケアマネの事務処理軽減

今さら言うまでもないことだが、ケアマネジャーの本業は、利用者の相談を受け止めた上でアセスメントをしたり、明らかになった課題を解決するためにサービスを調整したり、モニタリングをしたりすることだ。多くのケアマネは、この点にやりがいを見出し、厳しい試験を乗り越えてきたはずだ。

ケアマネ最大の悩みは「事務処理負担」

しかし、現実はどうだろう。

多くのケアマネは、利用者やその家族と向き合うより、パソコンをにらみ、書類と格闘している時間の方が長いのではなかろうか。実際、社会保障審議会介護給付費分科会の資料でも、一般的な居宅介護支援事業所にとっての最大の悩みは事務処理負担であるとするデータが示されている。

高い志を抱き、苦労してケアマネになったものの、実際は事務処理に追われる日々。利用者の話を聞いて的確なサービス調整に費やす時間はごく僅かで、最低限の話を聞くために何とか月に一回だけ訪問している―。介護給付費分科会のデータなどからは、そんな現実が浮かび上がる。

特に自治体が定期的に行う「実地指導」が迫ると、記録や書類に関連した業務がますます増大する。本来、最も大切な利用者の生活は頭の片隅に追いやられ、利用者に関する記録や印鑑の有無ばかりにとらわれてしまうケアマネも少なくないはずだ。

ケアマネばかりではない。介護のあらゆる現場が、多過ぎる事務処理に悩まされている。

当面、ケアマネには関係ない国の簡素化策

国も無為無策ではない。今年10月から「介護のペーパーワーク半減」と銘打ち、介護保険事務処理の簡素化策を推し進める方針を示している。

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その主な内容は、事業所の指定申請に関する書類から以下の内容を削除することにある。

  • 申請者・開設者の定款、寄附行為
  • 事業所の管理者の経歴
  • 役員の氏名、生年月日、住所
  • 申請する事業に係る資産の状況
  • 申請する事業に係る各介護サービス事業費の請求に関する事項
  • 介護支援専門員の氏名、登録番号

つまり、今回の事務処理軽減策は、ケアマネジャー業務には全く関係ないと言ってよい。

国は事務処理軽減策の第二弾として「報酬請求事務の簡素化」などを打ち出す方針だ。具体的には、「個別サービス計画」「サービス提供記録」「介護給付費請求書」「各種加算届出関係」などの事務処理に関することが検討されている。ただし、具体的な内容は固まりきっていない。

残念ながら、ケアマネの事務負担が軽くなるような制度変更は、今後しばらくは期待できそうにない。

AIやICTの活用は期待されるが…

業務負担の軽減については、制度とともに期待されるのがICTやAI(人工知能)の活用だ。特にAIについては、複数の企業が自治体などと連携し、実証実験に乗り出している。

近い将来、こうした技術革新がケアマネの事務処理負担軽減には寄与する可能性は高い。

ただし、来月や来年、多くの事業所の業務がAIによって劇的に軽くなるということは、ありえない。またICTを活用した機器類についても、その導入にはかなりの経費が必要となるため、規模の小さな事業所がその恩恵にあずかれるかどうかは疑問が残る。つまり、ICTにしてもAIにしても、すぐに誰もが活用できる事務処理軽減策にはなりえない。

当面、ケアマネは自分たちの努力で事務負担を軽減するしか道は残されていないようだ。

「監査」「実地指導」への向き合い方で負担軽減が可能

だが、だからといって事務負担の軽減をあきらめる必要はない。私の経験から考えると、業務の本質を見直し、必要な情報を集めることで、業務負担を軽減できる事業所はたくさんあると思う。

そのためにも、何がケアマネの事務負担を重くしているのかを改めて見直してみたい。

まず考えていただきたい。事務負担というと、どんな作業が思い浮かぶかを。

中には、毎月の「実績管理」「突合」など、報酬請求に関する事務処理も脳裏に浮かぶ人もいるだろう、だが、なんといっても大きいのは、「監査」や「実地指導」に備えるための業務ではないだろうか。実際、私もケアマネとして6年間の実務に取り組んだが、その間、書類やパソコンに向かう際には、常に「監査」と「実地指導」を意識し続けていた。その後、さまざまな立場のケアマネと話をしたり、インタビューをしたりしたが、やはり、「監査」や「実地指導」で指摘される不安から逃れるための業務の負担が重いという声が多く聞かれた。

私は、この「監査」や「実地指導」のための業務にこそ、負担軽減の余地があると考えている。

そうした業務は、先輩や仲間から「ここが指摘される」「この帳票がないと指摘される」「以前、この記録の書き方は指摘された」などいったように、不確かな伝聞に基づいて行われているものが多い。私の経験などに照らせば、そうした伝聞に基づく事務処理には、「監査」や「実地指導」の本質から考えると、どう考えても不必要なもの、無駄なものも多く含まれていた。

この「伝聞によって生じる無駄な実施指導対策の事務処理」こそ、省力化すべきと思うのだ。

その無駄を省くためには、まずは管理者が中心となり、事業所全体で「監査」や「実地指導」の意味を認識し直す必要がある。その上で「伝聞によって生じる無駄な実施指導対策の事務処理」がないか、精査し直すとよい。

細かな注意点としては、「監査」「実地指導」対策については、処理を後回しにせず、日々、着実に実施していくことが挙げられる。事業所側も、事務処理が後回しにならないよう、時間外勤務手当を保障するなどして支援する必要がある。

自治体の職員が肝に銘ずべき「原点」とは?

最後に、「監査」や「実地指導」に取り組む自治体側の問題点も指摘しておきたい。

当たり前のことだが「監査」も「実地指導」も、利用者の権利を守るために、事業所に取り組みの改善を促すことを目的だ。不正を摘発することが主目的ではない。

だが、実際の現場では、不正を摘発することこそが「監査」や「実地指導」の主目的と捉える自治体が少なくないように思える。

ケアマネの負担を軽減し、より質の高いサービスを実現するためにも、「監査」や「実地指導」を担当する自治体職員は「あくまで利用者本位の専門職を育てることが目的」という原点を肝に銘じてほしい。

結城康博
1969年、北海道生まれ。淑徳大学社会福祉学部卒、法政大学大学院修了(経済学修士、政治学博士)。介護職やケアマネジャー、地域包括支援センター職員として介護系の仕事に10年間従事。現在、淑徳大学教授(社会保障論、社会福祉学)。社会福祉士や介護福祉士、ケアマネジャーの資格も持つ。著書に岩波ブックレット『介護職がいなくなる』など、その他著書多数がある。

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